著者の所属・活動拠点の国は、アメリカ、イタリア、カナダ、スイス、オーストラリアです。

掲載誌:European Journal of Preventive Cardiology

ライセンス: CC BY 4.0 対象: 公開論文 確認元: 論文PDF

研究の目的

著者らは、オメガ3脂肪酸の摂取が心房細動のリスクを高めるのか、これまでの研究を整理しました。心房細動は、心臓の上部にある心房の電気的な活動が乱れる不整脈です。

背景には、オメガ3脂肪酸の医薬品を使った臨床試験で、心房細動の増加が報告されたことがあります。ただし、こうした試験の多くは心血管疾患のリスクが高い人を対象としていました。著者らは、その結果が、魚やサプリメントからオメガ3脂肪酸を摂る一般成人にも当てはまるのかを検討しました。

何を、どのように調べたか

この論文は、新たに参加者を募った試験ではなく、既存の観察研究や無作為化比較試験を検討し、専門家の合意による見解をまとめた総説です。主に扱ったのは、オメガ3脂肪酸のEPAとDHAで、摂取量や血中濃度と心房細動との関係、食品とサプリメントの違い、心血管疾患に対する利益と心房細動のリスクの釣り合いなどを取り上げました。

検討の中心となった更新版のメタ解析は、複数の試験結果を統合したものです。その解析では、PubMedなどの文献データベース、臨床試験登録、研究データの収集先などを用い、2025年11月まで検索していました。対象試験を、EPAとDHAの合計量が1日1500mgを境とする低用量・高用量と、参加者の心血管疾患リスクの高低で4群に分け、心房細動の発生を比較しました。高リスクには、すでに動脈硬化性の心血管疾患がある人や、糖尿病、高血圧などの危険因子を少なくとも2つ持つ人が含まれました。

主な報告結果

著者らは、一般成人が食品やサプリメントからEPAとDHAを合計で1日1500mgまで摂取しても、心房細動のリスクが高まる可能性は低いと結論づけています。1日2400mg程度までについても、同様の可能性を示しました。また、観察研究を含む証拠の多くは、この範囲での継続的な摂取と、心房細動リスクの低さとの関連を示すとしています。これは、摂取による予防効果を確定したという意味ではありません。

一方、心血管疾患の高リスク者に1日1500mgを超える量を投与した試験群では、対照群に比べて心房細動の相対リスクが約43%高く、発生割合の絶対差は1パーセントポイント未満だったと報告しています。この試験群では、主に医薬品が用いられ、平均投与量は1日約2700mgでした。

高リスク者への低用量投与と、低リスク者への高用量・低用量投与の試験群では、統計学的に有意なリスク増加は認められませんでした。ただし、用量や心血管リスクによる違いを直接確かめる統計解析は報告されておらず、4群の結果だけから、群同士で影響が異なると断定することはできないと著者らは説明しています。

食品から摂る場合とサプリメントから摂る場合で、心房細動のリスクが異なるかを直接調べた研究はありませんでした。

この報告が示すこと

この総説が伝えるのは、心血管疾患の高リスク者に医薬品を高用量で投与した結果を、一般成人の食事やサプリメントの摂取にそのまま当てはめるべきではない、という見方です。著者らは、高リスク者でも心血管疾患に対する利益が心房細動のリスクを上回る場合があると評価し、高用量が医学的に必要な場合は個別の判断が必要だとしています。これらは、現在の証拠に基づく著者らの合意見解です。

判断の限界として、試験ごとに心房細動の定義や検出方法、参加者の病気や併用薬が異なっていました。また、解析対象の試験では心房細動の新規発症が主要な評価対象ではなく、有害事象として把握されていたため、主要評価項目ほど詳しく調べられていなかったとしています。高用量のオメガ3脂肪酸が心房細動を促す仕組みについても、明確な説明は得られていません。

原著論文の著者・所属:William S Harris(Fatty Acid Research Institute, and the Department of Internal Medicine, Sanford School of Medicine, University of South Dakota , Sioux Falls, SD ,)、Raffaele De Caterina(Cardiology Division, Pisa University Hospital and University of Pisa , Pisa ,)、Stanley Nattel(Montreal Heart Institute , Montreal, Quebec ,)、James D Richards(DSM-Firmenich , Plainsboro, NJ ,, USA)、Szabolcs Péter(DSM-Firmenich , Kaiseraugst ,)、Carl J Lavie(Department of Cardiovascular Diseases, John Ochsner Heart and Vascular Institute, Ochsner Clinical School, The University of Queensland School of Medicine , New Orleans, LA ,)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):William S Harris, Raffaele De Caterina, Stanley Nattel, et al. Omega-3 Fatty Acids and Atrial Fibrillation: Current Evidence and Expert Opinion. European Journal of Preventive Cardiology 2026-10-31. DOI: 10.1093/eurjpc/zwag577. 原著ライセンス:CC BY.