健康的な食事の代表格といえば、新鮮な野菜や果物を中心にした「手作り」の食事だろう。ではなぜ都市に暮らす人々は、加工食品や食品産業(アグロインダストリー)が作る製品を日常的に選ぶのか。この問いに対して、味の好みや栄養知識の不足のせいだと片付けてしまいがちだが、エクアドルのグアヤキル市で行われた調査は、もっと実務的な理由が背景にあることを示している。

グアヤキル市民241人への調査でわかったこと

この研究は、グアヤキル農業大学(Universidad Agraria del Ecuador)の研究チームが2024年に実施した「グアヤキル郡の食習慣とアグロインダストリー需要への寄与の把握」というプロジェクトのデータをもとにしている。対象はグアヤキル市の住民241人で、18〜28歳、29〜39歳、40〜50歳、51〜61歳、62歳以上の5つの年齢層に分けて割り当てる「割当法」というサンプリングで集められた。全市民を代表する統計的な無作為抽出ではなく、都市のさまざまな層を探索的にカバーすることを目的とした調査だという点は押さえておきたい。

まず「普段の食事の構成」を尋ねたところ、回答は4パターンの「お皿の中身」の割合(例えば「野菜・果物50%、穀物25%、たんぱく質25%」といった構成)に分類された。最も多かったのは穀物中心の構成(50%が穀物・穀類)で32.0%、次いで野菜・果物が半分を占めつつ加工食品も10%含む構成が29.9%、野菜・果物中心の構成が26.1%、残りが12.0%だった。研究チームは、この自己申告だけでは実際の摂取頻度や量、食品の質までは分からず、「加工食品への依存度」を測る指標としては不十分だと注意を促している。

そこで重要になるのが、加工食品を選ぶ「理由」を複数回答で尋ねた項目だ。最も多く挙げられたのは「手軽さ・調理の速さ」で、241人中147人(61.0%)が回答した。以下、「保存期間の長さ」(38.6%)、「料理する時間がない」(34.9%)、「価格の安さ」(29.9%)、「近所の店で買える」(27.4%)、「選択肢の豊富さ」(26.6%)、「食品ロスの少なさ」(25.3%)と続き、「味の好み」は22.4%で下位にとどまった。味の好みよりも、時間・保存性・価格といった実務的な理由の方が上位に来ていることが、この調査の核となる発見だ。

さらに、加工食品がどのくらいの頻度で食卓に上るかを尋ねたところ、「油脂類」が83.4%、「加工乳製品」が82.2%、「加工パン・菓子類」が80.9%、「加糖飲料」が79.3%、「加工肉」が76.3%、「スナック菓子」が74.1%、「保存食品」が71.4%、「ファストフード」が69.3%と、いずれも日常的(毎日または週単位)に消費されていると回答された。一方で缶詰や冷凍の調理済み食品はこれらより頻度が低かった。研究チームは、加工食品というと缶詰や冷凍食品を思い浮かべがちだが、実際には朝食やおやつ、飲み物といった日々の場面に溶け込む形でアグロインダストリー製品が浸透している、と指摘している。

「地元産」や「持続可能」をうたう製品への支払い意欲も尋ねられた。「多く払ってもよい」は27.8%、「払いたくない」は30.7%、「価格差次第」は41.5%と、最多回答は条件付きの姿勢だった。また「地元のアグロインダストリー製品のバリエーションが増えるなら興味がある」という問いには46.5%が肯定、36.1%が「わからない」、17.4%が否定的だった。研究チームはこの結果について、地元産・持続可能という価値だけでは購買行動を動かすには不十分で、価格・信頼・利便性が伴って初めて選ばれる可能性がある、と論じている。

この研究の位置づけと読むうえでの注意

この論文はデータそのものを新しく提示する実証研究というより、既存の文献と上記の探索的な調査結果を組み合わせて論を展開する「パースペクティブ(視点提起)」論文である点に注意したい。著者らは、加工がすべて問題というわけではなく、保存性や食品安全、輸送のしやすさ、廃棄削減といった正当な機能を持つとしたうえで、問題になるのは栄養価が低く、糖・脂肪・ナトリウムが多い製品に加工食品の供給が偏っている場合だと整理している。

限界としては、著者ら自身が次の点を挙げている。調査が無作為抽出ではなく割当法によるものであるため、結果はグアヤキル市全体を代表する数値とは言えないこと、回答が自己申告であるため記憶違いや社会的に望ましい回答をしてしまう偏りが生じうること、複数回答形式の「理由」の項目は単に回答された頻度を示すだけで、理由同士の因果関係や優先順位を示すものではないこと、そして統計的な有意差の検定は行われていないことだ。今後の研究課題として、無作為抽出による調査、より精緻な食品摂取頻度の測定、実際の支払い意欲の検証、地元産のアグロインダストリー製品の試作品に対する受容性テストなどが必要だとしている。

まとめ

この研究は、都市部で加工食品や食品産業の製品が選ばれる背景には、味の好みや知識不足だけでなく、時間のなさ、保存性、価格、入手のしやすさといった生活上の制約が関わっていることを、グアヤキル市の探索的調査から示した。著者らは、地元の食品産業が加工そのものを否定するのではなく、手軽さを保ちながら栄養面でより望ましい製品を開発することに機会があると論じている。ただし本研究は代表性のある統計調査ではなく、一つの探索的な調査に基づく一つの視点である点には留意が必要だ。

※本記事は原著論文の翻訳ではなく、研究内容を独自に解説したものです。参考文献:Darlyn Tenelanda Mora, Victor Quinde Rosales. Food convenience shapes urban agro-industrial demand: a perspective from Guayaquil, Ecuador. フロンティアーズ・イン・サステイナブル・フード・システムズ (2026). DOI: 10.3389/fsufs.2026.1898563. 原著ライセンス: cc-by.