掲載誌:Food Quality and Preference
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
気分が落ち込んだときなどに心の慰めとして食べたくなる料理や食品は「コンフォートフード(慰めの食べ物)」と呼ばれます。チョコレートやポテトチップスのように、甘さや脂肪、炭水化物が多く、なめらかさや温かさといった心地よい風味や食感を持つものが多いとされています。こうした食べ物への欲求には心理的な働きと体の働きが関わっていますが、普段の食習慣によって慣れ親しんだ味や香りが異なることも影響しうると考えられてきました。
近年、動物性食品を除いたり減らしたりする植物性中心の食事を選ぶ人が世界的に増えています。こうした食事の人は、味やにおいの感じ方、食べ物の好みが雑食の人と異なる可能性が報告されてきました。しかし、その違いがコンフォートフードへの欲求にも表れるのかは分かっていませんでした。研究チームは、食べ物への欲求の種類や頻度に男女差があるとされること、また植物性中心の食事を選ぶ人は女性に多いことなどから女性に焦点を当て、食習慣によってコンフォートフードの種類や、それに結びつく感覚・感情・考え方が異なるかを調べました。
どのように調べたか
研究はニュージーランドでオンライン質問票を用いて行われ、最終的に18歳以上の女性522人の回答が分析されました。参加者は自分の食事を自己申告で選び、ヴィーガン(動物性食品をすべて避ける人)80人、ヴィーガン以外の植物性中心の食事の人(ベジタリアンや、肉を減らすフレキシタリアンなど)115人、雑食の人327人の3群に分けられました。食事の分類は実際の摂取量を確認したものではなく、本人の自己認識に基づくものです。
参加者は、過去3か月に最もよく食べたくなったコンフォートフードを3つ挙げ、それぞれについて当てはまる味・におい・食感・感情を表す言葉を、用意された一覧から複数選びました(「当てはまるものをすべて選ぶ」方式)。あわせて、「コンフォートフードは健康的だ」「食べると罪悪感を感じる」といった考え方への賛否も尋ねました。挙げられた食べ物は分類され、ニュージーランドの食品成分データベースなどをもとに、エネルギーに占めるたんぱく質・脂質・炭水化物の割合が推定されました。
主な結果
どの群でも、挙げられたコンフォートフードは主にエネルギーが高く、炭水化物や脂質、またはその両方を多く含む食べ物でした。特によく挙がったのはチョコレート、ポテトチップスやコーンチップス、ケーキです。ヴィーガンではポテトチップスやコーンチップスを挙げた人が最も多く(36.3%)、その他の植物性中心の食事の人(43.5%)と雑食の人(56.6%)ではチョコレートが最多でした。食べたくなる頻度は3群とも中央値が週1回で、群間に有意な差はありませんでした。
一方、栄養素の内訳には違いが見られました。挙げられた食べ物全体では、その他の植物性中心の食事の人の食べ物は、雑食の人の食べ物よりもエネルギーに占めるたんぱく質の割合がやや高く(12%対11.5%)、脂質の割合が低い(38.8%対42.6%)と推定されました。最初に挙げられた食べ物に限ると、ヴィーガン(13.3%)とその他の植物性中心の食事の人(11.4%)の食べ物で、雑食の人(9.7%)よりたんぱく質の割合が高くなっていました。
感覚の特徴にも違いがありました。雑食の人は2つの植物性中心の群よりも「甘い」味を多く選び、その他の植物性中心の食事の人よりも「肉っぽい」においを多く選びました。反対に、その他の植物性中心の食事の人は雑食の人よりも「野菜の」「土のような」においや「温かい」食感を多く選んでいました。コンフォートフードを選ぶ際に最も重視する要素は、どの群でも「味」でした。
感情については、どの群でも最もよく選ばれたのは「満たされた」と「幸せな」で、中心となる感情は共通していました。一部の言葉では群間差も見られましたが、いずれも肯定的な感情であり、著者らはこうした差は小さく慎重に解釈すべきだとしています。考え方については、植物性中心の食事の2群は雑食の人に比べ、コンフォートフードを健康的だと考える傾向が強く、罪悪感や栄養面への悪影響を感じる程度は低いという結果でした。また、ヴィーガンは雑食の人より、コンフォートフードが心の慰めになるという考えへの同意がやや低くなっていました。
この研究が示すこと
この研究は、心を慰める食べ物として高エネルギーの食品が挙がる点や、それに伴う「満たされた」「幸せな」という感情は食習慣を問わず共通している一方、その食べ物に結びつく味やにおいの特徴、栄養素の内訳、食べ物への考え方には食習慣による違いがありうることを示しました。著者らは、コンフォートフードの感覚的な特徴が、普段の食事で触れている食べ物への慣れを反映している可能性を指摘しています。
ただし、この研究はある時点での質問票調査であり、食習慣が違いを生んだという因果関係を示すものではありません。参加者の実際のたんぱく質摂取量や食べ物を選ぶ動機は測定されておらず、著者らはたんぱく質の割合の違いを不足を補おうとする行動の証拠と解釈すべきではないと述べています。それでも、食習慣の異なる女性の間でコンフォートフードへの欲求とその感じ方がどう異なりうるかについて、新たな手がかりを示した研究といえます。
著者:Yunfan Mo、Jessica C. McCormack、Elizabeth Agbor Epse Muluh、Indrawati Oey、Mei Peng
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Yunfan Mo, Jessica C. McCormack, Elizabeth Agbor Epse Muluh, et al. Plant-based dietary patterns and comfort food cravings in women. Food Quality and Preference 2026-09-18. DOI: 10.1016/j.foodqual.2026.106120. 原著ライセンス:CC BY.