1型糖尿病は、体内の免疫の働きによって膵臓のインスリンを作る細胞が損なわれることで起こる病気として知られています。近年、腸内細菌のバランスの乱れ(いわゆる腸内フローラの乱れ)や、体内で慢性的に続く軽度の炎症が、こうした病気の背景に関わっている可能性があるとして研究が進められてきました。そして、その腸内環境や炎症の状態に、日々の『食事』がどう関わっているのかは、まだよくわかっていない部分が多いテーマです。今回紹介する研究は、1型糖尿病のある人たちを対象に、食事の内容と、腸のバリア機能や炎症に関するさまざまな血液・便のマーカーとの関連を調べた横断研究です。
研究でわかったこと
この研究では、1型糖尿病の患者を対象に、24時間分の食事内容を振り返って聞き取る『24時間思い出し法』、3日間の食事記録、そして普段の食習慣を尋ねる質問票という3つの方法で食事の内容を調べました。同時に、血液中の炎症マーカーやエンドトキシン血症(腸から血液中に細菌由来の成分が漏れ出すことに関連する状態)に関わるマーカー、そして便の中の『カルプロテクチン』という腸の炎症の指標となる物質の量も測定しました。
その結果、いくつかの興味深い関連が見えてきました。まず、炎症マーカーの一つである高感度CRPが高い人では、コーヒーや紅茶、ココアといった温かい飲み物や、豆類の摂取が多い傾向がみられました。一方で、タンパク質、脂質、エネルギー(摂取カロリー)、食物繊維の摂取が少ない人ほど、高感度CRPが高い傾向も示されました。
また、腸のバリア機能の乱れに関連するとされる『リポポリサッカライド(LPS)』というマーカーの値や、LPSと善玉コレステロール(HDL)の比率が高いことは、赤身肉の摂取が多いことと関連していることが示されました。さらに、便中カルプロテクチンの値については、タンパク質の摂取が多いことと関連がみられたと報告されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、ある一時点での食事内容と体内のマーカーとの『関連』を調べた横断研究であり、食事が炎症や腸のバリア機能の変化を『引き起こす』ことを直接証明したものではありません。論文の著者らも、これは探索的な研究であるとしたうえで、腸のバリア機能について、より踏み込んで調べる介入研究(実際に食事内容を変えて効果を検証するような研究)が今後必要であると述べています。この一つの研究結果だけで、特定の食品が良い・悪いといった結論が確定したわけではない点には注意が必要です。
まとめ
今回紹介した研究では、1型糖尿病のある人において、温かい飲み物や豆類、赤身肉、あるいはタンパク質・脂質・エネルギー・食物繊維の摂取状況が、炎症マーカーや腸のバリア機能に関わるマーカーと関連している可能性が示唆されました。食事と腸内環境、そして病気の関係については、まだ解明が進んでいる途中の分野です。今後、こうした関連の背景にあるしくみや、実際に食事を変えることでどのような変化が起こるのかを調べるさらなる研究が期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:1型糖尿病患者における食事と腸管透過性および炎症マーカーとの関連(バイオメディカル・リポーツ・2026年07月)