妊娠中や産後は、母体や赤ちゃんの発育にとって鉄分の状態がとても重要だと言われています。鉄が不足すると、妊婦さん自身だけでなく、おなかの中で育つ胎児や生まれてくる子どもの健康にも影響が及ぶ可能性があるためです。しかし、こうした鉄の状態がどのように変化していくのかについて、ノルウェーではこれまでデータが少なかったといいます。今回紹介するのは、ノルウェーの妊婦と乳児を対象に、妊娠期から産後にかけて血清フェリチン濃度(体内の鉄の貯蔵状態を示す指標)を継続的に測定した縦断研究です。

研究でわかったこと

この研究では、ノルウェーの妊婦137名を対象に、妊娠18週目と36週目、さらに産後3か月と6か月の時点で追跡調査を行い、母体と乳児の血清フェリチン濃度を測定しました。あわせて、鉄サプリメントの摂取状況や授乳状況との関連も調べられています。

その結果、妊娠18週目の時点で、鉄欠乏(血清フェリチン濃度が15µg/L未満)とされた妊婦は14%、鉄の貯蔵量が枯渇した状態(30µg/L未満)にあった妊婦は44%でした。ところが妊娠36週目になると、鉄欠乏の割合は65%、鉄貯蔵の枯渇は95%にまで増加していたと報告されています。つまり、妊娠が進むにつれて、母体の鉄の状態は大きく低下する傾向がみられたということです。

一方で、乳児については異なる傾向が示されました。生後3か月の時点では96%の乳児が十分な鉄状態(50µg/L以上)にあり、生後6か月になると、フェリチン濃度は生後3か月時点と比べて低下していたものの、90%は引き続き十分な鉄状態を保っており、鉄欠乏とされたのは10%にとどまったとされています。

また、この研究では、母体や乳児の鉄の状態と、鉄サプリメントの摂取や授乳の有無との間に、明確な関連は見られなかったと報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、ノルウェーにおける137名の妊婦とその乳児という特定の集団を対象に行われたものであり、この結果がそのまま他の国や地域の妊婦・乳児にあてはまるとは限りません。また、血清フェリチン濃度という一つの指標をもとにした報告であり、鉄の状態や健康への影響を判断するための唯一の基準というわけではない点にも留意が必要です。あくまで一つの研究であり、これによって結論が確定したわけではありません。

まとめ

今回紹介した研究では、ノルウェーの妊婦を追跡した結果、妊娠が進むにつれて鉄欠乏や鉄貯蔵の枯渇の割合が大きく増加する一方、生まれてきた乳児については、生後3か月から6か月にかけてフェリチン濃度の低下がみられたものの、鉄欠乏の割合は比較的低く保たれていたことが示されました。母体と乳児で異なる傾向が観察された点は興味深く、今後さらに研究が積み重ねられることが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:妊娠期から産後にかけての母体および乳児の血清フェリチン濃度:ノルウェーにおける縦断研究(フード・アンド・ニュートリション・リサーチ・2026年06月)