著者の所属・活動拠点の国は、イギリス、コロンビアです。

掲載誌:Journal of Agrarian Change

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の背景と問い

コロンビアでは、工業的な養鶏産業が急速に拡大しています。研究チームによると、工業的な養鶏の技術や生産の仕組みは、クリオージョと呼ばれる在来鶏(ガルス・ドメスティクス)を庭先で飼う営みを変えつつあります。変化は、飼育に関わる知識や実践、そして在来鶏が持つ農業上の生物多様性にまで及んでいます。また、正規の市場では工業養鶏が在来鶏の飼育を競争で押しのけているといいます。

著者らは、この移行が女性の自律性と、社会的・経済的な暮らしの回復力を損なっていると指摘しています。輸入された鶏、医薬品、飼料といった市場で買う資材に頼らざるを得なくなるためです。それでも在来鶏の飼育は、自家消費や非公式な市場向けとして続いています。論文が問うのは、在来鶏の飼育がなぜ、どのように続いているのかという点です。あわせて、女性たちが日々の世話(ケア)の実践を通じて、工業養鶏とそれに重なり合うジェンダーの力関係に、それぞれどのように抵抗しているのかを探っています。

どのように調べたか

研究チームは、コロンビアの複数の地域で行われた二つのプロジェクトから、9件の半構造化インタビューを選んで分析しました。半構造化インタビューとは、あらかじめ大まかな質問を用意しつつ、相手の話に応じて自由に掘り下げていく聞き取りの方法です。

二つのプロジェクトはどちらも、参加型アクションリサーチと共同生産型の手法を用いていました。参加型アクションリサーチは、研究者だけで調査を進めるのではなく、地域の人々が研究の過程に加わって課題を一緒に考えていく方法です。共同生産型の手法も、研究者と当事者が協力して知見をつくり出すやり方を指します。

主な報告内容

論文は、女性たちが三つの要素を組み合わせて、工業的な生産の仕組みから自律した立場を築いていると論じています。一つ目は、世代を超えて労働や知識を分かち合うネットワークです。二つ目は、共同体の中で行われる相互の実践です。三つ目はアグロエコロジーの原則で、これは生態系の仕組みを生かした農業の考え方を指します。

著者らによれば、こうした取り組みは家族や、より広い地域社会において、社会的・経済的な力を高めることにつながっています。さらに論文は、工業養鶏への目立たず非公式なこうした反対が、女性農業者による組織的な抵抗運動を支える土台にもなっていると述べています。

この研究が示すこと

この研究は、庭先で在来鶏を飼うという身近な営みに光を当てています。そこに、産業化の流れの中で女性たちが自律性を保とうとする日常的な抵抗が含まれていることを、聞き取りに基づいて描き出しました。日々の世話や知識の受け渡しといった目立たない実践が、組織的な運動とも結びつきうるという視点を示した点に、この研究の意味があります。

原著論文の著者・所属:Jaskiran Kaur Chohan(School of Geographical Sciences University of Bristol Bristol UK)、Arlex Angarita Leiton(Faculty of Engineering Corporación Universitaria Minuto de Dios (UNIMINUTO) Bogotá Colombia)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jaskiran Kaur Chohan, Arlex Angarita Leiton. Feminist Agroecology and Criollo Hens: Women's Everyday Resistance in Colombia. Journal of Agrarian Change 2026-10-27. DOI: 10.1111/joac.70122. 原著ライセンス:CC BY.