著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、カナダです。
掲載誌:Diabetes Obesity and Cardiometabolic CARE
ライセンス: CC BY-NC-SA 確認元: OpenAlex
2型糖尿病の治療では、薬物療法とあわせて食生活の見直しが重要な役割を果たすとされています。食事指導の方法としては、管理栄養士による個別の医療栄養療法(MNT)が広く行われてきましたが、近年は実際に調理を体験しながら学ぶ「料理医学(カリナリーメディスン、CM)」という手法も注目されています。今回紹介する研究は、この二つのアプローチを比較し、血糖コントロールの指標であるHbA1cや食事の質にどのような違いが出るのかを調べたものです。
研究は、米国テキサス州ダラスのセーフティネット医療システム(低所得層や無保険者を含む幅広い患者を受け入れる医療体制)のもとで実施されました。対象となったのは、血糖コントロールが未達成の状態(HbA1cが7.0%以上)にある2型糖尿病の成人患者79名です。参加者は無作為に、管理栄養士主導のMNT群(43名)と、CM群(36名)の2グループに割り付けられました。両群とも、それぞれの方式で6回のセッションを受け、介入開始から6か月後の時点でHbA1cの変化と、地中海式食事への準拠度を測る指標である「MEDI-LITEスコア」の変化が比較されました。分析には、介入前後の変化を両群間で比較する「差分の差分分析」という統計手法が用いられています。
血糖値と食事スコアはどう変化したか
結果を見ると、MNT群ではHbA1cが平均で1.15ポイント低下し、この変化は統計的に有意なものでした。一方のCM群でもHbA1cは平均0.55ポイント低下したものの、こちらは統計的に有意な変化とは認められませんでした。ただし、両群の変化量を直接比較した群間差については、有意な差は見られなかったと報告されています。つまり、MNT群の中では明確な改善が確認された一方、「MNT群のほうがCM群より優れていた」と断定できるだけの統計的な裏付けは、今回のデータからは得られなかったことになります。
地中海式食事への準拠度を示すMEDI-LITEスコアについても、各群内での変化、および群間の差のいずれにおいても、有意な違いは確認されませんでした。この結果は、今回の6か月間・6回セッションという介入デザインの中では、少なくとも食事スコアの面で両アプローチのあいだに明確な差を見出すことができなかったことを示しています。
この研究を読むうえでの注意点
著者らは、この研究がCOVID-19パンデミックのさなかに実施されたという特有の事情を限界として挙げています。感染拡大の影響により、参加者の募集や追跡調査が当初の目標どおりに進まず、統計的な検出力(本来存在する差を検出できる力)が不足した可能性があるとされています。そのため、群間差が「見られなかった」という結果が、本当に両アプローチに差がないことを意味するのか、それとも参加人数の不足によって差を検出しきれなかっただけなのかは、この研究のみからは判断できません。
研究チームには、テキサス大学サウスウェスタン医療センターの公衆衛生大学院や内科部門、テキサス大学ダラス校、パークランド健康・病院システム、ネブラスカ州オマハの栄養・健康インパクトセンターに所属する研究者らが名を連ねています。
まとめ
今回の研究では、医療栄養療法の実施群でHbA1cの有意な低下が確認された一方、料理医学の実施群ではその低下が統計的に有意とはならず、また両群を直接比較した際の差も有意ではなかったと報告されています。COVID-19パンデミックによる募集・追跡の制約という限界を抱えた実践的な試験であり、一つの研究として位置づけられるものです。料理医学と医療栄養療法のどちらがより効果的かについては、今回の結果だけで結論づけることはできず、今後さらに規模の大きい研究による検証が待たれるところです。
原著論文の著者・所属:Carolyn Smith-Morris(1Peter O’Donnell Jr. School of Public Health, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Vincent C. Merrill(2Department of Internal Medicine, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Jaclyn Albin(1Peter O’Donnell Jr. School of Public Health, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Molly McGuire(2Department of Internal Medicine, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Patricia M. Chen(4School of Economic, Political, and Policy Sciences, The University of Texas at Dallas, Richardson, TX)、Guadalupe I. Perez(2Department of Internal Medicine, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Milette Siler(2Department of Internal Medicine, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Miguel Angel Lopez(6Center for Nutrition and Health Impact, Omaha, NE)、Marisel Ponton(1Peter O’Donnell Jr. School of Public Health, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Rebecca Chrasta(7Parkland Health and Hospital System, Dallas, TX)、Melissa Mendez(7Parkland Health and Hospital System, Dallas, TX)、Song Zhang(1Peter O’Donnell Jr. School of Public Health, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Sandi L. Pruitt(1Peter O’Donnell Jr. School of Public Health, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)、Timothy S. Harlan(9George Washington University School of Medicine and Health Sciences, Washington, DC)、Michael E. Bowen(1Peter O’Donnell Jr. School of Public Health, University of Texas Southwestern Medical Center, Dallas, TX)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Carolyn Smith-Morris, Vincent C. Merrill, Jaclyn Albin, et al. Culinary Medicine and Medical Nutrition Therapy Interventions to Improve Glycemic Control in Type 2 Diabetes: A Pragmatic Trial During the COVID-19 Pandemic. ダイアビーティーズ・オビーシティ・アンド・カーディオメタボリック・ケア (2026). DOI: 10.2337/doc26-0048.