子どもの頃の食習慣は、その後の健康にどうつながっていくのか。脂肪や塩分、糖分の多い食事が、子どもや青年期の早いうちから血圧を高めるリスクと関係しているのではないか、という指摘は以前からあります。とはいえ「何をどれだけ食べているか」を個々の栄養素ではなく、日常の食べ方全体の傾向、つまり「食事パターン」として捉えると、血圧とどんな関係が見えてくるのでしょうか。ナイジェリア南西部イバダンで行われたこの研究は、8〜14歳の子ども・青年を対象に、この問いを検証したものです。
どんな調査が行われたのか
研究チームは、多段階抽出法という方法で選ばれた335人の子ども・青年(8〜14歳)を対象に、横断研究を実施しました。食事内容は47項目からなる食物摂取頻度調査票を使って把握し、そこから主成分分析という統計手法を用いて、回答者に共通する食事の傾向、すなわち食事パターンを抽出しています。血圧は、米国小児科学会が2017年に示したガイドラインに沿って、年齢・性別・身長ごとの基準値と照らし合わせて分類されました。
浮かび上がった3つの食事パターン
分析の結果、子どもたちの食事には大きく3つの傾向があることが分かりました。ひとつは伝統的な食品や植物性食品を中心とした「伝統的/植物性パターン」で、全体のばらつきの26.0%を説明するもっとも目立つ傾向でした。次いで、加糖飲料をよく摂る「加糖飲料パターン」が9.9%、肉や乳製品など西洋型の食事に近い「タンパク質/西洋型パターン」が9.1%を占め、3つを合わせると全体のばらつきの45.0%を説明するという結果でした。
血圧との関連はどうだったか
気になる血圧との関係ですが、単純な回帰分析では、3つのどの食事パターンも収縮期血圧・拡張期血圧のいずれとも、統計的に意味のある関連は確認されませんでした。ただし「伝統的/植物性パターン」については、拡張期血圧との間にプラスの傾向が見られたものの、統計的な有意水準には届いていません(β = 0.105、p = 0.056)。年齢と性別の影響を調整したうえで、血圧が高めの子どもに該当するかどうかを調べるロジスティック回帰分析でも同様の傾向が確認され、伝統的/植物性パターンのスコアが高いほど拡張期血圧が高めになるオッズがやや上昇する方向は見られたものの、これも統計的に有意とまでは言えませんでした(オッズ比1.22、95%信頼区間0.97〜1.55、p = 0.085)。加糖飲料パターンやタンパク質/西洋型パターンについては、収縮期・拡張期いずれの血圧とも、有意な関連は示されていません。
この結果をどう受け止めるか
今回の結果を一言でまとめると、「食事パターンと血圧の間に、はっきりした関連は見つからなかった」ということになります。これは決して「食事が血圧に関係ない」と結論づけるものではなく、この年代の血圧が食事だけでなく多様な要因の影響を受けている可能性を示すものだと著者らは述べています。また、この研究はある一時点でのデータを分析した横断研究であるため、食事と血圧の間の因果関係を示すものではありません。著者らは、今後より広い範囲の心血管代謝や生活習慣の指標も含めた縦断的な研究を重ねることで、ナイジェリアの子ども・青年における食事の影響をより深く理解していく必要があると指摘しています。
今回の調査は、イバダンという特定の地域の335人を対象にしたひとつの研究であり、この結果だけで子どもの食事と血圧の関係について結論が確定したわけではありません。今後、対象地域や規模を広げた研究の積み重ねが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:ナイジェリア南西部イバダンにおける小児・青年の食事パターンと血圧上昇との関連(ディスカバー・パブリックヘルス・2026年08月)