この研究は、ブラジル、ペルーの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Legume Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ソラマメ(Vicia faba L.)は、タンパク質やゆっくり消化されるデンプンを含むマメ科の作物です。論文によれば、ペルーのアンデス地域で伝統的に栽培されてきたソラマメは、栄養価の高さや厳しい土壌・気候条件への強さから見直されつつあります。一方でタンパク質を取り出す加工の副産物として、大量のデンプンが生じているといいます。

研究チームは、このアンデス産ソラマメのデンプンが、トウモロコシやジャガイモ、小麦といった一般的なデンプンに代わる「非従来型」の原料になりうるかに注目しました。ただし、純度が高く粒の傷みが少ないデンプンを取り出すことは容易ではありません。そこで著者らは、アンデス産ソラマメのデンプンの化学的・構造的な組成を明らかにし、取り出し方の違いがその構造や加工特性、熱に対する性質にどう影響するかを調べることを目的としました。

調べた方法

研究では、ペルー・クスコ地方で栽培されたQuelcao品種のソラマメを用い、二通りの方法でデンプンを取り出して比べました。ひとつは水だけに浸す「水抽出(AES)」、もうひとつは水に還元剤(二酸化硫黄)を加えて浸す「還元剤抽出(RES)」です。還元剤とは、論文の説明によれば、タンパク質どうしをつなぐ結合を切ってタンパク質の網目をほぐし、その中に閉じ込められたデンプン粒を取り出しやすくする働きをもつ薬剤で、酸化による変色なども抑えます。いずれも40℃で12時間浸したあと、皮を取り除き、水とともに粉砕・ろ過し、沈殿させて洗浄を繰り返す手順です。

得られたデンプンについて、収率、水分・灰分・タンパク質・総デンプン量、アミロース含量、傷んだデンプンの割合、色、粒子の大きさを測定しました。さらに、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡で粒の形や表面を観察し、X線回折で結晶構造を解析しています。加工特性としては、加熱・冷却時の粘りの変化(糊化温度や粘度)と、冷却後にできたゲルの硬さを調べました。

主な報告結果

著者らの報告では、どちらの方法でも白色度が高くタンパク質含量の低いデンプンが得られました。ただし還元剤を使ったRESのほうが、収率(22.77%)、アミロース含量(30.67%)、全体の結晶性(19.53%)がいずれも高く、傷んだデンプンの割合は5.78%と低く、より純度が高いことが示されました。水抽出のAESでは傷んだデンプンが8.67%でした。

粒の形はどちらも表面がなめらかな卵形・円形などで、大きさはばらついていました。X線回折では、マメ類に典型的なC型と呼ばれる結晶パターンが確認され、これは穀類に多いA型と、いも類に多いB型が混ざったものだと論文は説明しています。RESではより熱に安定とされるA型の割合が17.00%とやや高いことが報告されました。

こうした違いは加工特性にも表れました。RESは糊化が始まる温度が75.05℃と高く、最高粘度(1996 cP)・最終粘度(2795 cP)も高い値を示し、著者らはこれを熱的・流動的な安定性の高さと結びつけています。一方AESは糊化温度が70.18℃と低く、冷却後のゲルは41.35 Nと硬くなりました。論文はこれについて、浸漬中の粒の傷みや酸化反応が関係している可能性を挙げています。

この研究が示すこと

この研究は、同じソラマメから取り出したデンプンでも、抽出の方法によって構造と加工上のふるまいが変わることを示しました。著者らは、還元剤を用いた方法が、粒の構造を保ち熱に安定であることを求める用途にとってより有望だと述べています。

マメ類のデンプンを取り出す手順を理解することは、これまで十分に研究されてこなかったアンデス産ソラマメという原料の性質を知るうえでの土台になります。本研究は、その理解を一歩進める報告として位置づけられます。

著者:Hugo José Martins Carvalho(Department of Food Science and Nutrition, Faculty of Food Engineering Universidade Estadual de Campinas, Cidade Universitária Zeferino Vaz Campinas São Paulo Brazil)、Aline Adriano Wuchner(Department of Food Science and Nutrition, Faculty of Food Engineering Universidade Estadual de Campinas, Cidade Universitária Zeferino Vaz Campinas São Paulo Brazil)、Mateus Silva Cirino(Department of Food Science and Nutrition, Faculty of Food Engineering Universidade Estadual de Campinas, Cidade Universitária Zeferino Vaz Campinas São Paulo Brazil)、Rebeca Salvador‐Reyes(Facultad de Ingeniería Universidad Tecnológica del Perú Lima Peru)、Sérgio Michielon de Souza(Department of Materials Physics Federal University of Amazonas Manaus Amazonas Brazil)、Elizabeth Harumi Nabeshima(Cereal and Chocolate Research Center Instituto de Tecnologia de Alimentos Campinas Brazil)、María Teresa Pedrosa Silva Clerici(Department of Food Science and Nutrition, Faculty of Food Engineering Universidade Estadual de Campinas, Cidade Universitária Zeferino Vaz Campinas São Paulo Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hugo José Martins Carvalho, Aline Adriano Wuchner, Mateus Silva Cirino, et al. Influence of the Extraction Method on the Technological and Structural Properties of Andean Fava Bean Starch. Legume Science 2026-09-01. DOI: 10.1002/leg3.70150. 原著ライセンス:CC BY.