日本主導:この研究は、筆頭著者・責任著者、または著者の主要所属が日本の研究機関である研究です。
掲載誌:Journal of the International Society of Sports Nutrition
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
何を明らかにしようとしたのか
ゴルフは1ラウンドにおよそ4〜5時間かかり、体を動かす場面と、グリーンを読むなど高い集中力を要する場面が交互に続く競技です。運動強度そのものは中程度でも、長時間にわたって体にかかる負担が積み重なるため、著者らは、単にエネルギー不足を防ぐだけでなく、代謝を安定させる栄養の摂り方が重要だと述べています。
注目されたのがイソマルツロース(パラチノース)という糖です。砂糖(スクロース)と同じ成分からできた構造の違う糖で、分解・吸収がゆっくり進むため、血糖値の急な上下動を起こしにくいとされています。研究チームはこれまでの研究で、プレー中にグミで糖を摂り続けると体内の糖の濃度が保たれることを報告していましたが、イソマルツロースと砂糖とで本人が感じる疲労感に差は見られませんでした。そこで本研究では、本人の自覚と実際の体内の状態がずれている可能性を考え、主観的な回答ではなく、唾液中のホルモンなど客観的な指標に重点を置いて調べることを目的としました。
どのように調べたか
対象は、大学のゴルフ連盟に所属する男子ゴルファー24名です。競技成績と体重をもとにグループ分けが偏らないよう割り付け、イソマルツロース入りグミを食べる群と砂糖のグミを食べる群に分けました。見た目も味も同じグミを不透明な袋に入れ、参加者にも実施者にもどちらか分からないようにする「二重盲検」という方法が取られています。実際に最後まで参加したのは23名でした。
試験は2024年9月に東京都内のゴルフ場で行われました。前夜から絶食し、当日は統一された朝食をとったうえで18ホールをプレーします。グミは1ホールごとに食べ、水分量も揃えられました。両群のエネルギー量と炭水化物量は同じで、1時間あたりの炭水化物摂取量はおよそ43g、これは米国スポーツ医学会が長時間の運動に推奨する範囲に収まる量です。なお製造上の制約から、イソマルツロースは全炭水化物217.5gのうち40.8g(約19%)でした。
測定は、腕に付けたセンサーで体内(間質液)の糖の濃度を15分ごとに記録するほか、3ホールごとに唾液を採取してコルチゾール、テストステロン、DHEAS(デヒドロエピアンドロステロン硫酸)といったホルモンを分析しました。あわせて、本人の「リラックス感」「集中」「疲労」「眠気」の自己評価と、各ホールのスコアも記録しています。翌朝の尿からは、夜間のメラトニン分泌を反映する代謝物も測定されました。
報告された主な結果
18ホールの合計スコアは両群でほぼ同じ(75.3打と75.5打)で、統計的な差はありませんでした。体内の糖の濃度も平均値では有意差はありませんでしたが、イソマルツロース群のほうがやや低く、より安定した範囲内で推移した一方、砂糖群では130mg/dLを超えるピークを含む大きな変動が見られたと報告されています。変動の大きさの差は統計的に有意ではないものの、効果量は中程度でした。
唾液のホルモンでは差が見られました。DHEASは6ホール終了時と18ホール終了時に、テストステロンは12ホール終了時に、イソマルツロース群のほうが有意に高い値を示しています。著者らは、これらのホルモンは長時間の運動でエネルギーが不足すると低下しやすいことから、糖がゆっくり供給されたことが関係している可能性を挙げています。ただしコルチゾールについては、試験開始前の時点でイソマルツロース群が偶然高いという偏りがあり、ラウンド中は両群で差がなくなりました。
一方、本人の感覚は逆の傾向でした。後半の15ホール、18ホール時点で、砂糖群のほうがリラックス感と集中の自己評価が高く、眠気も少ないと答えています。疲労感については、どの時点でも両群に差はありませんでした。著者らは、素早く吸収される糖が脳の報酬系を刺激して一時的に気分を高めた可能性を指摘するとともに、イソマルツロース群では試験前の時点で夜間メラトニン代謝物の値がもともと高く、目覚めきっていない状態だった可能性があるため、眠気の差を糖の効果だけに帰することはできないと述べています。
この研究が示すこと
この研究から浮かび上がるのは、「調子が良いと感じること」と「体に負担がかかっていないこと」は必ずしも一致しない、という点です。砂糖群は主観的には良好でしたが、客観的なホルモンの値は低めに推移していました。著者らはこれを、自覚されにくい生理的な負担として捉えています。
ただし研究チーム自身が強調しているとおり、これは23名の予備的な試験であり、統計的な補正を厳密には行っていないこと、イソマルツロースが全炭水化物の約2割にとどまることなど、結果の解釈には制約があります。ホルモンの違いはゴルフのスコアの改善には結びついておらず、著者らは結論として、この生理的な違いの実際的な意味づけはまだ探索的な段階にあり、より大規模で適切な解析枠組みによる検証が必要だとしています。
著者:Yosuke Nagashima(Department of Health Science, Musashigaoka Junior College)、Kiyohiro Ehara(Department of Education, Tamagawa University)、Yoshitomo Ehara(College of Sport and Wellness, Rikkyo University)、Yusuke Maruyama(College of Sport and Wellness, Rikkyo University)、Ayana Mitsume(Department of Health Science, Musashigaoka Junior College)、Yuhei Uchikoba(Candy, Dessert & Chilled Product Development Section, Second Product Development Department, Bourbon Corporation)、Junya Fukuda(Candy, Dessert & Chilled Product Development Section, Second Product Development Department, Bourbon Corporation)、Shigeru Mineo(Nutraceuticals Science Laboratory, Advanced Research Institutes, Bourbon Corporation)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yosuke Nagashima, Kiyohiro Ehara, Yoshitomo Ehara, et al. Effects of continuous isomaltulose-containing gummy intake on interstitial glucose and salivary hormones during an 18-hole golf round: a randomized, double-blind controlled pilot study. Journal of the International Society of Sports Nutrition 2026-09-01. DOI: 10.1080/15502783.2026.2723225. 原著ライセンス:CC BY.