キノコの一種であるチャーガ茸(カバノアナタケ)は、多糖類などの機能性成分を含むことで知られ、血糖値に関する研究がこれまでも行われてきました。今回紹介する論文では、チャーガ茸から多糖類を作る際に生じる副産物、いわば“搾りかす”のような存在に着目しています。この副産物は「水抽出エタノール沈殿上清(SWEPC)」と呼ばれ、これまで研究があまり進んでいなかった素材だといいます。研究チームは、このSWEPCが2型糖尿病モデルのマウスにおいて、血糖値や腸内細菌叢(腸内フローラ)にどのような影響を与えるのかを調べました。
研究でわかったこと
研究チームは2型糖尿病を発症させたマウスに対し、SWEPCを1日あたり体重1kgにつき300mgの用量で4週間にわたって投与しました。その結果、投与前と比べて複数の指標に変化が見られたと報告されています。空腹時血糖値は52.29%低下し、経口糖負荷試験(ブドウ糖を摂取した後の血糖の変動を調べる検査)における数値の推移も37.68%減少したとされています。また、過去数週間の血糖の状態を反映するとされる糖化血清蛋白は65.36%低下し、インスリンの効きにくさを示すインスリン抵抗性指数は44.42%低下、逆にインスリンの効きやすさを示すインスリン感受性指数は90.24%上昇したことが示されています。
さらに研究チームは、腸内細菌叢の構成にも着目しました。統計的な相関解析の結果、Anaeroplasma属という腸内細菌が血液中の悪玉コレステロール(LDLコレステロール)と関連する傾向(相関係数0.75)、Anaerotruncus属が空腹時血糖値と関連する傾向(相関係数-0.81)、Ruminococcus属が体重と関連する傾向(相関係数-0.65)がそれぞれ認められたとされています。研究チームは、これらの腸内細菌が2型糖尿病に関連する代謝の特徴に関与している可能性があり、今後さらなる検証が必要だとしています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、糖尿病モデルとして作出されたマウスを用いた動物実験であり、要旨からは投与量や実験期間、対象とした腸内細菌の種類なども限定的な条件のもとで行われたことがうかがえます。ヒトにおいて同様の効果が得られるかどうかは、この要旨だけでは判断できません。また、腸内細菌と血糖値や体重との関連についても、あくまで相関関係が示されたものであり、因果関係が証明されたわけではない点に留意する必要があります。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点を念頭に置いて読むことをおすすめします。
まとめ
この研究では、チャーガ茸の多糖類調製過程で生じる副産物SWEPCを4週間投与した2型糖尿病マウスにおいて、血糖値関連の複数の指標に改善が見られたことが報告されており、その変化には腸内細菌叢の組成の変化が伴っていたとされています。今後、こうした副産物の活用可能性についてさらなる研究が進むことが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:チャーガ茸の水抽出エタノール沈殿上清は2型糖尿病マウスの高血糖を改善し腸内細菌叢組成の変化を伴う(フーズ・2026年07月)