著者の所属・活動拠点の国は、ブラジルです。

掲載誌:Nutrire

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

糖分や飽和脂肪、超加工食品を多くとる現代の食生活は、代謝の病気や心血管の病気の増加と関連づけられてきました。著者らは、栄養の過剰や偏りによる代謝上の負担が、体のさまざまな組織で炎症の仕組みを持続的に働かせる状態に注目しています。この状態は「メタフラメーション(代謝性炎症)」と呼ばれ、強い痛みや腫れを伴う急性の炎症とは異なり、低い程度の炎症が長く続くことが特徴です。

肥満はこうした慢性炎症の重要な要因とされてきました。一方で論文は、肥満がなくても不適切な食事パターンに長く触れ続けること自体が炎症反応を引き起こしうるという知見にも触れています。そこでこの総説は、肥満と食事をメタフラメーションの主な引き金と位置づけ、その背後にある細胞や分子の仕組み、さらに腎臓・肝臓・心臓といった主要な代謝臓器への影響について、現在の科学的知見をまとめることを目的としています。

どのように文献を調べたか

本論文は新たな実験を行った研究ではなく、既存の研究をまとめて解説する「ナラティブレビュー(叙述的総説)」です。著者らは医学文献データベースのPubMedとGoogle Scholarを、発表時期を限定せずに検索しました。キーワードには、肥満、脂肪組織、メタフラメーション、マクロファージ、西洋型食事、そして肥満における腎臓・肝臓・心臓などを組み合わせて用いています。

対象としたのは、肥満の病態の仕組みに焦点を当てた原著論文で、動物や細胞を用いた前臨床研究です。方法の記載が不十分な論文、学会抄録、論説、レター、データが不完全または結論が出ていない研究は除外されています。

脂肪組織と食事から炎症が始まる仕組み

論文によると、脂肪組織は単にエネルギーを蓄える場所ではありません。食欲、インスリンの効きやすさ、免疫などに関わる「アディポカイン」と呼ばれるさまざまな物質を分泌する器官でもあります。健康な状態では、炎症を抑える方向の物質が主に分泌されています。しかし摂取エネルギーが消費を上回る状態が長く続くと、脂肪細胞は数が増えたり一つひとつが大きく膨らんだりします。やがて組織はそれ以上広がれなくなり、うまく働かなくなります。論文は、成人の脂肪細胞の数は主に子どもから思春期のうちに決まり、その後はほぼ一定に保たれるとする報告を紹介しています。このため、成人の肥満では主に細胞の肥大によって脂肪組織が拡大すると述べています。

大きく膨らんだ脂肪組織では、血管の成長が追いつかずに酸素不足が起こります。さらに、遊離脂肪酸の放出、細胞内の小器官であるミトコンドリアや小胞体へのストレス、脂肪細胞の死も生じます。こうして出される警報のような信号が免疫細胞を呼び寄せます。とくに免疫細胞の一種であるマクロファージは、通常は炎症を抑える性質のものが多いのに対し、肥満した脂肪組織では炎症を促す性質のものが増えます。それらは死んだ脂肪細胞を取り囲んで、炎症を長引かせることが紹介されています。

食事の面では、加工食品、飽和脂肪、添加糖が多く、果物や野菜、全粒穀物が少ない「西洋型食事」が取り上げられています。論文は、糖のなかでも果糖が過剰になると脂肪の合成やインスリン抵抗性などを通じて炎症に結びつくという報告を紹介しています。また、パルミチン酸などの飽和脂肪酸は、免疫の見張り役である受容体(TLR-4など)を刺激し、炎症を起こす遺伝子のスイッチを入れる経路を活性化しうると述べています。さらに、活性酸素によって体内の酸化と還元のバランスが崩れると、それが炎症を強め、炎症がまたバランスを崩すという悪循環が生じうることにも触れています。

腎臓・肝臓・心臓への影響と、この総説が示すもの

著者らは、エネルギー代謝の中心を担う腎臓、肝臓、心臓が、とくにメタフラメーションの影響を受けやすい臓器だとしています。腎臓では、炎症を促す物質が長く高い状態にあることで、血液をろ過する糸球体の障害や組織の線維化が起こりえます。その結果、尿中にたんぱくが漏れやすくなり、慢性腎臓病のリスクを高めうると整理されています。肝臓では、脂肪組織から流れ込む脂肪酸、糖や脂肪の過剰摂取、腸内細菌やその産物の変化、脾臓から送られる免疫細胞などの刺激が重なります。これらが肝臓に脂肪がたまる代謝異常関連脂肪性肝疾患(MASLD)の発症や進行に関わると紹介されています。心臓については、炎症性の物質やアディポカインの乱れ、心臓を取り巻く心外膜脂肪の増加と機能不全が、心臓の構造の変化や線維化、心血管の病気と関連すると述べています。

まとめとして論文は、メタフラメーションを肥満や食事の過剰と多臓器の機能障害とを結ぶ重要なつながりと位置づけています。この炎症は脂肪組織だけにとどまりません。炎症性物質による信号のやり取り、免疫の活性化、脂肪の毒性、酸化と還元のバランスの乱れといった相互に関連する仕組みを通じて、複数の臓器に及びうることが示されています。著者らは、こうした仕組みの理解を深めることが、代謝の負担から臓器の慢性的な障害へと進む流れを早い段階で断ち切るための手がかりになりうると述べています。

原著論文の著者・所属:Taynara Aparecida Vieira(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Medical School São Paulo State University (UNESP) Professor Montenegro Avenue 18618687 Botucatu Brazil)、Jordanna Cruzeiro(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Medical School São Paulo State University (UNESP) Professor Montenegro Avenue 18618687 Botucatu Brazil)、Núbia Alves Grandini(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Medical School São Paulo State University (UNESP) Professor Montenegro Avenue 18618687 Botucatu Brazil)、Murilo Dalarme Tanganini(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Institute of Biosciences São Paulo State University (UNESP) Botucatu Brazil)、Marina de Paula Salomé dos Santos(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Medical School São Paulo State University (UNESP) Professor Montenegro Avenue 18618687 Botucatu Brazil)、Matheus Antônio Filiol Belin(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Medical School São Paulo State University (UNESP) Professor Montenegro Avenue 18618687 Botucatu Brazil)、Fabiane Valentini Francisqueti-Ferron(Integrated Colleges of Bauru (FIB) Bauru Brazil)、Artur Junio Togneri Ferron(Integrated Colleges of Bauru (FIB) Bauru Brazil)、Camila Renata Corrêa(https://ror.org/00987cb86 grid.410543.7 0000 0001 2188 478X Medical School São Paulo State University (UNESP) Professor Montenegro Avenue 18618687 Botucatu Brazil)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Taynara Aparecida Vieira, Jordanna Cruzeiro, Núbia Alves Grandini, et al. Metaflammation: linking diet and obesity to multiorgan dysfunction. Nutrire 2026-10-27. DOI: 10.1186/s41110-026-00558-0. 原著ライセンス:CC BY.