著者の所属・活動拠点の国は、フランスです。
掲載誌:Bioresource Technology Reports
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
海藻の資源利用を妨げるヒ素を減らせるか
研究チームは、カリブ海で大量に漂着するホンダワラ類について、水に浸す処理や機械で搾る処理によって、ヒ素の濃度をどこまで下げられるかを調べました。これらの海藻は肥料や飼料などの原料として利用が検討されていますが、ヒ素を多く含むことが障壁になっています。研究では特に、ヒ素の中でも毒性の高い無機ヒ素を減らすことに焦点を当てました。
著者らが目指したのは、大規模な処理にも取り入れやすい、簡単で低コストの前処理です。ヒ素を減らすだけでなく、海藻に含まれる利用価値のある成分を保てるかも確かめました。
搾るだけより、水に浸す処理が有効
実験には、グアドループの湾で採集し、冷凍保存後に解凍したホンダワラ類の混合試料を使いました。研究チームは、1.5または3.2バールの圧力で10分間搾る処理を基本に、事前に淡水へ20分間浸す工程や、圧搾の途中でかき混ぜて水を加える工程を組み合わせました。また、浸す水の温度を20〜60℃に変え、処理後の総ヒ素と無機ヒ素の濃度を測定しました。
論文によると、圧搾だけではヒ素の濃度はあまり下がらず、事前に水へ浸す工程を加えることで大きな低下が見られました。20℃での浸漬処理では、未処理試料に比べて総ヒ素の濃度が42%、無機ヒ素の濃度が54%低下しました。60℃では、それぞれ66%、70%の低下が報告されています。無機ヒ素の処理後濃度は、乾燥した海藻1キログラム当たり約10ミリグラムまで下がりました。
研究チームは、褐藻に含まれるフェノール性化合物も測定しました。今回の浸漬条件では、未処理試料と比べて、これらの成分の明らかな損失は見られなかったと報告しています。
資源利用に向けた前処理としての意味
著者らは、比較的穏やかな温度で水に浸す方法を、ホンダワラ類のヒ素を減らす前処理として位置づけています。ただし、処理後も無機ヒ素は残り、今回得られた濃度は、論文が挙げる欧州連合の動物飼料向け上限値である1キログラム当たり2ミリグラムを上回っていました。ヒ素が減ったことと、そのまま飼料に使えることは同じではありません。
実験は一度に採集した一つの試料群で行われたものです。その範囲で今回の研究は、搾るだけよりも水に浸す工程がヒ素の低減に有効であり、測定したフェノール性化合物を保ちながら、資源利用の障壁を小さくできることを示しています。
原著論文の著者・所属:Charlotte Renoul(University of Brest, CNRS, IRD, Ifremer, LEMAR, 29280, Plouzane, France)、Tristan Gobert(University of Brest, CNRS, IRD, Ifremer, LEMAR, 29280, Plouzane, France)、Virginie Boy(IRDL, UMR CNRS 6027, Univ. Bretagne Sud, Bretagne INP, ENSTA, Institut Polytechnique de Paris, Univ. Brest, Pontivy, France)、Solène Connan(University of Brest, CNRS, IRD, Ifremer, LEMAR, 29280, Plouzane, France)、Valérie Stiger-Pouvreau(University of Brest, CNRS, IRD, Ifremer, LEMAR, 29280, Plouzane, France)、Jean-Louis Lanoisellé(IRDL, UMR CNRS 6027, Univ. Bretagne Sud, Bretagne INP, ENSTA, Institut Polytechnique de Paris, Univ. Brest, Pontivy, France)、Matthieu Waeles(University of Brest, CNRS, IRD, Ifremer, LEMAR, 29280, Plouzane, France)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Charlotte Renoul, Tristan Gobert, Virginie Boy, et al. Scalable low-cost processes for arsenic removal from holopelagic Sargassum spp: Performance of soaking and pressing treatments. Bioresource Technology Reports 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.biteb.2026.103032. 原著ライセンス:CC BY.