ヨーグルトやチーズなどの乳製品は、腸内環境に良い影響を与える食品としてしばしば話題になります。一方で、私たちの腸にはBlastocystis(ブラストシスチス)という単細胞の原虫が、健康な人にも高い頻度で住み着いていることが知られています。この原虫は下痢などの症状と関連づけられることもあれば、無症状のまま長期間検出され続けることもあり、腸内細菌叢との関係を含めてまだ分かっていないことが多い存在です。今回紹介する研究は、ヤギ乳と牛乳の摂取を比較する12週間の介入試験の中で、このBlastocystisの検出状況と腸内細菌叢の様子を探索的に調べたパイロット研究です。

どのように調べたのか

研究チームは、健常なギリシャ系キプロス人の成人19名を対象に、ベースライン(開始時)と12週間後の合計38検体の便サンプルを採取しました。この対象者らはヤギ乳と牛乳の摂取を比較するランダム化パイロット介入試験に参加しています。Blastocystisの検出には、原虫の18S rRNA遺伝子の一部を標的としたPCR(遺伝子増幅)によるスクリーニングを行い、陽性となった検体についてはサンガーシーケンシングという方法で遺伝子配列を読み取り、どのサブタイプ(ST)に該当するかを判定しました。また、同じ便検体を使って16S rRNA遺伝子による腸内細菌叢の群集解析も行い、多様性の指標であるShannon多様性指数や、細菌叢の組成の違いを統計的に評価するBray-Curtis PERMANOVA、Aitchison距離解析といった手法で、Blastocystisの検出状況と腸内細菌叢との関連を探りました。あわせて、CryptosporidiumやGiardia duodenalisという他の腸管寄生生物についてもPCR検査が行われています。

研究でわかったこと

19名のうち3名(15.8%)は、ベースラインと12週時点の両方でBlastocystisが検出されました。サブタイプの内訳は、ST2が2名、ST4が1名でした。一方、CryptosporidiumやGiardia duodenalisはいずれの検体からも検出されませんでした。

腸内細菌叢については、繰り返しBlastocystisが検出されたグループは、検出されなかったグループに比べてShannon多様性指数がやや高い傾向が見られましたが、統計的には有意ではありませんでした(ベースラインでp=0.171、12週時点でp=0.085)。また、細菌叢全体の組成の違いを見るBray-Curtis PERMANOVAやAitchison距離解析でも、有意な差は確認されませんでした。属レベルで細菌の種類を比較した場合も、多重比較の補正(FDR補正)後に有意な項目は見つかりませんでした。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この研究は著者ら自身が「パイロット研究」と位置づけている通り、規模が非常に小さい探索的な試みです。特に、両時点でBlastocystisが繰り返し検出されたのはわずか3名にとどまっており、著者らはこの人数の少なさから、乳製品介入の効果やサブタイプ間の違い、心代謝に関するアウトカム、腸内細菌叢との関連について、信頼できる結論を導くことはできないと述べています。より大規模で、サンプリングの頻度を高めた研究が今後必要だとされています。

なお本研究は、キプロスのニコシア大学(University of Nicosia)に所属する研究者らによって行われました。

まとめ

今回のパイロット研究では、健常な成人の一部にBlastocystis ST2およびST4が繰り返し検出される一方、CryptosporidiumやGiardia duodenalisは検出されず、Blastocystisの検出有無と腸内細菌叢の多様性や組成との間に統計的に明確な関連は見出されませんでした。対象者数が少ないこともあり、この研究だけで乳製品摂取とBlastocystisや腸内細菌叢との関係について結論づけることはできず、今後より大規模な研究による検証が求められています。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Panayiota Tsokkou, Chad Schou, Catherine O'Dowd Phanis, et al. Molecular Detection of Blastocystis ST2 and ST4 and Exploratory 16S rRNA Gene Community Profiles in a 12-Week Dairy-Intervention Pilot Study. マイクロオーガニズムズ (2026). DOI: 10.3390/microorganisms14081860. 原著ライセンス: cc-by.