この研究は、ポーランドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Frontiers in Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

何を明らかにしようとした研究か

子ども時代に身につく食の習慣は、その後の健康に長く影響すると考えられています。研究チームは、その中でも「食べ物の好き嫌い」が子どもの食行動を左右する大きな要因のひとつだと位置づけたうえで、7〜9歳の子どもの栄養に関する知識(栄養知識)と、食べ物の好みとの関連を調べることを目的としました。

この年齢に注目した理由として著者らは、7〜9歳の子どもは栄養についての基本的な考え方を理解し、自分の食べ物への気持ちを答えられる力が育ちつつある一方で、好みや食への態度そのものはまだ形成の途中にある時期だと説明しています。また、栄養知識と子どもの食の好みの「パターン」との関係を調べた研究はこれまで多くない、と論文は述べています。

約1万4500人の子どもへの調査

調査はポーランドで進められたJunior-Edu-Żywienie(JEŻ)プロジェクトの一環として、2022年4月から2023年11月にかけて実施されました。分析の対象となったのは、ポーランド各地の小学校に通う7〜9歳(小学1〜3年生)の児童14,548人です。ある一時点の状況をまとめて調べる「横断研究」という設計で、時間を追って変化を追跡したものではありません。

子どもたちは教室で2種類の質問紙に答えました。ひとつは栄養知識を測る15問の質問紙で、各問に「正しい答え」「誤った答え」「わからない」の3つの選択肢が用意されています。もうひとつは28品目の食べ物について、笑顔・普通の顔・悲しい顔の3段階の絵文字で「好き」「どちらともいえない」「嫌い」を答えてもらう質問紙です。3段階にしたのは、予備調査で子どもが自分の気持ちを細かく分けるのが難しかったためだと説明されています。質問は教師と研究者が立ち会う中で読み上げられ、必要に応じて補足説明が行われました。

集まった回答のうち、食べ物の好みについては主成分分析という統計の手法を使って、似た傾向どうしをまとめた7つの「好みのパターン」が取り出されました。「エネルギー密度の高い嗜好的な食品」「あまり好まれにくい推奨食品」「乳製品・朝食用シリアル」「肉・ハム類・魚」「果物・野菜・水・ジュース」「加糖飲料」「でんぷん質の主食」です。著者らは、これらの名称はあくまで統計的に浮かび上がった集まりを説明するためのラベルであり、同じパターンに含まれる食品の栄養的な価値が同一であることを意味するものではないと注意を促しています。そのうえで、学年・性別・居住地の規模・栄養への関心の有無を調整したうえで、各パターンと栄養知識の関係が分析されました。

報告された主な結果

栄養知識の質問紙での正答率は、全体の平均で61.7%でした。項目ごとの差は大きく、「毎日体を動かすこと」については89%、「食べるものと健康・体力の関係」は80%、「朝食が学びや遊びのエネルギーになること」は79%が正しく答えた一方で、穀物製品に関する推奨(34%)、乳製品(49%)、魚(52%)についての正答率は低く、最も低かったのは「肉やハム類を豆・レンズ豆・えんどう豆で置き換えられるか」という項目の29%でした。

分析の結果、7つの好みのパターンはいずれも栄養知識と統計的に意味のある関連を示したと報告されています。最も強い正の関連が見られたのは「あまり好まれにくい推奨食品」(B=4.171)で、豆類、全粒パン、カッテージチーズ、挽き割り穀物といった、この調査の参加者の間では好かれにくかった食品が含まれるパターンです。次いで「果物・野菜・水・ジュース」(B=3.379)でも強い正の関連がありました。反対に、「加糖飲料」(B=−1.268)や「エネルギー密度の高い嗜好的な食品」(B=−0.832)を好むと答えた子どもほど、栄養知識の得点は低い傾向にありました。

子どもの背景との関係では、学年が上がるほど得点が高く、1年生に比べて2年生(B=0.546)、3年生(B=0.982)で高いという結果でした。居住地では、50万人超の大都市に住む子どもに比べ、2万人未満の町(B=−0.302)や2万〜10万人の都市(B=−0.193)で得点が低い一方、農村部や10万〜50万人の都市では統計的な差は見られませんでした。栄養に関する話題に興味があると答えた子ども(全体の69%)は得点が高く、男女間で全体の得点に有意な差はありませんでした。なお、このモデルが説明できたのは栄養知識のばらつきのうち12.7%です。子どもが挙げた知識の入手先としては、保護者や祖父母(77%)と学校(75%)が最も多く、インターネットは3分の1程度にとどまりました。

著者らは解釈上の注意もいくつか挙げています。この調査で測ったのは実際の食事内容ではなく、あくまで子ども自身が申告した「好き・嫌い」であること。学校という場で栄養についての質問に答えたため、大人が期待していそうな答えを選ぶ「社会的望ましさ」の影響を受けた可能性があること。さらに横断研究であるため、どちらが原因でどちらが結果かを判断することはできず、保護者の学歴や家庭の経済状況、家にある食品の種類といった、知識と好みの両方に影響しうる要因は分析に含まれていない、という点です。

この報告が示すもの

この研究が示したのは、7〜9歳という早い段階ですでに、栄養についての知識と食べ物の好みの傾向とが結びついて現れているという事実です。推奨される食品を好む子どもほど知識の得点が高く、控えることが勧められる食品を好む子どもほど得点が低いという関連は、知識と嗜好が切り離されたものではないことをうかがわせます。

同時に、正答率が項目によって大きく違っていたことは、子どもの栄養知識が分野ごとに偏りを持っていることを具体的に描き出しています。著者らは、こうした知識の弱い部分と食の好みの姿を明らかにしたことが、今後の研究の土台になると位置づけています。

著者:Marta Jeruszka-Bielak(Department of Human Nutrition, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences SGGW)、Jadwiga Hamułka(Department of Human Nutrition, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences SGGW)、Ewa Czarniecka‐Skubina(Department of Food Gastronomy and Food Hygiene, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences SGGW)、Joanna Myszkowska-Ryciak(Department of Dietetics, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences SGGW)、Małgorzata Drywień(Department of Human Nutrition, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences SGGW)、Krystyna Gutkowska(Department of Food Market and Consumer Research, Institute of Human Nutrition Sciences, Warsaw University of Life Sciences SGGW)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Marta Jeruszka-Bielak, Jadwiga Hamułka, Ewa Czarniecka‐Skubina, et al. Food-liking patterns are associated with nutrition knowledge among children aged 7–9 years: a nationwide cross-sectional study. Frontiers in Nutrition 2026-08-31. DOI: 10.3389/fnut.2026.1898168. 原著ライセンス:CC BY.