この研究は、ペルーの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

果物と野菜は食物繊維やビタミン、ミネラルなどを供給し、健康的な食事の柱とされています。世界保健機関(WHO)は10歳以上の人に1日400グラム以上の摂取を推奨していますが、論文が引用するペルーの2024年人口・家族保健調査(ENDES)では、15歳以上で1日5皿分以上を食べている人はわずか8.9%にとどまり、都市部より農村部で低いと報告されています。

著者らは、食べ物の選択は栄養知識だけで決まるものではなく、個人的な要因、周囲との関係、暮らしの環境が絡み合って形づくられると整理しています。そこで注目したのが「購買意図」、つまり近い将来にその商品を買おうという意思や心構えです。論文は、購買意図が実際の購買や食事内容と同じものではなく、意図と行動の間にずれがあることはよく知られていると明記したうえで、購買行動に先立つ段階の傾向を調べる手がかりとして意図を扱っています。

この研究の目的は、ペルー在住の成人において、個人的要因・家族に関わる規範的要因・自己制御に関わる要因・買い物環境の受け止め方が、果物と野菜に対する「態度」と「購買意図」とどう結びついているかを、社会人口学的な要因で調整した横断的モデルで同時に検討することでした。著者らは、この研究が計画的行動理論(態度・主観的規範・行動統制感が意図の先行要因になるという枠組み)を参考にはしているが、その理論を正式に拡張・検証するものではないと述べています。

何をどう調べたか

調査は、ペルーに住む18歳以上の成人を対象としたオンライン質問票による横断研究です。調査リンクはWhatsAppのグループやFacebook Messengerを通じて配布され、参加は任意で、電子的な同意を得た人が回答しました。参加者の集まり方は志願と調査リンクへのアクセス可否に左右される、いわゆる非確率的な便宜的サンプリングです。最終的な分析対象は458人でした。

質問票は6つの構成概念について合計21項目を尋ねました。「健康意識」、「家族の影響」(パートナーや家族からの承認・期待・助言・影響)、「行動統制感」(果物と野菜を買えるという個人的なコントロール感や自信)、「利便性と入手しやすさの認識」(店の近さ、品ぞろえ、入手できるかどうかの受け止め)、「購入に対する態度」、「購買意図」です。回答は「まったくそう思わない」から「とてもそう思う」までの5段階でした。著者らは、利便性と入手しやすさはあくまで買い物環境に対する主観的な認識であり、小売アクセスを客観的に測ったものではないと明示しています。また家族の影響は家族に特化した規範であり、計画的行動理論の主観的規範そのものとは同一視していません。

分析では、性別・年齢層・学歴・婚姻状況・世帯収入・居住地域で調整したうえで、態度と購買意図をそれぞれ説明する回帰モデルを組みました。あわせて、測定の妥当性を調べる確認的因子分析、項目の組み合わせを変えた複数の感度分析、すべての回答が同じ質問票による自己申告であることに伴う偏りの検討などが行われています。著者らは、横断データであるため、態度を介した「間接的な結びつき」はモデル上の統計的な分解であって、時間的な順序や因果の媒介を示すものではないと繰り返し述べています。

主な報告結果

参加者は女性が73.8%、大学教育を受けた人が76.9%、41〜60歳が63.8%、リマ在住が66.2%でした。各概念の平均点(5点満点)では態度が最も高く4.35、次に購買意図が4.20、健康意識が4.05、行動統制感が4.00でした。家族の影響は3.55、利便性と入手しやすさの認識は3.47で最も低く、回答のばらつきも最大でした。

調整後のモデルでは、健康意識(標準化係数β=0.331)、行動統制感(β=0.228)、利便性と入手しやすさの認識(β=0.096)が態度と正の関連を示し、家族の影響は関連が支持されませんでした(β=0.051)。態度は購買意図と強い正の関連を示しました(β=0.568)。一方、4つの先行要因が購買意図と直接結びつくという関連は、いずれも統計的に支持されませんでした。態度を介した間接的な統計的関連は健康意識、行動統制感、利便性と入手しやすさの認識で認められ、家族の影響では認められませんでした。モデルは態度のばらつきの29.4%、購買意図のばらつきの43.2%を説明しました。

著者らは自ら重要な留保も示しています。最も安定していたのは健康意識と行動統制感で、これらは項目の組み合わせを変えた複数の分析でも態度との正の関連が保たれました。逆に、利便性と入手しやすさの認識に関わる結果は測定方法の指定によって変わりやすく、行動統制感と購買意図の直接の関連も一貫しませんでした。行動統制感の2項目による信頼性は0.619と境界的な水準だったため、慎重な解釈が必要だとされています。さらに、態度と購買意図は統計的には別の概念として区別できたものの、両者の相関は非常に高く(潜在相関0.933)、判別妥当性は限定的でした。このため著者らは、態度と購買意図の関連の強さや、そこを経由する間接的関連は、概念の重なりによって過大に出ている可能性があると注意を促しています。

この研究が示すこと

著者らは本研究の貢献を、新しい理論モデルの提案ではなく、個人・家族・自己制御・環境認識という異なる領域の要因を、ペルーの成人を対象に同時に検討した点に置いています。報告された姿は、果物と野菜を買おうという気持ちが「態度」という評価の層と密接に結びつき、健康意識や自分で買えるという自信がその態度と一貫して関連する、というものでした。同時に、購買意図のばらつきの半分以上は説明されずに残り、習慣や価格の負担、鮮度や品質の受け止め、世帯内の意思決定など他の要因が関わりうると論文は述べています。

限界も明確です。横断デザインのため時間的な前後関係や因果は示せず、調査対象は女性・大学卒・リマ在住に偏った便宜的サンプルであるため、ペルーの成人全体に一般化すべきではないと著者らは記しています。そして、この研究が扱ったのは自己申告による購買意図であり、実際の購買行動や食事摂取量に読み替えてはならないと明言しています。

読み方を誤らなければ、この報告は示唆に富みます。果物と野菜の購入を後押しする方策を考える際の手がかりとして、健康への意識や「自分は買える」という感覚といった領域を評価対象に含める余地があること、そして買い物環境については人々の受け止めと客観的な情報を並べて見る必要があること。著者らはこれらを、行動が変わる仕組みとして確立されたものではなく、今後の準備的調査や介入研究で検討しうる領域として提示しています。

著者:Eliana Contreras-López(Facultad de Farmacia y Bioquímica, Universidad Nacional Mayor de San Marcos, Lima 15081, Peru)、Rafael Orlando Florián-Castro(Escuela de Posgrado, Universidad San Ignacio de Loyola, Lima 15024, Peru)、José Alberto Nuñez Ramos(Intihuatana Pharmaceutical SAC, Av. José Pardo 640 Dpto 801, Miraflores, Lima 15074, Peru)、Ana Veliz Barandiaran(Servicio de Nutrición, British American Hospital, Lima 15073, Peru)、Jacksaint Saintila(Maestría en Nutrición Humana, Escuela de Posgrado, Universidad Peruana Unión, Lima 15464, Peru)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Eliana Contreras-López, Rafael Orlando Florián-Castro, José Alberto Nuñez Ramos, et al. Personal, Normative, and Access-Related Correlates of Fruit and Vegetable Purchase Intention in Peruvian Adults. Nutrients 2026-09-16. DOI: 10.3390/nu18183033. 原著ライセンス:CC BY.