健康診断で中性脂肪やLDL(いわゆる悪玉)コレステロールの数値が気になったことはないだろうか。血液中の中性脂肪やLDLコレステロールが高く、HDL(善玉)コレステロールが低い状態は「アテローム性脂質異常症」と呼ばれ、動脈硬化性の心血管疾患と関連が深いことが、これまでの研究で示されてきた分野である。今回紹介するのは、この脂質異常症に対して、インド発祥の伝統医学であるアーユルヴェーダの治療法を組み合わせて行った、小規模な症例集積研究である。

研究の背景

この論文によると、LDLコレステロールやApoB(アポリポタンパクB、LDLなどに含まれるタンパク質)の値が高いことが、動脈硬化性の心血管疾患が起こる主な要因の一つとされている。アーユルヴェーダの考え方では、こうした脂質異常症は「ジャタラーグニ」や「メードダートゥ・アグニ」と呼ばれる消化・代謝の働きの乱れによって「メードードゥシュティ(脂肪組織の異常)」が生じることで起こると捉えられているという。この研究は、アーユルヴェーダ的な治療プロトコルが脂質異常症の調整にどのような効果を示すかを検証することを目的としている。

研究でわかったこと

研究対象は、アテローム性脂質異常症と診断された患者6名。治療プロトコルとして、薬用パウダーを用いたマッサージである「ウドゥヴァルタナ」と、治療的な下剤処置である「ヴィレーチャナ」を実施し、これに加えて経口のアーユルヴェーダ薬の服用、および食事・生活習慣の見直しを組み合わせて、60日間にわたって行われた。評価の中心となったのは、中性脂肪・LDL・HDLといった脂質の値とApoBの変化で、あわせて症状の変化、BMI(体格指数)、そして今後10年間の心血管疾患リスクを示すASCVDスコアとQRISK3スコアの変化も調べられた。すべて治療の前後で測定されている。

報告された結果によると、60日間の治療後、平均で中性脂肪が62.67 mg/dL(29.51%)、LDLが84.13 mg/dL(51.45%)、LDL/HDL比が2.86(60.98%)、ApoBが73.40 mg/dL(43.64%)それぞれ低下し、HDLは8.43 mg/dL(24.22%)上昇したとされている。また平均BMIも1.43 kg/m²(5.23%)減少したという。さらに、10年後の心血管疾患リスクを示すASCVDスコアとQRISK3スコアについても、中リスクや高リスクの区分から低リスクの区分へと移る傾向が見られ、動脈硬化に関連するリスクの低下を示唆する結果だったと報告されている。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

今回の研究は、対象者がわずか6名という小規模な症例集積研究であり、比較対照群(治療を行わないグループなど)を置いた試験ではない。そのため、報告された変化がアーユルヴェーダ治療プロトコルによるものなのか、他の要因(食事・生活習慣の変更そのものなど)がどの程度寄与しているのかを、この研究だけから明確に切り分けることは難しい。あくまで一つの研究であり、結論が確定したわけではない点には留意しておきたい。効果を断定するものではなく、今後さらに規模の大きな研究による検証が期待される段階だと言えるだろう。

まとめ

この症例集積研究では、ウドゥヴァルタナやヴィレーチャナといったアーユルヴェーダの治療法に、経口薬や食事・生活習慣の改善を組み合わせたプロトコルを60日間行ったところ、脂質異常症の患者6名において、脂質値やApoB、心血管リスクスコアの改善が報告された。少人数を対象にした予備的な報告であり、今後の研究の広がりに注目したいテーマである。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:アテローム性脂質異常症に対するアーユルヴェーダ的アプローチ:前向き介入症例集積研究(ジャーナル・オブ・アーユルヴェーダ・アンド・ホリスティック・メディシン・2026年07月)