ビタミンEと聞くと、抗酸化作用がある栄養素というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。ビタミンEには実は8種類の仲間が存在しますが、その中でも「α-トコフェロール」と呼ばれる形が、最も活性が高く生体内での働きが大きいとされています。体の中で発生する活性酸素(フリーラジカル)から、細胞膜や脂肪組織などを守る役割を担う脂溶性の抗酸化物質として知られています。こうした成分が食用油にどれだけ含まれているかを正確に測ることは、食品の品質評価などの場面で重要な意味を持ちます。今回紹介する研究では、小麦胚芽油とザクロ種子油という2種類の食用種子油を対象に、α-トコフェロールの含有量を測定する新しい方法が試されました。
この研究では、α-トコフェロールの量を調べるために2つの方法が使われ、その結果が比較されています。一つは、成分分析でよく使われる従来の手法である高速液体クロマトグラフィー(HPLC)です。もう一つは、電気化学的な手法である「差分パルスボルタンメトリー(DPV)」と呼ばれる新しいアプローチで、カーボンナノチューブで表面を修飾した電極を、アセトニトリルという溶媒と過塩素酸ナトリウムを組み合わせた環境の中で用いています。まず、α-トコフェロールをサイクリックボルタンメトリーという方法で調べたところ、酸化反応に由来する2つの明確なピークが確認されました。そのうえでDPVを用いた測定では、α-トコフェロールの濃度が1リットルあたり15.9〜182.5マイクログラムという範囲の中で増えるにつれて、電流のピークが直線的に大きくなる関係が観察されたと報告されています。また、この方法で検出できる最小の濃度(検出限界)は、1リットルあたり0.23マイクログラム(0.54ナノモル)ときわめて微量であったとされています。そして実際に、この電気化学的な手法を使って小麦胚芽油とザクロ種子油に含まれるα-トコフェロールの量を測定したところ、従来のHPLCによる測定結果と一致する値が得られたと報告されています。
この研究の位置づけと読むうえでの注意
この研究は、食用油に含まれるα-トコフェロールを測定するための分析手法そのものに焦点を当てたものであり、α-トコフェロールを摂取することの健康効果を検証したものではない点に注意が必要です。つまり、ここで示されているのは「新しい電気化学的な測定方法が、従来のHPLCと同程度に信頼できる結果を与える可能性がある」という分析技術上の知見であり、ビタミンEの効能そのものを裏付けたり、特定の食品を推奨したりする内容ではありません。また、この研究で扱われたのは小麦胚芽油とザクロ種子油という2種類の油に限られており、他の食用油についても同様の結果が得られるかどうかは、この要旨だけからは分かりません。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点を踏まえて読んでいただければと思います。
まとめ
この研究では、食用種子油に含まれる抗酸化物質であるα-トコフェロールの含有量を測るために、電気化学的な新しい手法(DPV)と従来のHPLC法が比較され、両者の測定結果が一致していたと報告されています。微量な成分を高感度に検出できる分析技術が、食品分析の分野でどのように活用されていくのか、今後の展開が注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:HPLCと電気化学的手法による食用種子油中のα-トコフェロール含有量の測定(エーシーエス・オメガ・2026年07月)