この研究は、ノルウェー、スウェーデン、アイスランド、デンマークの研究機関の研究論文です。

掲載誌:European Journal of Nutrition

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

食品の栄養価を成分から点数化し、簡潔な表示にまとめる仕組みを栄養プロファイリングと呼びます。欧州のいくつかの国で包装前面の表示として使われているNutri-Scoreは、その一例です。Nutri-Scoreには飲料用、一般食品用、油脂やナッツ・種実など高脂肪食品用の3つのアルゴリズムがあり、エネルギー密度が大きく異なる食品群に合わせて作り分けられています。

ただし著者らは、一般食品用のアルゴリズムが扱う範囲はブイヨンスープからマヨネーズまで非常に幅広く、エネルギー密度の高い側や低い側にある製品では栄養の質の違いをうまく捉えられない可能性があると指摘します。Nutri-Scoreは100gまたは100mLあたりで計算するため、製品の水分含量に左右されやすいという批判も紹介されています。

著者らが所属するNewToolsプロジェクトの先行研究では、調理済み食品(レディミール)や混合料理がNutri-Scoreの狭い範囲、とくにCに集まりやすいことが指摘されていました。水分が多くエネルギー密度が比較的低い料理では、栄養成分の差が点数に表れにくいというわけです。そこで著者らは、エネルギー密度の違いを織り込むようアルゴリズムを調整すれば、レディミールのような低エネルギー密度の製品で栄養の質の区別がつきやすくなり、しかも他の食品の点数を大きく変えずに済むのではないかと仮説を立てました。本研究の目的は、一般食品用アルゴリズムがエネルギー密度の異なる食品で栄養の質の差をどこまで捉えられるかを調べ、エネルギー密度の水準に合わせた調整版の概念実証(プルーフ・オブ・コンセプト)を行うことです。

何をどう調べたか

著者らは、ノルウェーで販売される包装食品をほぼ網羅する2つのデータベース(TradesolutionとUnil)を用いました。Nutri-Score 2023の一般食品用アルゴリズムを計算できる条件を満たす品目を選び、欠損や重複、ありえない値の製品を除いたうえで統合し、25,833品目を分析対象としています。なお欧州連合では食物繊維の表示が義務ではないため、繊維の情報がない14,929製品には繊維の点数を0としました。果物・野菜・豆類(FVL)の含有量はどちらのデータベースにも収録されていないため、果物・ベリー・野菜・豆類に分類される1,615製品には80%超の値を与え、それ以外は0点としています。

調整版アルゴリズムは著者らの研究チームが独自に考案したものです。エネルギー成分とFVL成分を除くすべての成分について、100gあたりの含有量と100kcalあたりの含有量を半分ずつ反映させる形で、エネルギー密度の水準に応じた重みづけ係数を成分の点数にかけます。データベース内の一般食品のエネルギー密度の中央値が100gあたり1MJだったため、この水準を重み1(変更なし)の基準点としました。当初はNutri-Score 2023のエネルギー点数(0〜10点)に対応する11段階を設けましたが、予備的な検討で、1.5を超える重み(非常に低いエネルギー密度)ではわずかな栄養素含量に対して罰則や加点が過大になり、0.8を下回る重み(高いエネルギー密度)ではケーキや甘い菓子などで不自然に良い点数が出ることが観察されました。そこで重みに上限・下限を設け、最終的に1.5、1.1、0.9、0.8の4段階に整理しています。合計点の計算方法はNutri-Score 2023と同じで、A〜Eの区分の境界値は、データセット内の分布が元のアルゴリズムと概ね同程度になるよう調整されました。

評価は、両アルゴリズムによるA〜E分類のクロス集計と一致率、およびエネルギー密度別・食品カテゴリー別の分布の比較によって行われました。対象がノルウェー市場の包装食品の大部分を占めるため、著者らは分析を推論的ではなく記述的なものと位置づけ、信頼区間や有意性検定は行っていません。本研究は提案手法の概念実証であり、重みづけの構造は1種類に限定されています。

主な報告結果

調整版を適用すると、全製品の22%(5,647製品)でA〜Eの評価が変わりました。より悪い評価へ移った製品(12%、3,155製品)が、より良い評価へ移った製品(10%、2,492製品)をやや上回っています。評価が変わった製品のうち95%は1段階の移動でしたが、複数段階動いたものもありました。

Nutri-Score 2023では、エネルギー密度が低い製品はほぼ例外なくA〜Cの良好な評価を得て、エネルギー密度が高い製品(エネルギーで4点以上)はほぼすべてDまたはEになっていました。調整版では点数のばらつきが広がり、とくに低エネルギー密度の食品でその傾向が見られました。同時に点数の中央値の分布はやや不利な方向へずれ、その一部はA〜Eの境界値の変更によって相殺されています。

レディミールは全体の傾向とは異なり、69%(1,014製品)がエネルギー点数1〜2点に集まっていました。Nutri-Score 2023では低エネルギー密度のレディミール(エネルギー2点以下)の多くがCとなり、ばらつきが小さいままでした。調整版ではレディミールの点数のばらつきが増え、全体としてはやや悪い方向へ移りました。100gあたり670kJ以下のスープ、シチュー、粥、パスタ料理、ベジタリアン向け製品はBからC、CからDへ移るものが主で、671〜1,005kJの群(ピザ、サンドイッチ、寿司、餃子、肉入り製品など)ではばらつきが増えてCからBへもDへも動きました。

一方で、著者らは望ましくない副作用も報告しています。ビスケット・ケーキ・ペストリーや甘い菓子・デザートといったカテゴリーは全体としてより良い評価を得るようになり、乳製品のヨーグルト、赤身肉、魚、野菜・豆類、じゃがいもなどはより悪い評価が増えました。チーズでは脂肪18%未満の製品が主にCからDへ移り、脂肪29%超はDからEへ移りやすくなる一方、18〜29%の製品はCの割合が増えました。魚では食塩0.3gを超える製品が脂肪含量にかかわらず不利な方向へ動き、脂肪2%未満で食塩1.6g/100gのタラは、それまでのAからDへ移った例として挙げられています。つまり低脂肪の代替品が食塩などの不利な成分でより強く罰せられ、エネルギーや飽和脂肪の少ない製品へ一貫して誘導する働きが失われていました。著者らは、調整版は全体としてNutri-Score 2023を上回るものではなかったと結論しています。

考察では、この結果を説明しうる概念上の問題も論じられています。エネルギー密度は独立した特徴ではなく、脂肪や糖類、ある程度はたんぱく質といった、すでにNutri-Scoreに組み込まれている栄養素によって大きく決まります。そのためエネルギー密度で重みづけをすると、すでに点数に反映されている特性を重ねて調整することになり、この循環性が意図しない結果の一部を生んだ可能性があると著者らは述べています。また、重みづけとA〜Eの境界値を同時に変更したため、両者それぞれの効果を本研究の設計では切り分けられないことも限界として挙げられています。繊維とFVLのデータがないこと、検証した重みづけが1種類だけであること、ノルウェーのデータベースに依拠していることも限界とされました。

著者らは本研究を新しい栄養プロファイルの包括的な検証ではなく概念実証として位置づけており、Nutri-Score 2023との収束的妥当性のみを検討したと明記しています。レディミールがCに集まることが栄養の質の過大評価を意味するのか、それとも製品間で栄養組成が実際に似ているだけなのかは、独立した指標で評価していないため不明のままだとしています。

この研究が伝えること

重量あたりで採点する仕組みは、水分の多い食品を相対的に有利に扱いやすい——この課題に対し、著者らはエネルギー密度に応じた重みづけという具体的な解決策を作り、大規模な実データで正直に突き合わせました。その結果は、低エネルギー密度の食品で区別がつきやすくなる一方、菓子類が有利になり低脂肪品が不利になるという、表示の信頼性を損ないうる副作用を伴うものでした。

調整の対象としたエネルギー密度が、調整される栄養素そのものから生じているという指摘は、単一の指標で食品を評価する仕組みを設計するときの難しさを具体的に示しています。うまくいかなかった試行を丁寧に記述することも、こうした仕組みを改良していくうえでの一歩だと言えます。

著者:Anna Amberntsson(Centre for Sustainable Diets, Norwegian Institute of Public Health, Oslo, Norway)、Mari Mohn Paulsen(Centre for Sustainable Diets, Norwegian Institute of Public Health, Oslo, Norway)、Marta Angela Bianchi(Department of Agriculture and Food, RISE Research Institutes of Sweden, Gothenburg, Sweden)、Bryndís Eva Birgisdóttir(Unit for Nutrition Research, Faculty of Food Science and Nutrition, School of Health Sciences, University of Iceland, Reykjavík, Iceland)、Anja Pia Biltoft-Jensen(National Food Institute, Technical University of Denmark, Lundtofte, Denmark)、Dina Moxness Konglevoll(Department of Nutrition, Institute of Basic Medical Sciences, University of Oslo, Oslo, Norway)、Anne Lise Brantsæter(Centre for Sustainable Diets, Norwegian Institute of Public Health, Oslo, Norway)、Lene Frost Andersen(Department of Nutrition, Institute of Basic Medical Sciences, University of Oslo, Oslo, Norway)、Marianne Hope Abel(Centre for Evaluation of Public Health Measures, Norwegian Institute of Public Health, P.O. Box 222, NO-0213, Skoyen, Oslo, Norway. [email protected])

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Anna Amberntsson, Mari Mohn Paulsen, Marta Angela Bianchi, et al. Exploring an energy-density adjustment to the Nutri-Score algorithm for general foods. European Journal of Nutrition 2026-09-19. DOI: 10.1007/s00394-026-04105-5. 原著ライセンス:CC BY.