すり身は魚肉から作られる練り製品の原料で、かまぼこやちくわなど幅広い食品に使われています。近年、食品加工の新しい技術として『プラズマ活性化水(PAW)』と呼ばれる非加熱の処理方法が注目されています。プラズマ活性化水は、プラズマを水に照射することでさまざまな反応性物質を含むようになった水のことです。しかし、水洗いをしていない未水洗すり身に含まれるタンパク質と、このプラズマ活性化水がどのように反応するのかは、これまではっきりしていませんでした。

未水洗のすり身には、筋肉を動かすタンパク質である『ミオシン』のほかに、酸素を運ぶ働きを持つ色素タンパク質『ミオグロビン(Mb)』も含まれています。ミオグロビンが存在すると、すり身の劣化が進みやすくなることが知られています。今回の研究では、この状況を再現するために、ミオグロビンとミオシンを混ぜ合わせた混合物を用意し、そこにプラズマ活性化水を処理して、含まれる反応性物質がタンパク質の劣化過程にどのような影響を与えるかを調べました。

研究でわかったこと

この研究では、ミオグロビンとミオシンを混ぜた『Mb-ミオシン群』と、ミオシン単独の『ミオシン群』とを比較しました。その結果、Mb-ミオシン群の方が、活性部位の酸化、タンパク質の構造がほどける現象(アンフォールディング)、分子の凝集といった変化の進み方が、ミオシン群よりも緩やかであることが示されました。

具体的には、プラズマ活性化水を80秒処理した場合、Mb-ミオシン群では、タンパク質中の総スルフヒドリル基(チオール基)の量が25.55%減少し、カルボニル基の量は162.85%増加し、粒子径は28.27%大きくなったと報告されています。スルフヒドリル基の減少とカルボニル基の増加は、タンパク質の酸化が進んだことを示す指標として用いられています。

さらに、プラズマ活性化水はMb-ミオシン群のゲル形成能力を高める効果も示しました。20秒間の処理では、ゲル強度が152.98%増加し、水を保持する力である保水性は16.91%向上したとされています。これらの結果から、プラズマ活性化水がミオシン単独を直接処理する場合に比べて、Mb-ミオシンに対しては相対的に酸化作用が弱いことが示唆されています。また、ミオグロビンとミオシンが組み合わさった複合タンパク質のゲルは、適度な酸化状態に達するまでに、より長い時間を要することも示されました。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、プラズマ活性化水と食品タンパク質との相互作用を調べた一つの研究であり、得られた結果がすべてのすり身製品や加工条件にそのまま当てはまるとは限りません。著者らは、この研究が未水洗すり身のゲル特性をプラズマ活性化水技術によって改善するための理論的な基盤を提供するものだとしています。実際の食品加工への応用については、さらなる検証が必要と考えられます。

なお、この研究は中国・錦州にある渤海大学食品科学技術学院などに所属する研究者らによって行われました。

まとめ

この研究では、プラズマ活性化水を用いた処理が、未水洗すり身を模した実験系において、ミオグロビンとミオシンの混合タンパク質の酸化やゲル形成にどのような影響を与えるかが調べられました。ミオグロビンが存在することで酸化の進み方が緩やかになる一方、ゲルの強度や保水性は処理によって向上する傾向が示されたと報告されています。これらの知見は、非加熱のプラズマ活性化水技術を食品加工に応用していくうえでの基礎的な情報として位置づけられます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:プラズマ活性化水により誘導されるミオグロビン-ミオシンの酸化とゲル化(npjサイエンス・オブ・フード・2026年08月)