ヒマワリの種子から油を搾った後に残る「脱脂ヒマワリミール」は、タンパク質を豊富に含みながらも、これまで人の食用としてはあまり注目されてこなかった副産物です。この研究では、そのタンパク質抽出物を微生物によって発酵させることで、栄養価や機能性がどのように変わるのかを調べています。食品廃棄物や副産物を有効活用しようという流れの中で、発酵という古くからの技術がどこまで新しい価値を引き出せるのかを検証した内容です。
研究チームはトルコのゲブゼ工科大学やウシャク大学、TÜBİTAKマルマラ研究センターに所属する研究者らで構成されています。
どのように調べたのか
研究では、脱脂ヒマワリミールから抽出したタンパク質を用意し、2種類の微生物でそれぞれ48時間発酵させました。使用したのは乳酸菌の一種であるLactobacillus helveticus B-4526と、枯草菌の一種であるBacillus subtilis B-3387です。発酵後、菌の増殖の様子に加えて、タンパク質の構造変化、抗酸化力、血圧に関わる酵素への作用、アミノ酸組成、フィチン酸量、そして溶けやすさや泡立ち・乳化のしやすさといった加工上の性質まで、幅広い項目を比較しています。
発酵によって何が変わったのか
まず菌の増え方には違いが見られ、Bacillus subtilisは48時間で1.5 log CFU/mLを超える増加を示した一方、Lactobacillus helveticusの増加は約1 log CFU/mLにとどまりました。タンパク質そのものへの影響も対照的で、Bacillus subtilisは分子量23〜46 kDaの範囲のタンパク質を分解した一方、Lactobacillus helveticusは発酵に伴う酸性化によってタンパク質が凝集する傾向を示し、これが溶解性の低下につながった可能性があるとされています。FTIR分析でも、両菌の発酵によってタンパク質の立体構造(二次構造)に変化が生じたことが確認されました。
機能性に関わる指標では、DPPH・ABTS・CUPRACという3種類の抗酸化力測定と、血圧上昇に関与する酵素を抑える働き(ACE阻害活性)が、いずれの発酵でも高まりました。特にBacillus subtilisによる発酵でその効果が最も強く現れたと報告されています。一方でアミノ酸の総量は、Bacillus subtilis発酵後には減少したのに対し、Lactobacillus helveticus発酵後はほぼ変わらなかったとされています。また、ミネラルの吸収を妨げることが知られるフィチン酸は、抽出および発酵の工程を経ることで減少しました。
加工特性については一長一短の結果が示されています。Bacillus subtilisによる発酵はpH4.0でのタンパク質の溶けやすさを改善した一方、泡立ちやすさと乳化のしやすさはむしろ低下しました。さらに両方の発酵処理で、油や水を抱え込む能力(保油性・保水性)はともに低下したと報告されています。
この研究をどう読むか
この研究は、ヒマワリタンパク質の発酵によって抗酸化力やACE阻害活性といった生理活性が高まる一方で、溶解性や泡立ち、乳化性、保水・保油性といった加工上の性質には低下が見られるなど、一つの処理があらゆる面で優れた結果をもたらすわけではないことを示しています。論文の著者らも、使用する微生物を目的に応じて選ぶ必要があると述べており、栄養価を重視するのか、加工しやすさを重視するのかによって適した菌が異なる可能性がうかがえます。これはあくまで実験室レベルでの一つの研究であり、ヒトでの健康効果を直接示したものではない点には注意が必要です。
まとめ
脱脂ヒマワリミールという副産物を、乳酸菌や枯草菌を使った発酵によって機能性のある食品素材へと変える可能性が示された一方で、抗酸化力などの生理活性の向上と、溶解性や乳化性といった加工特性の間にはトレードオフがあることも明らかになりました。今後、目的に応じた菌の使い分けや条件の最適化が課題になりそうです。
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Cansu Yay, Bilgen Özsoy, Onur Güneşer, et al. Microbial Bioprocessing of Sunflower Protein Extracts: Nutritional, Techno-Functional and Bioactive Outcomes of Lactobacillus helveticus and Bacillus subtilis Fermentation Products. ファーメンテーション (2026). DOI: 10.3390/fermentation12080356. 原著ライセンス: cc-by.