著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、ドイツです。
掲載誌:World Economy
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
チョコレートの原料となるカカオは、主に途上国で生産され、豊かな工業国で多く消費されてきました。第二次世界大戦後には、旧宗主国と旧植民地の関係を引き継ぐものも含め、さまざまな貿易の取り決めが結ばれました。研究チームは、こうした植民地時代やその後の時代の貿易の取り決めが、カカオ生産国と工業国のあいだのカカオ貿易にどのような影響を与えたのかを調べました。
何を調べたか
著者らが分析したのは、1951年から1999年までの、途上国のカカオ生産国と工業国のカカオ消費国とのあいだの貿易です。分析には「構造グラビティモデル」と呼ばれる手法の最新の形が使われました。グラビティモデルは、国の経済規模や国同士の距離などをもとに貿易量を説明する統計的な枠組みです。この枠組みを使うと、各種の取り決めが貿易量にどれだけ関係していたかを比べることができます。
対象となった取り決めには、欧州経済共同体(EEC、後のEC)の連合協定、ヤウンデ協定、ロメ協定があります。また、国連貿易開発会議(UNCTAD)の国際ココア協定、英連邦のパートナーシップ、関税及び貿易に関する一般協定(GATT)の一般特恵関税制度も含まれています。
主な結果
論文によると、EEC/ECの連合協定、ヤウンデ協定、ロメ協定などの取り決めと、UNCTADの国際ココア協定は、カカオの貿易量に測定可能なプラスの影響を与えていました。一方、英連邦のパートナーシップやGATTの一般特恵関税制度では、このようなプラスの影響は確認されなかったと報告されています。
著者らは特にヤウンデ協定に注目しています。この協定は、協定に署名したカカオ生産国と他のEEC/EC加盟国との貿易を増やしました。さらに、旧宗主国とカカオを生産する旧植民地との貿易関係も強めていたといいます。植民地の独立には両国間の貿易を減らす効果がありましたが、ヤウンデ協定の効果はその減少分を上回っていたと報告されています。
この研究が示すこと
この研究は、戦後のカカオ貿易を形づくった取り決めの影響が一様ではなかったことを示しています。とくに欧州の協定と国際ココア協定に、貿易を増やす効果が見られました。独立後の旧宗主国と旧植民地の経済的なつながりが、新たな協定によって形を変えて保たれた可能性を示している点も、この研究の重要な成果です。
原著論文の著者・所属:John Brown(Department of Economics Clark University Worcester Massachusetts USA)、Xenia Matschke(Fachbereich IV‐VWL Universität Trier Trier Germany)、Juan René Rojas Rodríguez(Fachbereich IV‐VWL Universität Trier Trier Germany)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):John Brown, Xenia Matschke, Juan René Rojas Rodríguez. International Cocoa Trading Arrangements Between Industrialised and Developing Countries 1951–1999: A Structural Gravity Analysis. World Economy 2026-09-03. DOI: 10.1111/twec.70147. 原著ライセンス:CC BY.