著者の所属・活動拠点の国は、タイです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

のどや口、鼻など「頭頸部」にがんができた患者さんは、腫瘍そのものの影響や、手術・放射線治療・化学療法による副作用、体内の炎症などが原因で、食事が十分にとれなくなることが少なくありません。報告によっては、こうした患者さんの2割から7割にも栄養不足がみられるとされています。口から十分な栄養をとれない場合には、チューブを通して栄養剤を胃や腸に直接届ける「経腸栄養」が選択されることが多いのですが、従来主流だった粉末タイプの栄養剤は、使うたびに水に溶かして調製する手間がかかるうえ、調製の過程で雑菌が混入するリスクも指摘されてきました。

こうした課題を解決する選択肢として開発されたのが、鶏肉由来のタンパク質を主原料とし、溶かす手間なくそのまま使える「即飲タイプ(レディ・トゥ・ドリンク)」の経腸栄養剤「PSU Blen」です。今回紹介する研究は、この新しい即飲タイプの栄養剤が、従来の粉末タイプの栄養剤と比べて栄養面で劣らないかどうかを調べたランダム化比較試験です。

研究でわかったこと

この研究は単一の医療機関で実施され、経腸栄養を必要とする頭頸部がん患者30人が、即飲タイプの「PSU Blen」を使うグループと、市販の粉末タイプ栄養剤「Blendera」を使うグループに1対1の割合でランダムに振り分けられ、4週間にわたって栄養剤の摂取を続けました。

評価の中心となったのは、栄養状態を総合的に判定する「PG-SGA(患者立脚型主観的包括的評価)」というスコアの変化です。この試験は、即飲タイプが粉末タイプに対して「劣っていない(非劣性)」かどうかを、あらかじめ設定した基準(非劣性マージンδ=2点)に照らして検証する枠組みで設計されました。

結果として、PG-SGAスコアの変化は、PSU Blenグループで平均マイナス1.13、Blenderaグループで平均マイナス0.87となり、両グループの差はマイナス0.27点(90%信頼区間:マイナス0.99~プラス0.45)でした。この差の上限が、あらかじめ定めた非劣性マージンを下回ったことから、PSU Blenは粉末タイプの栄養剤に対して非劣性であることが示されたと報告されています。追加の感度分析でも同様の結果が得られたとのことです。

握力、体重、体格指数(BMI)、血清アルブミン値、ヘモグロビン値、血小板数といった副次的な評価項目についても、両グループの間に有意な差は見られませんでした。また、消化器系の不耐性や重大な有害事象は両グループとも報告されず、忍容性も同程度であったとされています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

今回の研究は、単一の施設で行われ、参加者も30人と限られた規模の試験です。論文の著者らも、より長期間かつ複数の施設を対象とした研究によって、実際の臨床現場での有用性や利点をさらに検証する必要があると述べています。今回の結果だけで、即飲タイプの栄養剤が粉末タイプより優れている、あるいはあらゆる患者に適していると結論づけることはできず、一つの研究として今後の検証を待つ段階にあると理解するのが適切でしょう。

まとめ

今回の研究では、頭頸部がん患者を対象に、調製の手間がかからない即飲タイプの経腸栄養剤(PSU Blen)が、従来の粉末タイプの栄養剤と比べて、4週間後の栄養状態の指標(PG-SGAスコア)において劣らないことが示されたと報告されています。忍容性も同程度であったことから、日常の経腸栄養管理における選択肢の一つとなる可能性が示唆されていますが、さらなる長期・多施設での検証が必要とされています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):頭頸部がん患者の栄養状態に対する即飲タイプ経腸栄養剤の非劣性:ランダム化比較試験(ニュートリエンツ・2026年06月)

著者:Manupol Tangthongkum(Department of Otolaryngology Head and Neck Surgery, Faculty of Medicine, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)、Ploychanok Cherngwiwatkij(Department of Otolaryngology Head and Neck Surgery, Faculty of Medicine, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)、Saowakon Wattanachant(Food Science and Technology Program, Faculty of Agro-Industry, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)、Pakjira BenyaPanya(Division of Nutrition, Songklanagarind Hospital, Faculty of Medicine, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)、Peesit Leelasawatsuk(Department of Otolaryngology Head and Neck Surgery, Faculty of Medicine, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)、Chaitong Churuangsuk(Clinical Nutrition and Obesity Medicine Unit, Department of Medicine, Faculty of Medicine, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)、Kanjana Chimrung(Division of Nutrition, Songklanagarind Hospital, Faculty of Medicine, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)、Theepat Wongkittithaworn(Department of Otolaryngology Head and Neck Surgery, Faculty of Medicine, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)、Sittidet Nualnim(Department of Otolaryngology Head and Neck Surgery, Faculty of Medicine, Prince of Songkla University, Hat Yai 90110, Songkhla, Thailand)