この研究は、香港、中国の研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

マイタケ(学名 Grifola frondosa)は、東アジアの伝統的な利用や現代の機能性食品研究のなかで、多糖(糖がたくさんつながった大きな分子)を豊富に含む素材として注目されてきました。著者らによれば、これまでの研究ではマイタケ由来の多糖がマクロファージやT細胞、ナチュラルキラー細胞といった免疫にかかわる細胞を刺激することなどが報告されています。

ただし論文は、従来の研究の多くが粗い抽出物や部分的にしか精製されていない試料を使ってきたため、どの分子量の成分がどのような性質を持ち、どの働きに関わっているのかを切り分けにくかったと指摘しています。加えて、多糖が体内でどこへ行くのかを調べる方法にも難しさがあり、放射性標識や蛍光追跡などにはそれぞれ制約があるとしています。

そこで研究チームは、マイタケから多糖を抽出・精製したうえで分子量ごとに分け、それぞれの成分組成や糖のつながり方を調べ、細胞を使った実験で働きを比べ、さらに最も活性の高かった画分について動物での分布を調べる、という一連の検討を行いました。

何をどう調べたか

著者らは、マイタケの子実体1kgを熱水で煮出してエタノールで沈殿させ、イオン交換樹脂で塩やタンパク質などの不純物を取り除きました。その後、10kDa(キロダルトン、分子の重さの単位)と1kDaの孔をもつ膜を使った限外ろ過という方法で、大きさの違う3つの画分に分けました。10kDaより大きいものをPP-1、1〜10kDaをPP-2、1kDa未満をPP-3と名づけ、回収量の割合はそれぞれ10.2%、14.4%、75.4%だったと報告しています。

分けた画分については、糖・酸性糖・タンパク質の含量、構成する単糖の種類、分子量分布、そして糖どうしのつながり方(グリコシド結合のパターン)をメチル化分析などで調べました。働きの評価には、マウス肉腫細胞(S180)とヒト肝がん細胞(HepG2)を使った増殖抑制の試験と、マウスのマクロファージ(RAW 264.7)を使って一酸化窒素や炎症性の情報伝達物質の産生量を測る試験を用いています。

体内分布の検討では、多糖がヨウ素と直接は反応しないため、まず蛍光色素(FITC)で標識してからヨウ素を導入した標識体(PP-FI)をつくり、ラットに経口投与しました。そのうえで、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析)という微量元素を高感度に測る装置でヨウ素量を測り、血液や臓器での量を推定しています。

報告された主な結果

精製によって総糖含量は粗多糖の43.68%から74.91%へ上がり、タンパク質含量は33.80%から23.20%へ下がりました。分けた3画分のうち総糖含量が最も高かったのはPP-3(79.08%)でした。分子量の見かけの値はPP-1が10,312Da、PP-2が1,107Da、PP-3が184Daと推定されています。ただし著者ら自身が、PP-3の値は検量に使った標準物質の範囲より下にあたるため見かけの推定値として慎重に扱うべきだとし、この画分を従来型の高分子多糖というより「低分子の糖・オリゴ糖に富む画分」と表現するのが適切だと述べています。

糖のつながり方の分析では、PP-1がグルコースとガラクトースからなる14種類の糖残基を含み、枝分かれの多い複雑な構造を示したのに対し、PP-2とPP-3はいずれもグルコース中心で、主要な結合の種類が3つという、より単純なパターンを示しました。

細胞を使った実験では、いずれの試料も濃度が高いほど強い増殖抑制を示し、そのなかでPP-3がS180細胞・HepG2細胞の両方に対して最も強い抑制を示しました。マクロファージの実験でも、PP-3が増殖と免疫関連物質の産生をもっとも大きく増やしました。動物実験では、経口投与後の血中量から計算された吸収率は2時間後に最も高く5.25%となり、3時間後には低下しました。投与3時間後の臓器では肝臓が最も多く(1.77mg)、次いで腎臓(1.01mg)で、心臓・脾臓・肺はいずれもそれより少ない量でした。

この研究が示していること

論文は、この研究の位置づけを慎重に限定しています。がん細胞の実験では陽性対照や正常細胞との比較を置いていないため、効き目の強さやがん細胞への選択性は判断できないこと、マクロファージの実験ではエンドトキシン(細菌由来の物質)の混入を否定する対照を設けていないこと、核磁気共鳴(NMR)による解析を行っていないため構造の推定はあくまで予備的なものであること、そしてICP-MSが測っているのはヨウ素であって糖の骨格そのものではないため、標識された物質に由来する分布の情報にとどまることを、著者ら自身が明記しています。

そのうえでこの研究は、粗い抽出物として一括りに扱われがちだったキノコ由来の多糖を分子量で切り分け、組成・構造・細胞での反応・体内での分布までを一つの流れとして並べて示したものです。最も低分子の画分で細胞レベルの反応が強く、経口投与後には主に肝臓と腎臓で検出されたという報告は、成分の大きさや構造と働きの関係を今後さらに切り分けて調べていくための、予備的な手がかりを与えるものといえます。

著者:Yao Sun(Department of Pharmacy, China-Japan Union Hospital of Jilin University)、Wei Zheng(Departments of Ophthalmology, The Affiliated Hospital, Changchun University of Chinese Medicine)、杨献玲(Chinese Traditional Medicine Division, Jilin Institute of Food and Drug Control)、邓家玉(Department of Pharmacy, Lequn Branch, The First Hospital of Jilin University)、高其品(Jilin Ginseng Academy, Changchun University of Chinese Medicine)、Duoduo Xu(Country School of Pharmacy, Changchun University of Chinese Medicine)、Yang Gao(Jilin Ginseng Academy, Changchun University of Chinese Medicine)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yao Sun, Wei Zheng, 杨献玲, et al. Molecular-weight fractionation, preliminary structural characterization, bioactivity, and ICP-MS-based biodistribution of Grifola frondosa polysaccharide-derived fractions. Frontiers in Nutrition 2026-08-27. DOI: 10.3389/fnut.2026.1930891. 原著ライセンス:CC BY.