著者の所属・活動拠点の国は、バングラデシュ、アメリカ、インドです。

掲載誌:Foods

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

研究チームは、バングラデシュの生後12~59か月の子どもについて、血液中の鉛の濃度と、身長や体重からみた栄養状態との関連を調べました。年齢に対して身長が低い「発育阻害」、身長に対して体重が少ない「消耗症」、年齢に対して体重が少ない「低体重」に加え、これらが重なっている状態も検討しました。

何を、どのように調べたか

著者らは、バングラデシュの全国を代表するように設計された2025年の世帯調査のデータを再分析しました。対象は、静脈血の検査結果と、身長・体重など分析に必要なデータがそろった生後12~59か月の子ども10,495人です。鉛への曝露と身体の状態を同じ時点で調べる横断研究でした。

血中鉛濃度が高くなるにつれて身体の発育指標がどう変わるかを調べるとともに、調査で用いられた基準に従い、血中鉛濃度が5 μg/dL以上の子どもと、それ未満の子どもを比較しました。分析では、子どもの年齢や性別、母親の教育歴、居住地域、世帯の経済状況を考慮し、さらに血液中のヒ素、カドミウム、水銀を考慮した場合も関連が続くかを確認しました。補足的に、家庭の土壌中の鉛や、家族の仕事などと血中鉛濃度との関連も調べました。

主な報告結果

血中鉛濃度の中央値は4.3 μg/dLで、5 μg/dL以上の子どもは、調査の抽出方法を考慮した推計で38.6%でした。研究チームは、血中鉛濃度が高いほど、年齢に対する身長、年齢に対する体重、身長に対する体重の指標が低く、発育阻害、消耗症、低体重に該当する割合が高いと報告しました。これらの関連は、ほかの3種類の金属への曝露を考慮しても残りました。

5 μg/dL以上の群は、それ未満の群より、年齢に対する身長と体重の指標が有意に低い一方、身長に対する体重の指標には統計的に有意な差がありませんでした。また、鉛濃度が高いほど、発育阻害と低体重が重なる状態や、発育阻害・消耗症・低体重の三つが重なる状態なども多くみられました。

補足分析では、家庭の土壌中の鉛濃度が高いこと、家族に鉛に関わる仕事との接触があること、子どもが土や塗料片など食べ物ではないものを口にする行動が頻繁なことが、血中鉛濃度5 μg/dL以上の割合の高さと関連していました。

この報告が示すこと

著者らは、鉛への曝露を、バングラデシュの子どもの成長・栄養対策の中で考慮すべき公衆衛生上の問題と位置づけています。栄養状態の確認だけでなく、環境中の曝露の監視や、鉛の発生源を抑える取り組みを結びつける必要性を述べています。

ただし、同じ時点の測定に基づくため、鉛への曝露が栄養状態の悪化を引き起こしたとは判断できず、逆方向の関係も否定できません。血中鉛濃度は主に最近の曝露を反映し、長期間の蓄積を十分に捉えない可能性があります。また、食事や出生体重など考慮できなかった要因があり、採血対象者のうち有効な鉛検査結果が得られた子どもは62.1%で、結果の有無によって子どもの特徴にも違いがありました。こうした制約を踏まえつつ、本報告は、子どもの栄養を環境中の鉛への曝露と併せて捉える視点を示しています。

原著論文の著者・所属:Rafid Hassan、Ahadul Hassan Bhuiyan Konok(Institute of Nutrition and Food Science, University of Dhaka, Dhaka 1000, Bangladesh)、Tanjina Akter(International Centre for Diarrhoeal Disease Research, Bangladesh (icddr,b), Dhaka 1212, Bangladesh)、Masum Ali(Nutrition and Health Science, Laney Graduate School, Emory University, Atlanta, GA 30322, USA)、Ruhul Amin、Sanjib Saha

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Rafid Hassan, Ahadul Hassan Bhuiyan Konok, Tanjina Akter, et al. Lead Exposure and Nutritional Status Among Bangladeshi Children: An Analysis Based on Bangladesh Multiple Indicator Cluster Survey. Foods 2026-10-31. DOI: 10.3390/foods15213911. 原著ライセンス:CC BY.