「運動をがんばったから、ちょっとくらい食べても大丈夫」——そう感じたことがある人は多いのではないでしょうか。運動には血糖コントロールを助ける効果が期待されていますが、その一方で運動後に食事内容が変わり、せっかくの効果を打ち消してしまうのではないかという懸念は以前から指摘されてきました。ただし、これまでこの点をきちんと検証したデータは十分ではありませんでした。今回、健康な大学生を対象に持久運動と食事、血糖値の関係を詳しく調べ、さらに大規模なコホート研究のデータでも確認した研究が、学術誌「ニュートリション・アンド・ダイアビーティーズ」に2026年6月に掲載予定です。

どんな研究が行われたのか

この研究では、健康な大学生54人(平均年齢22.2歳)を対象に、無作為化比較対照試験という方法で、(1)中強度の持久運動(MOD-EX)、(2)高強度の持久運動(VIG-EX)、(3)運動をしない対照、という3つの条件をそれぞれ経験してもらうクロスオーバー試験が行われました。運動量はWHO(世界保健機関)が推奨する5日間分の基準に沿って設定されています。参加者は食事を自由に摂ってよい状態(ある食べたいだけ食べられる条件)に置かれ、毎日の食事内容は実際に食品を計量する方法で記録されました。あわせて、空腹時および経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)という方法で血糖値の変化も測定されています。さらに研究チームは、この試験結果が一般集団でも当てはまるかを確認するため、イギリスの大規模コホートであるUKバイオバンク(約5万人규모のデータ)を用いた検証も行いました。

研究でわかったこと

結果として、中強度・高強度いずれの持久運動でも、1日の総エネルギー摂取量には統計的に意味のある増加は見られませんでした。つまり「運動した分、食べる量そのものが大きく増える」という単純な代償行動は確認されなかったということです。

ただし、食事の中身には変化が見られました。両方の運動条件で野菜の摂取量が15.67%減少(1日あたり約13.5kcal相当の減少)し、さらに高強度運動(VIG-EX)では、料理に加える油の摂取量が10.92%増加(1日あたり約31.1kcal相当の増加)していたと報告されています。

血糖に関しては、中強度・高強度いずれの運動でも食後の血糖指標が改善する傾向が見られました。具体的にはHbA1c(ヘモグロビンA1c、過去1〜2か月程度の平均血糖の指標)がそれぞれ3.82%、2.18%低下し、OGTT中の血糖値の変化を表す指標(2時間血糖曲線下面積)もそれぞれ11.92%、13.48%低下したとされています。しかし研究チームの解析によれば、この血糖改善効果は食事内容の変化によってそれぞれ7.52%、10.85%分だけ「打ち消されて」いたと報告されています。特に、食物繊維の摂取が減ったことと飽和脂肪酸の摂取が増えたことが、この打ち消し効果と強く関連していたとされています。

さらに、食物繊維を多く摂っている、または飽和脂肪酸の摂取が少ない参加者ほど、運動による血糖改善効果がより大きく現れる傾向が統計的な相互作用分析で示されました。この関連は、UKバイオバンクのデータ(約5万人)を用いた検証でも、身体活動量と2型糖尿病発症リスク低下との関連について同様の傾向が確認されたと報告されています。

これらの結果から研究チームは、運動による血糖改善効果をより十分に得るためには、食物繊維の摂取を増やし、飽和脂肪酸の摂取を控えることを併せて行うことが有用ではないかと考察しています。

この研究を読むうえでの注意点

この研究は、健康な大学生という比較的若く限定された集団を対象にした試験であり、5日間という短期間の介入で得られた結果です。年齢層の異なる人や、糖尿病などの既往がある人にそのまま当てはまるかどうかは、この要旨だけからは分かりません。また、UKバイオバンクでの検証は身体活動量とデータに基づく関連を確認したものであり、試験で見られたのと全く同じ仕組みが働いていることを直接証明するものではない点にも留意が必要です。この研究はあくまで一つの研究であり、これによって結論が確定したわけではありません。

まとめ

今回の研究では、持久運動が総エネルギー摂取量そのものを大きく増やすわけではないものの、野菜の摂取が減り油脂の摂取が増えるといった食事内容の変化を通じて、運動による血糖改善効果の一部が相殺されうることが示唆されました。あわせて、食物繊維を多く摂り飽和脂肪酸を控えることが、運動の効果を十分に活かすうえで関連している可能性が報告されています。運動と食事はセットで考える必要があるかもしれない、という視点を与えてくれる研究といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:持久的運動介入は野菜摂取量を減少させ血糖改善効果を損なう:無作為化対照3期クロスオーバー試験(ニュートリション・アンド・ダイアビーティーズ・2026年06月)