この研究は、ポーランドの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

植物性の食事(ベジタリアンやビーガンなどの食事)と心の健康との関係については、これまでの研究結果が一致していません。研究チームは、その理由の一つとして、「自分はベジタリアンだ」といった食事の自己認識(食のアイデンティティ)が、必ずしも実際に日頃食べているものと一致していない可能性を挙げています。また、こうした食事の選択は、体格や運動習慣といった他の生活習慣と重なって現れることが多い点も指摘しています。

そこで研究チームは、自己申告による食事パターンを出発点として、実際の食品摂取の頻度、食事の質、生活習慣、そして不安や抑うつの症状がどのように関係しているのかを調べました。

調べた方法

対象はポーランドの成人158人で、雑食者(肉や魚も食べる人)105人と、自分を植物性の食事をしていると認識している53人(ベジタリアン34人、ビーガン19人)です。これはすでに集められたデータを別の観点から分析し直す横断研究(ある一時点の状態を比べる研究)として行われました。

33の食品群について日頃どのくらいの頻度で食べているかと、食事の質を表す指標をKomPANという食事調査票から算出しました。不安と抑うつの症状はHADS-Mという質問票、共感性はEQ-Short/SSIE、身体活動量はIPAQという国際的な質問票で評価しています。主な比較の軸は本人が申告した食事パターンで、これに加えて「実際に肉や魚を摂っていないか」という基準で分け直した場合にも結果が変わらないかを確認する感度分析(前提を変えて結果の安定性を調べる分析)を行っています。

主な報告結果

雑食者と比べて、植物性の食事をしている人はBMI(体格の指標)が低く、栄養面で望ましくない食事を表す指標(nHDI)の値が低い一方、食事の質を表す指標(DQI)の値が高かったと報告されています。IPAQの有効な回答が得られた人の範囲では、身体活動量も高い傾向が見られました。33の食品群のうち19群で、多重比較による偽陽性を抑える補正(偽発見率の補正)を行った後も差が認められています。

一方、食事の自己認識と不安(HADS-A)・抑うつ(HADS-D)の得点との間には、調整を行わない場合、最小限の調整を行った場合、より幅広い条件で確認した場合のいずれでも、統計的に意味のある関連は検出されませんでした。ただし著者らは、推定値の信頼区間(値の不確かさの幅)が広すぎるため、「関連がない(同等である)」と結論することも、「関連がある」可能性を否定することもできないと述べています。個々の食品摂取頻度についても、多重比較の補正後には不安・抑うつ得点との関連は見られませんでした。

自己申告と実際の行動のずれも報告されています。自分を植物性の食事だと認識していた53人のうち、肉・魚を摂っていないという基準を満たしたのは36人(67.9%)で、残りの17人(32.1%)は満たしませんでした。IPAQを用いた分析の対象は120人で、回答の欠けやすさを重みづけで補正した感度分析でもHADSの推定値はおおむね同様だったとされています。さらに探索的な分析(仮説を立てる段階の予備的な分析)では、野菜を食べる頻度が高いことと共感性の高さが正の関連を示しました。

この研究が示すこと

著者らは、食事の自己認識は日頃の食品摂取、食事の質、いくつかの生活習慣の明確な違いと対応していた一方で、不安や抑うつの症状との統計的に意味のある関連は検出できなかったと結論づけています。

そして、自己認識と実際に報告された食行動との間にずれが見られたことから、植物性の食事と心理的な側面を扱う研究では、ラベル(自己認識)と実際の食行動の両方を測ることに意味があると指摘しています。人が自分の食事をどう呼ぶかと、実際に何を食べているかは同じではない——この研究は、そのずれ自体を測定の対象として扱う重要性を示しています。

著者:Tamara Kuświk(School of Human Sciences, VIZJA University, Okopowa 59, 01-043 Warsaw, Poland)、Konrad Janowski(School of Human Sciences, VIZJA University, Okopowa 59, 01-043 Warsaw, Poland)、Agnieszka Białek(Collegium Medicum, VIZJA University, Okopowa 59, 01-043 Warsaw, Poland)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Tamara Kuświk, Konrad Janowski, Agnieszka Białek. Beyond Dietary Identity: Habitual Food Consumption, Lifestyle Characteristics, and Mental Health in Adults Following Plant-Based Diets. Nutrients 2026-09-14. DOI: 10.3390/nu18182997. 原著ライセンス:CC BY.