野菜や果物、豆類、ナッツ、種子、全粒穀物を中心とする「植物性食」は、心血管代謝系の病気の予防や管理に役立つ可能性があるとして関心が高まっています。こうした食事について患者に助言する立場にあるのが医師ですが、医師自身がどれだけ知識を持ち、どんな態度で臨み、実際にどう実践しているかは、意外と調べられてきませんでした。今回、インド・テランガーナ州のマハビール医科大学で、実際に働く医師200人を対象にした横断調査(アンケート調査)が行われ、その結果が学術誌に報告されました。

どんな調査が行われたのか

調査は2025年11月10日から2026年4月10日にかけて、マハビール医科大学で診療にあたる医師(MBBS取得後の医師)200人を対象に、便宜的サンプリング(その場で協力可能な人を対象とする方法)で実施されました。参加者の内訳は男性90人、女性110人で、平均年齢は男性38.14歳、女性36.71歳(統計的な有意差なし)。学歴はMS/MD(専門医相当)が155人(77.5%)と最多で、MBBSのみが31人(15.5%)。診療年数は1〜5年が93人(46.5%)と最も多く、また食習慣については非菜食・混合食が167人(83.5%)、菜食が33人(16.5%)でした。

調査票は、植物性食に関する知識・態度・実践を尋ねる構造化アンケートで、事前に専門家によるレビューとパイロット調査を経て作成されました。知識項目は正答か否かで採点され、態度項目は5段階のリッカート尺度、実践項目は食習慣や患者への推奨意向を尋ねる形式でした。統計解析にはSPSS ver.25.0が用いられ、カテゴリー変数間の関連はカイ二乗検定またはフィッシャーの正確検定で評価されました。

わかったこと

植物性栄養について「聞いたことがある」と答えたのは151人(75.5%)でした。植物性食を構成する主な食品群(果物、野菜、豆類、ナッツ、種子、全粒穀物)については、参加者全員(100%)が正しく選択できました。

より詳しい知識を問う設問では、完全タンパク質(必須アミノ酸をすべて含むタンパク質)を提供する植物性食品として「大豆」を正しく選んだのは151人(75.5%)、ビタミンB12がヴィーガンやベジタリアンにとって補給が重要な栄養素であると正しく認識していたのは190人(95.0%)でした。また、緑茶に含まれ心血管保護に関与する抗酸化物質として「カテキン」を正しく選んだのは146人(73.0%)、適切に計画された植物性食のエビデンスとして最も支持される効果を「血圧および心血管代謝リスク因子の改善」と回答した参加者は173人(86.5%)にのぼりました。

態度については、卵は植物性食において制限・除外される(77.5%が同意)、加工食品は避けられる(75.0%が同意)といった認識が広く共有されていました。一方で、油の扱いについては「中立」と答えた人が30.0%を占め、調理の準備が複雑だと感じる人(46.5%が同意・強く同意)や、材料費が高いと感じる人も一定数おり、実際の導入に関する懸念が見られました。

実践面では、植物性食への切り替えを「検討する」と答えた人は65人(32.5%)、「わからない(Maybe)」が68人(34.0%)と最多でした。切り替えるとしたらどのくらいの期間続けるかという問いには、2〜4週間と答えた人が65人(32.5%)で最も多くなりました。また、現在・将来の患者に植物性食を勧めるかという問いには、「勧める」が80人(40.0%)、「勧めない」が15人(7.5%)、「わからない」が101人(50.5%)という結果で、知識としては高い正答率を示す一方、実際の推奨行動には迷いが見られることが示されました。

この研究の読み方・注意点

著者らは、この結果は知識と実践の間にギャップがあることを示していると述べています。医師は植物性食の潜在的な健康上の利点を認識していても、栄養的な適切さや実行可能性、文化的な受け入れやすさ、患者への助言の仕方について、なお不確かさを感じている可能性があるとしています。また、著者らは、栄養に関する研修が限られていることや、栄養指導への自信の乏しさが、こうした背景にある可能性にも触れています。

一方で、この調査は単一の医科大学において便宜的サンプリングで実施されたものであり、著者ら自身も、結果は今回の参加医師の状況を反映したものであって、すべての医師に一般化すべきではないと述べています。「植物性食」という言葉自体が幅広い食事パターンを含むため、健康への影響は動物性食品の有無だけでなく食事全体の質や構成に左右されるとも指摘されています。

まとめ

今回の調査では、インドの一医科大学に勤務する医師200人を対象に、植物性食に関する知識・態度・実践が調べられ、多くの医師が基本的な知識を持ち、植物性食に対して概ね好意的な態度を示す一方、調理の手間や費用、患者への推奨に関しては迷いや懸念も見られることが報告されました。著者らは、構造化された栄養教育やエビデンスに基づく指導ツールが、医師が植物性食について患者と話す際の自信を高める助けになりうると述べています。あくまで単一施設での横断調査であり、結論を一般化するものではない点に留意が必要です。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:医科大学における医師の植物性食に関する知識・態度・実践:横断研究(アドバンスド・ナチュラル・サイエンシズ:ライフ・アンド・ヘルス・サイエンシズ・2026年08月)