著者の所属・活動拠点の国は、中国です。

掲載誌:Food Chemistry: X

ライセンス: CC BY-NC-ND 4.0 対象: 公開論文 確認元: Crossref

米を精米する際に出る「米ぬか」は、食物繊維やポリフェノールを含む一方で、パンや麺などの主食に混ぜると食感や風味が損なわれやすいことが知られています。せっかく栄養価に期待が持てる副産物でも、おいしく食べられなければ普及は進みません。今回紹介する研究では、米ぬかの「製粉のしかた」を変えることで、この食味と機能性のバランスをどこまで両立できるかを、蒸しパンを使って検証しています。

研究チームは、段階的に製粉することで粒子の細かさが異なる3種類の米ぬか画分(BF1、BF2、BF3)を用意しました。まず基礎的な分析として、製粉の度合いを高める(より細かく挽く)ほど、米ぬかに含まれる総食物繊維、総フェノール類、総フラボノイド類の含有量が有意に減少することが確認されました。

蒸しパンで試した結果

次に、小麦粉の一部をこれら3種類の米ぬか画分に置き換えて(置換率5%、10%、15%)蒸しパンを作り、食味や機能性を比較しました。その結果、置換率が10%を超えると蒸しパンの硬さが増し、米ぬか特有の好ましくない風味(いわゆる「ぬか臭さ」)が強く感じられるようになったと報告されています。

一方で、置換率5%では抗酸化活性が高まり、でんぷんの加水分解速度(消化のされやすさの指標)が低下することが示されました。中でも最も細かく挽いた画分であるBF1を5%配合した「BF1–5%」群が最も顕著な効果を示し、推定血糖指数(eGI)が無置換の97.53から81.97まで低下したとされています。血糖指数は食後の血糖値の上がりやすさを示す指標で、数値が低いほど上昇が緩やかであることを意味します。

さらに香りの面でも違いが見られ、BF1–5%群とBF2–5%群では、3-メチル-1-ブタノールや2-メチルプロパン酸、酢酸エチルといった特徴的な揮発性香気成分の濃度が、他の条件に比べて有意に高かったと報告されています。これらの成分は蒸しパンの風味に関わるものとされ、著者らはBF1–5%への置換が、栄養価・機能性・官能的な品質(食味や香りなど人の感覚で評価される品質)を総合的に高めうると結論づけています。

この研究を読むうえでの注意点

この研究は、特定の製粉条件と配合比率で作った蒸しパンを対象にした一つの実験結果であり、米ぬか入り食品全般に効果が保証されるものではありません。血糖指数の低下や抗酸化活性の向上といった結果も、あくまでこの研究内で観察された数値であって、実際に食べた際の健康への影響を直接示すものではない点に留意が必要です。米ぬかの製粉度合いや配合率によって食味と機能性のバランスが変わりうる、という知見として捉えるのがよいでしょう。

まとめ

米ぬかは細かく挽くほど食物繊維やポリフェノールが減ってしまう一方、蒸しパンへの配合は5%程度にとどめることで、硬さや異臭を抑えつつ抗酸化活性や血糖指数への好ましい影響が得られる可能性が、この研究では示唆されています。製粉方法と配合比率の工夫次第で、米ぬかをよりおいしく取り入れられる余地があることを示す興味深い結果といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):米ぬか製粉画分が蒸しパンの食味品質、でんぷん消化特性、風味特性に及ぼす影響(フード・ケミストリー:エックス・2026年07月)

原著論文の著者・所属:Bingjie Chen(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform, Shanghai, China.)、Xiao Wang(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform, Shanghai, China.)、Shuqi Wu(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform, Shanghai, China.)、Songheng Wu(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China)、Jinglin Zhang(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China)、Longshen Wang(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China)、Yongjin Qiao(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China; Corresponding authors at: Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China.)、Hongru Liu(Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China; Shanghai Agricultural Products Preservation and Processing Professional Technical Service Platform, Shanghai, China.; Corresponding authors at: Institute of Crop Breeding and Cultivation, Shanghai Academy of Agricultural Science, Shanghai, China.)