掲載誌:International journal of Contemporary Humanities.
ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF
植物を通して文化を読み解く
インド北東部のボドの人々にとって、シジョウは単に身近に育つ植物ではありません。伝統的なバトウ信仰では最高神の生きた姿とされ、家庭の祈りや共同体の祭りの中心に置かれています。著者は、この植物が信仰、生活、伝統的な治療のなかでどのような意味を持つのかを調べました。
研究では、植物と人間の関係から文化を読み解く視点を用い、既存の文献に加えて、アッサム州のボドの住民から聞いた口伝を検討しています。著者は、文書に残されることの少ないシジョウの象徴や儀礼について、住民の語りを手がかりに考察しました。
シジョウに託された自然観と祈り
論文が示すのは、シジョウの姿と、自然や人間の生き方をめぐる教えとの結びつきです。バトウ信仰では、土、水、空気、火、空間という五つの要素が重視されます。シジョウもその要素を表す植物とされ、目に見えない根は神の見えない力、一本の幹は唯一の最高神、枝や茎は多様な生き物を象徴すると説明されています。対になったとげには、夫婦の結びつきという意味が与えられています。
聞き取りで得られた伝承では、人々は神の声に導かれて作物を育てる暮らしを始め、感謝の供物をシジョウにささげるようになったと語られます。著者はこの物語を、植物を傷つけず必要な実りを得るという自然との関わり方と、祈りの起源を伝えるものとして紹介しています。
こうした意味は、家庭の庭に設ける祭壇にも表れます。シジョウを囲む竹の柵やその結び方には、神々や人生の規範を表す意味が込められています。枝を切り、運び、植える過程にも祈りや音楽を伴う儀礼があり、植物を育てる行為そのものが、信仰を受け継ぐ営みになっています。
信仰と暮らしが重なる場所
著者は、シジョウの乳液を皮膚の不調などに、葉の煎じ液をせきなどに用いる伝統的な慣行も紹介しています。これは地域で伝えられてきた利用法の記述であり、治療効果を実験で確かめた結果ではありません。論文は乳液について、使い方を誤ると危険になり得るとも記しています。著者は、神聖な植物が治療にも用いられることに、信仰と環境、健康を切り離さない世界観を読み取っています。
論文は、近代化や宗教の変化、環境の悪化によって、シジョウをめぐる知識の継承が脅かされていると述べています。そのうえで、シジョウの重要性は植物としての用途だけではなく、自然と人間を結び、共同体の記憶や価値観を伝えるところにあると結論づけています。
原著論文の著者・所属:Mayuri Pathak(Independent Researcher)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mayuri Pathak. The Sijou Plant and Its Significance in India’s Bodo Community: Phytocritical Perspectives. International journal of Contemporary Humanities. 2026-10-01. DOI: 10.62531/14270.2026.10632.033. 原著ライセンス:CC BY.