この研究は、中国の研究機関の研究論文です。
掲載誌:GM crops & food
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
遺伝子組み換え(GM)技術は世界の食料安全保障にとって重要な技術とされる一方、その受け入れは人々の態度に左右されやすいと指摘されてきました。研究チームは、中国において人々がGM食品をどう捉えるかが、どのような価値観の枠組みと結びついているのかを明らかにしようとしました。
この研究が着目したのは「合理性」の三つの型です。科学的合理性は科学的な知識や証拠を重んじる姿勢、社会的合理性は社会の中での公正さや人々の暮らしへの影響を重んじる姿勢、生態的合理性は自然環境や生態系への配慮を重んじる姿勢を指します。著者らは、これら三つの姿勢がGM食品への態度とどう関連するか、またその関係を「制度への信頼」がどのように橋渡ししているかを検討しました。制度への信頼とは、政府や規制機関といった仕組みに対して人々が寄せる信頼のことです。
調査の方法
研究チームは、中国の三都市の都市住民1020人を対象とした質問紙調査のデータを用いました。分析には構造方程式モデリングという統計手法が使われています。これは、直接には測れない「合理性」や「信頼」といった概念どうしの関係を、複数の質問への回答から同時に推定する方法です。
分析では、三つの合理性がGM食品の「認識された利益」と「認識された risks(リスク)」のそれぞれとどう関連するか、そして制度への信頼がその間をどう媒介するかが調べられました。なお、ここで扱われているのは統計的な関連であり、因果関係が実証されたという報告ではありません。
報告された主な結果
論文によれば、科学的合理性は認識された利益と正の関連を示しましたが、認識されたリスクとは関連が見られませんでした。社会的合理性は逆の傾向で、認識された利益とは負の関連、認識されたリスクとは正の関連を示しました。生態的合理性については、認識されたリスクとのみ正の関連が報告されています。
制度への信頼は、人々の態度を直接的に予測するとともに、三つの合理性と利益・リスクの認識との関係を媒介していました。ただし、科学的合理性から信頼を経てリスク認識へと至る間接的な経路は有意ではなく、著者らはこの層の肯定的な態度が、リスクよりも利益に注目した情報処理から生じていると解釈しています。モデル全体は、態度のばらつきの53.6%を説明したと報告されています。
この研究が示すこと
著者らは、GM食品への公衆の態度が単なる知識の多寡ではなく、人々が何を大切にするかという価値志向に根ざしており、それが制度への信頼を通じて方向づけられていると結論づけています。
この知見は、食のリスクをめぐる governance(統治・管理)において、相手の価値観に応じた伝え方、価値観どうしの対話、そして信頼の構築が重要であることを示唆するものとして提示されています。
著者:Hui Li(Chengdu Vocational & Technical College of Industry)、Zhenjing Pang(Sichuan University)、Tian Yu(Chengdu Vocational & Technical College of Industry)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Hui Li, Zhenjing Pang, Tian Yu. scientific, social, ecological rationality and public attitudes toward genetically modified food in China: based on the survey of urban residents in three cities of China. GM crops & food 2026-09-09. DOI: 10.1080/21645698.2026.2728190. 原著ライセンス:CC BY.