著者の所属・活動拠点の国は、ベトナムです。

掲載誌:Food Science & Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

未利用の水草を色素の原料に

研究チームは、淡水に生育する水草Ceratophyllum submersumから、光合成を担う緑色色素「クロロフィル」を取り出し、粉末にする条件を調べました。この水草は急速に増えて養殖作業の妨げになることがありますが、著者らは、取り除かれる植物体を天然色素の資源として活用することを目指しました。

研究では、マイクロ波で加熱して色素を抽出する工程と、抽出液を細かな霧にして熱風で乾かす「噴霧乾燥」を組み合わせました。色素を効率よく取り出すだけでなく、加工中の劣化を抑え、扱いやすい粉末にする条件を探っています。

抽出量を左右する加熱と添加剤の条件

研究チームは、乾燥・粉砕した水草を80%エタノールで抽出しました。色素の保護を目的に加える炭酸マグネシウムの濃度、マイクロ波の出力、抽出時間を変え、これらの組み合わせと総クロロフィル量の関係を統計モデルで分析しました。

検討した範囲でモデルが最適と予測したのは、炭酸マグネシウム濃度0.763%、出力372.1ワット、抽出時間5.28分でした。この条件で確認実験を行ったところ、原料の乾燥重量1グラム当たり0.187ミリグラムのクロロフィルが得られ、予測値との差は約2.5%だったと報告しています。

抽出量は、出力や時間を増やせば一方的に高まるわけではありませんでした。著者らは、加熱によって色素が溶媒へ移りやすくなる一方、過度な加熱では劣化が進むため、両者の釣り合いが重要だと説明しています。炭酸マグネシウムの濃度にも、調べた範囲内で最適な領域が認められました。

粉末化の条件と得られた製品の特徴

噴霧乾燥では、色素を保持するための材料としてマルトデキストリンを加えました。研究チームが好ましい条件として示したのは、マルトデキストリン25%、抽出液の供給速度毎分6ミリリットル、入口の熱風温度160℃です。温度が低いと乾燥が不十分になって粉末を回収しにくく、高すぎるとクロロフィルの保持が低下したと報告しています。

得られた粉末は、主に表面にしわのある球状の粒子で、水への溶けやすさが高く、流動性も許容できると評価されました。一方、赤外線による分析だけでは、クロロフィルとその分解物を明確に区別できないことも論文は述べています。

この研究は、十分に活用されていない水草を天然の緑色色素の原料として捉え、抽出と粉末化の条件を実験室規模で示したものです。色素を取り出す工程と、乾燥時に保つ工程を合わせて調整することの重要性が伝わります。

原著論文の著者・所属:Hoang Thi Ngoc Nhon(Ho Chi Minh City University of Industry and Trade Ho Chi Minh City Vietnam)、Lam Nguyen Dan Khoa(Ho Chi Minh City University of Industry and Trade Ho Chi Minh City Vietnam)、Le Thi Hong Anh(Ho Chi Minh City University of Industry and Trade Ho Chi Minh City Vietnam)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hoang Thi Ngoc Nhon, Lam Nguyen Dan Khoa, Le Thi Hong Anh. Optimisation of Microwave‐Assisted Extraction and Spray Drying for Chlorophyll Powder Production From Ceratophyllum submersum L.. Food Science & Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.1002/fsn3.72320. 原著ライセンス:CC BY.