著者の所属・活動拠点の国は、タイです。
掲載誌:Food Science & Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
観葉植物としても、また一部地域では食用としても知られるヒユ科の植物アルテルナンテラ・ベッツィキアナ(Alternanthera bettzickiana)には、葉が緑一色のタイプと、赤と緑が入り混じった斑入りタイプが存在します。同じ植物種でありながら見た目がこれほど異なると、含まれる成分や体に対する働き方も変わってくるのではないか——これが今回のタイの研究チームによる研究の出発点です。
これまで発表されてきたこの植物の研究では、どちらの見た目のタイプを使ったのかが明記されていないことが多く、報告される植物化学成分(ポリフェノールなどの機能性成分)の量や働きにばらつきが生じる一因になっていたといいます。また、この植物から成分を効率よく取り出すための抽出方法も、これまで検証されたものが確立されていませんでした。そこで研究チームは、まず成分を最も効率よく取り出せる抽出条件を科学的に決めたうえで、緑タイプと斑入りタイプの成分プロファイルおよび抗酸化能を比較することを目指しました。
どうやって調べたのか
研究チームは、複数の条件を組み合わせて最適な実験条件を導き出す統計的手法(ボックス・ベンケン計画に基づく応答曲面法)を用いて、抽出条件の最適化を行いました。その結果、90%(体積比)のエタノール水溶液を使い、50℃で振とうしながら2時間浸漬し、抽出液の濃度を10 mg/mLとする条件が、成分を取り出すうえで最も適していると結論づけられました。
この条件のもとで、緑タイプと斑入りタイプそれぞれの葉から成分を抽出し、総フェノール量、総フラボノイド量、総アントシアニン量を測定したほか、液体クロマトグラフィーとエレクトロスプレーイオン化タンデム質量分析(LC-ESI-MS/MS)という手法を使って、含まれる個々のフェノール化合物を特定しました。さらに、FRAP(鉄還元性抗酸化力)、ORAC(酸素ラジカル吸収能)、DPPHラジカル消去活性という3種類の指標を用いて、抗酸化能も比較しています。
見た目の違いは中身の違いにもつながっていた
測定の結果、総フェノール量は緑タイプの方が高く、乾燥重量1gあたり没食子酸換算で4.95 mgという値が示されました。一方で、総フラボノイド量(乾燥重量1gあたりケルセチン換算31.95 mg)と総アントシアニン量(乾燥重量1gあたりシアニジン-3-O-グルコシド換算7.04 mg)は、いずれも斑入りタイプの方が高いという結果になりました。赤い色素を持つ斑入りタイプでアントシアニンが多いという結果は、見た目の色と成分の関係を裏付けるものといえそうです。
個々の成分を見ると、両タイプともに最も多く検出されたフェノール化合物はp-クマル酸で、次いで3,4-ジヒドロキシ安息香酸が多く含まれていました。一方、ルチンというフラボノイドは、緑タイプでのみ、しかもごく微量にとどまる形で検出されたとされています。
抗酸化能については、FRAPとORACの2つの指標で緑タイプが有意に高い値を示した一方、DPPHラジカル消去活性についてはタイプ間で統計的に有意な差は見られなかったとのことです。つまり、どの指標で測るかによって、どちらのタイプが優れて見えるかが変わりうるという点は留意しておきたいところです。
この研究をどう受け止めるか
この研究は、抽出条件をあらかじめ最適化したうえで比較を行っている点が特徴で、これまで見た目のタイプが明記されないまま報告されてきた成分データのばらつきに、一つの整理軸を示すものといえます。ただし、これは一つの研究であり、緑タイプと斑入りタイプのどちらが健康によいかを断定するものではありません。今回測定されたのはあくまで試験管内での抗酸化能や成分量であり、実際に人が摂取した際の体内での働きについて調べたものではない点にも注意が必要です。
研究チームは、タイのマヒドン大学栄養研究所に所属しています。今回の成果は、両タイプを機能性食品や機能性成分の原料として今後活用していくための科学的な基礎資料と位置づけられています。
まとめ
同じ植物でも見た目のタイプによって、フェノール・フラボノイド・アントシアニンといった成分の量や種類、さらには抗酸化能の測定結果にも違いが見られることが、最適化された抽出条件のもとで示されました。今後、こうした植物を食品や機能性素材として活用する際には、どちらのタイプを使っているかを明確にすることが、研究の再現性や成分評価の正確さにとって重要になりそうです。
著者:Sirinapa Thangsiri(Food and Nutrition Academic and Research Cluster, Institute of Nutrition Mahidol University Phuttamonthon Nakhon Pathom Thailand)、Woorawee Inthachat(Food and Nutrition Academic and Research Cluster, Institute of Nutrition Mahidol University Phuttamonthon Nakhon Pathom Thailand)、Piya Temviriyanukul(Food and Nutrition Academic and Research Cluster, Institute of Nutrition Mahidol University Phuttamonthon Nakhon Pathom Thailand)、Amornrat Aursalung(Food and Nutrition Academic and Research Cluster, Institute of Nutrition Mahidol University Phuttamonthon Nakhon Pathom Thailand)、Yuraporn Sahasakul(Food and Nutrition Academic and Research Cluster, Institute of Nutrition Mahidol University Phuttamonthon Nakhon Pathom Thailand)、Uthaiwan Suttisansanee(Food and Nutrition Academic and Research Cluster, Institute of Nutrition Mahidol University Phuttamonthon Nakhon Pathom Thailand)
※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。出典(原著論文):Sirinapa Thangsiri, Woorawee Inthachat, Piya Temviriyanukul, et al. Comparative Phytochemical Profiles and Antioxidant Potential of Green and Variegated Morphotypes of Alternanthera bettzickiana Under Optimized Extraction Conditions. フード・サイエンス・アンド・ニュートリション (2026). DOI: 10.1002/fsn3.72237. 原著ライセンス: cc-by.