著者の所属・活動拠点の国は、カナダです。
掲載誌:Biomedicines
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
腸内の「真菌」と食事に着目した研究
高血圧、脂質異常、肥満、インスリン抵抗性などが重なる状態は「心血管代謝疾患(CMD)」と総称され、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病のリスクを高めることが知られています。近年は、腸内に住む微生物がこうした病気のリスクに関わると考えられるようになりました。腸内微生物というと細菌が注目されがちですが、腸にはカビや酵母などの真菌も住んでおり、その集まりは「マイコバイオーム」と呼ばれます。
一方、野菜、果物、全粒穀物、魚介類、豆類、ナッツを多くとり、赤身肉や甘いものを控える地中海食は、心血管疾患の予防に役立つ食事パターンとして研究されてきました。ただし、地中海食が心血管代謝疾患に伴う腸内真菌の変化とどう関係するのかは、よく分かっていませんでした。研究チームは、心血管代謝疾患のある人とない人を対象に、腸内真菌の構成と地中海食をどの程度実践しているかの関係を調べました。
どのように調べたか
研究チームは、カナダ・アルバータ州の住民を長期に追跡している既存の研究集団から、35〜69歳の成人を選びました。心血管代謝疾患と診断された人と、年齢をそろえた疾患のない人(健康対照群)です。ある一時点のデータを比べる「横断研究」として行われました。
参加者の体格、血圧や心拍数、血液検査の値を測り、便から真菌の遺伝子の一部を読み取って、どのような真菌がどれくらいいるかを調べました。食事内容は質問票で把握し、地中海食にどれだけ沿っているかを点数化しました。そのうえで、点数が下位25%の人と上位25%の人だけを取り出し、疾患の有無と組み合わせて4つのグループ(各13〜27人)に分けて比較しました。著者らは、人数が少なく、特に疾患があり地中海食の点数が高いグループ(13人)を含む比較は探索的なものだと位置づけています。
主な結果
腸内真菌の構成は人によって大きく異なっていました。研究チームが食事、生活習慣、年齢・性別、体格、服薬など26の要因を検討したところ、真菌の全体的な構成と統計的に有意な関連を示したのは、アルコール摂取量と、食事中の不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の比率の二つでした。著者らは、脂質の摂取が真菌の集まり方を左右する重要な要因である可能性を示しています。
地中海食の点数が高い人では、腸内真菌の多様性(種類の多さや偏りの少なさ)が高い傾向があり、とくに心血管代謝疾患のある人でその差がはっきりしていました。また、疾患のある人のうち地中海食の点数が高いグループは、点数が低いグループに比べて安静時の心拍数が低く、血糖状態の指標であるHbA1cや炎症の指標であるC反応性タンパク(CRP)は健康対照群と同程度でした。一方、血圧の上と下の値には、地中海食の点数による違いは見られませんでした。
真菌の種類では、地中海食の点数が低い疾患のある人で、脂質を好み炎症を促す可能性がある真菌マラセチアの仲間が、健康対照群より多く見られました。こうした疾患に関連した真菌の違いは、地中海食の点数が高い人では見られませんでした。なお、これらの真菌の違いは、比較的ゆるい基準で有意と判定されたものです。
研究が示すこと
著者らは、地中海食をよく実践している人ほど腸内真菌の多様性が高く、心血管代謝疾患に伴う真菌の変化が目立たず、心血管・代謝の指標もより良好だったと結論づけています。これは、食事によって形づくられる腸内真菌の構成と心血管代謝の健康との結びつきを示す結果です。
ただし、この研究は一時点での関連を調べたもので、地中海食が真菌の構成や健康指標を変えたという因果関係を示したものではありません。研究チームは、腸内真菌が心血管代謝疾患のリスクに関わることを示す知見を補強するものとして、この結果を位置づけています。
原著論文の著者・所属:Chunlong Mu(Alberta Children’s Hospital Research Institute, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada; Department of Biochemistry and Molecular Biology, Cumming School of Medicine, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada; Department of Microbiology, Immunology, and Infectious Diseases, Cumming School of Medicine, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada; Faculty of Kinesiology, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada; Libin Cardiovascular Institute, University of Calgary, Calgary, AB T2N 5A1, Canada; Snyder Institute for Chronic Diseases, University of Calgary, Calgary, AB T2N 5A1, Canada)、Shrushti Shah(Faculty of Kinesiology, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada)、Jaclyn C. Campbell(Department of Biochemistry and Molecular Biology, Cumming School of Medicine, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada)、Grace Shen-Tu(Alberta’s Tomorrow Project, Alberta Health Services, Calgary, AB T2T 5C7, Canada)、Jane Shearer(Alberta Children’s Hospital Research Institute, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada; Department of Biochemistry and Molecular Biology, Cumming School of Medicine, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada; Faculty of Kinesiology, University of Calgary, Calgary, AB T2N 1N4, Canada; Libin Cardiovascular Institute, University of Calgary, Calgary, AB T2N 5A1, Canada; Snyder Institute for Chronic Diseases, University of Calgary, Calgary, AB T2N 5A1, Canada)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Chunlong Mu, Shrushti Shah, Jaclyn C. Campbell, et al. Cardiometabolic-Disease-Associated Gut Mycobiome Alterations and Their Relationship to Mediterranean Diet Adherence. Biomedicines 2026-10-22. DOI: 10.3390/biomedicines14112414. 原著ライセンス:CC BY.