この研究は、ブラジルの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Journal of Food Science
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的:あいまいな切り分け基準を科学的に検証する
ピッカーニャは牛の大腿二頭筋(Biceps femoris)から取られる部位で、世界的に高く評価されています。しかし著者らによれば、この部位の範囲を正確に定める公式な規格は存在せず、食肉処理場では重量や長さ、あるいは「第三の筋(third vein)」と呼ばれる目印の位置といった、担当者の判断に頼る主観的な基準が用いられているのが現状です。
そこで研究チームは、大腿二頭筋の全長にわたって性質がどのように変化するのかを明らかにし、ピッカーニャを切り分ける位置を特定することを目的として本研究を行いました。著者らはこれを予備的な研究(preliminary study)と位置づけています。
調べた方法:筋肉を2.5cmずつ12枚に切り分けて比較
研究チームは4本の大腿二頭筋を用い、体の中心に近い側(近位)から遠い側(遠位)に向かう軸に沿って、それぞれ2.5cmの厚さのステーキ12枚に連続して切り分けました。そのうえで、各ステーキに対して理化学的な分析と組織学的な分析を行っています。
調べられた項目には、pH(酸性・アルカリ性の度合い)、脂肪・水分・コラーゲンの含量、サルコメア長(筋肉を収縮させる基本単位の長さで、長いほど筋繊維がゆるんだ状態にあたる)、そしてワーナー・ブラッツラー剪断力(肉を切断するのに必要な力で、値が小さいほどやわらかいことを示す指標)が含まれます。
報告された主な結果:6枚目と7枚目のあいだで性質が切り替わる
著者らの報告によれば、6枚目と7枚目のステーキのあいだで切り分けたときの平均重量は約1.5kgとなり、業界で経験的に用いられている基準と一致していました。また「第三の筋」は6枚目の位置で確認され、その実務上の意義が裏づけられたとしています。
理化学的な測定では、近位から遠位に向かってpHが5.79から5.62へ低下しました(P<0.05)。総脂肪は遠位側に向かって減少し(P<0.01)、一方で総水分とコラーゲン含量は増加しました(それぞれP<0.05、P<0.001)。サルコメア長には直線的な効果と二次的な効果が認められ(それぞれP<0.001、P<0.05)、近位側のステーキで値が大きく、遠位側に向かって次第に短くなりました。
ワーナー・ブラッツラー剪断力も二次的な増加を示し(P<0.01)、1〜6枚目は「やわらかい(4.4kg以下)」、7〜12枚目は「やわらかくない」に分類されました。組織学的な評価でも、これらの結果と整合する構造の違いが確認されています。全体として、理化学的・構造的な性質の移り変わりは6〜7枚目のあたりで起こり、これは「第三の筋」の位置に対応していたと報告されています。
この結果が示すこと
著者らは、これらの結果が「第三の筋」を、ピッカーニャを切り分けるための実用的かつ生物学的に意味のある解剖学的な目印として用いることを支持するものだと述べています。実務上の応用として、ピッカーニャとコシャン・ドゥーロ(Coxão Duro、外もも)の切り分けを食肉産業や調理の場で標準化する際の基準になりうると位置づけられています。
ただし著者らは、この評価が厚さをそろえたステーキを用いた管理された実験条件のもとで行われたものであり、商業的な解体作業の実際とは異なる可能性があることにも触れています。
経験的に受け継がれてきた切り分けの目印が、肉のやわらかさや成分の変化という測定可能な違いと重なっていた——この研究が示したのは、職人の手の感覚と筋肉の構造とのあいだにある対応関係でした。
著者:Isabela Barros(Department of Engineering and Food Technology, School of Food Engineering University of Campinas Campinas São Paulo Brazil)、Jonatã Henrique Rezende-de-Souza(Department of Engineering and Food Technology, School of Food Engineering University of Campinas Campinas São Paulo Brazil)、Dyana Carla Lima Hargreaves Noguera(Department of Engineering and Food Technology, School of Food Engineering University of Campinas Campinas São Paulo Brazil)、Gabriel Barão Arias Blanco(Department of Engineering and Food Technology, School of Food Engineering University of Campinas Campinas São Paulo Brazil)、Cintia Rizoli(Department of Biochemistry and Tissue Biology, Institute of Biology University of Campinas Campinas Brazil)、Sílvio Roberto Consonni(Department of Biochemistry and Tissue Biology, Institute of Biology University of Campinas Campinas Brazil)、Sérgio Bertelli Pflanzer(Department of Engineering and Food Technology, School of Food Engineering University of Campinas Campinas São Paulo Brazil)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Isabela Barros, Jonatã Henrique Rezende-de-Souza, Dyana Carla Lima Hargreaves Noguera, et al. Technical Criteria for Delimiting the Picanha Beef Cut: A Preliminary Study. Journal of Food Science 2026-09-01. DOI: 10.1111/1750-3841.71424. 原著ライセンス:CC BY.