著者の所属・活動拠点の国は、インドネシアです。

掲載誌:Pusaka Journal of Tourism Hospitality Travel and Business Event

ライセンス: CC BY-SA 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

生の血を使う料理の伝統と観光を調べる

研究チームは、バリの伝統料理ラワール・プレックが、健康上のリスクや観光市場の変化に直面しながら、どのように文化的な特徴を保っているのかを調べました。生の豚肉や血を使うこの料理では、感染症への懸念がある一方、生の血そのものが生命力や伝統を象徴するものとして重視されています。研究の焦点は、こうした文化的な価値と、現代の衛生基準や観光客の期待との折り合いにあります。

調査地はバリのギャニャールとバドゥンです。研究チームは販売者や料理の担い手、地元の消費者、慣習を守る地域の指導者、観光客、食の動画発信者、公衆衛生の研究者らに聞き取りを行いました。調理現場の観察や衛生関連資料の検討も組み合わせ、関係者によるグループ討議を通じて、伝統を維持するための対応策を整理しました。

健康リスクより強く語られた文化的な意味

研究チームの分析では、ラワール・プレックをめぐる語りの中心は、医学的な安全性よりも文化的な帰属意識や伝統の意味でした。発言などをテーマ別に分類した図では、文化的な意味に関する領域が約60%を占め、医学的な安全性に関する領域は15%でした。これは回答者の割合ではなく、分類された語りを図にまとめた際の構成比です。

医療の専門家が生の血を感染リスクと結びつけるのに対し、料理の担い手や地域の指導者は、生命力の象徴として捉え、伝統的な香辛料の配合「バセ・グネップ」に菌を抑える働きがあると信頼していました。著者らは、この信頼が感染への不安を和らげる文化的な説明として働いていると解釈しています。これは地域の人々の認識についての報告であり、香辛料によって病原体を十分に除去できると実証した結果ではありません。

また、著者らは、生の血が料理の「本物らしさ」を支えるだけでなく、鮮やかな赤色が動画や写真の見どころにもなっていると報告しました。その解釈では、危険を伴うというイメージさえ、珍しく強烈な食体験を求める観光の価値に組み込まれていました。

料理の核を残し、周囲の仕組みを変える

販売者の対応として報告されたのは、生の血を使うという料理の核を変えるよりも、仕入れや調理・提供の環境を整える動きでした。認証された食肉処理施設からの原料調達に加え、清潔な流水、肉と野菜で分けたまな板、提供時の使い捨て手袋などが挙げられています。著者らは、こうした衛生面の対応が、伝統を保ちつつ観光客に受け入れられるための折衷策として働いていると説明しています。

さらに論文は、低温での流通管理や仕入れ経路の追跡、地域が主体となる衛生認証など、料理を取り巻く仕組みの強化を提案しています。研究が描くのは、観光向けの商品になることで伝統が一方的に失われる姿ではありません。著者らは、守るべき文化的な核と変えられる運営方法を選び分けることに、この料理が存続する仕組みを見いだしています。

原著論文の著者・所属:I Gusti Ayu Eka Suwintari(Institut Pariwisata dan Bisnis Internasional)、I Made Trisna Semara(Institut Pariwisata dan Bisnis Internasional)、Putu Indah Budi Apsari(Warmadewa University)、I Putu David Adi Saputra(Institut Pariwisata dan Bisnis Internasional)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):I Gusti Ayu Eka Suwintari, I Made Trisna Semara, Putu Indah Budi Apsari, I Putu David Adi Saputra Commodification and Cultural Resilience in Biologically High-Risk Culinary Tourism: A Case of Lawar Plek in Bali. Pusaka Journal of Tourism Hospitality Travel and Business Event 2026-08-29. DOI: 10.33649/pusaka.v6i2.1108. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.

本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。