この研究は、ポーランドの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Nutrients
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
この研究は、薬剤抵抗性てんかん(抗てんかん薬による治療で発作が十分に抑えられない状態)の子どもたちが、ケトン食療法を受けながらどのような食習慣や食べにくさを抱えているのかを、健康な子どもと比べて明らかにすることを目的としています。ケトン食療法とは、脂質を多くとり糖質を大きく制限する食事による治療法で、献立の自由度が限られる点が特徴です。
著者らは、子どもには年齢に応じて生じる食べにくさがあり、それに制限の多いケトン食療法が重なると、食べられる食品の幅が狭まり、食事の多様性が下がる可能性があるという問題意識を出発点としています。そのうえで、栄養状態、食物新奇性恐怖(食べ慣れない新しい食べ物を避ける傾向)、食感の好み、食べ物の好き嫌いの強さを含む八つの食行動、そして食事の多様性と繰り返しの程度を比較対象としました。
調べ方と主な結果
研究チームは、ケトン食療法を受けている薬剤抵抗性てんかんの子ども15人と、健康な子ども100人を比較しました。評価には、子どもの食感の好みを尋ねる質問紙、子どもの食行動を尋ねる質問紙、そして子ども向けに改変された食物新奇性恐怖の尺度が用いられています。
報告された結果によると、栄養状態には両群で有意な差が認められませんでした。体重、身長、BMIのいずれについてもパーセンタイル(同年齢の子どもの中での位置を示す値)の中央値は近く、統計的な有意差の判定に用いるp値はいずれも0.9999より大きい値として報告されています。食行動の多くの領域でも有意差は見られませんでしたが、著者らは両群ともに食べにくさが高い割合で見られたと述べています。
一方で差が見られた点もあります。ケトン食療法群は同じ食事を繰り返す程度が有意に高く(中央値3対2、p=0.0468)、食事の多様性は低いという結果でした(中央値3対4、p=0.0004)。また、感情に伴って食べる量が減る傾向(中央値4対10、p=0.0059)と、感情に伴って食べ過ぎる傾向(中央値4対8、p=0.0196)のスコアは、いずれもケトン食療法群のほうが低く報告されています。さらに、対象となった集団全体では、食行動が「適応的」な食べ物との向き合い方と「不適応的」な向き合い方のいずれかに傾く、明確なまとまりに分かれたとされています。
この報告が示すこと
著者らは結論として、ケトン食療法を受けている子どもの食べにくさに対しては、一人ひとりに合わせた個別の対応が必要だと述べています。また、食物新奇性恐怖と食べ物の好き嫌いの強さについて的を絞ったスクリーニング(ふるい分けのための評価)を導入することが、望ましくない食べ方に陥る危険のある子どもを早期に見つけるうえで理にかなうと考えられる、としています。
栄養状態そのものには差が出なかった一方で、食事の繰り返しの多さと多様性の低さという違いが示された点は、体格の指標だけでは捉えきれない食の課題があることを示唆する報告といえます。
著者:Katarzyna Gołąbek(Department of Dietetics and Bromatology, Pharmacy Faculty, Wroclaw Medical University, ul. Borowska 211, 50-556 Wrocław, Poland)、Agata Gruna-Ożarowska(Department of Pediatric Neurology, T. Marciniak Lower Silesian Specialist Hospital–Emergency Medicine Center, ul. Gen. August Emil Fieldorfa 2, 54-049 Wrocław, Poland)、Jakub Wronowicz(Statistical Analysis Centre, Wroclaw Medical University, ul. K. Marcinkowskiego 2-6, 50-368 Wrocław, Poland)、Bożena Regulska−Ilow(Department of Dietetics and Bromatology, Pharmacy Faculty, Wroclaw Medical University, ul. Borowska 211, 50-556 Wrocław, Poland)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Katarzyna Gołąbek, Agata Gruna-Ożarowska, Jakub Wronowicz, et al. Do Children with Drug-Resistant Epilepsy Exhibit the Same Eating Habits and Feeding Difficulties as Their Healthy Peers? A Multifaceted Assessment of Eating Habits, Feeding Behaviors, and Nutritional Status in Pediatric Patients with Drug-Resistant Epilepsy on a Ketogenic Diet Compared with Healthy Children in Lower Silesia. Nutrients 2026-08-26. DOI: 10.3390/nu18172788. 原著ライセンス:CC BY.