この研究は、オーストラリアの研究機関の研究論文です。
掲載誌:Health Policy
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
長期介護施設(LTC:long-term care homes、日本でいう特別養護老人ホームなどの入所型施設にあたる)では、管理栄養士が入居者の健康や生活の質を高めるうえで重要な役割を担うとされています。しかし研究チームは、その役割が世界的にどのように位置づけられているのかは十分に理解されていないと指摘しています。
そこで著者らは、各国の法令、ガイドライン、基準、そして職能団体などが示す「役割声明(ロールステートメント)」をもとに、長期介護施設における管理栄養士の役割と関与のあり方を世界的に把握することを目的としました。
何をどのように調べたか
研究チームは、文書とウェブサイトを対象とする横断的な分析を行いました。横断的とは、ある時点の状況をまとめて把握する調べ方を指します。
対象国は、国際的な栄養士関連のウェブサイトに掲載されている国々としました。文書は、法令・ガイドライン・基準のなかで管理栄養士に言及しているもの、あるいは長期介護施設に焦点を当てた役割声明であるものを分析対象としています。集めた情報は、記述統計に加え、質的な内容分析と量的な比較分析を用いて整理されました。
報告された主な結果
著者らは68か国を特定し、そのうち37か国(54%)が少なくとも1種類の該当文書を有していたと報告しています。文書の種類では役割声明が28件と最も多く、次いで基準が10件、法令が8件、ガイドラインが6件でした。
4種類すべての文書がそろっていた国は日本のみで、3種類を備えていたのはオーストラリア、トルコ、北アイルランドでした。
文書の内容からは14の中心的な話題が抽出されています。管理栄養士によるサービス、栄養ケア計画、栄養サポート、低栄養のスクリーニングや診断、食事の提供、献立、給食運営の管理、食事の時間や食環境の体験、多職種連携、職員研修、遵守状況の確認、文書の作成、質改善の取り組み、委員会への参画です。
この研究が示すこと
著者らは、長期介護施設における管理栄養士の役割が国によって異なり、その違いが各国の政策や実践のあり方を反映していると結論づけています。詳細な枠組みを整えている国がある一方で、正式な指針を持たない国も多くみられました。
こうした差は、人口構成、文化、制度、経済、人材の状況といった要因に形づくられていると論文は述べています。そのうえで著者らは、管理栄養士の役割への認識を高めるために、国際的な連携の強化と各国での働きかけが必要だとしています。世界共通と思われがちな施設の栄養ケアが、実は国ごとに大きく異なる制度の上に成り立っていることを、この研究は具体的な文書の有無として示しました。
著者:Karly Bartrim(Centre for Community Health and Wellbeing, The University of Queensland, Springfield, Queensland, Australia)、Amelia Messiter(School of Human Movement and Nutrition Sciences, The University of Queensland, St Lucia, Queensland, Australia)、Nicole Barr(School of Human Movement and Nutrition Sciences, The University of Queensland, St Lucia, Queensland, Australia)、Lauren Ball(Centre for Community Health and Wellbeing, The University of Queensland, Springfield, Queensland, Australia)、Danielle Cave(School of Health, University of the Sunshine Coast, Sippy Downs, Queensland, Australia)、Hannah Olufson(Centre for Health Services Research, University of Queensland, Brisbane, Australia)、Breanna Lepre(Centre for Community Health and Wellbeing, The University of Queensland, Springfield, Queensland, Australia)、Mikaela Wheeler(School of Public Health, The University of Queensland, Herston, Queensland, Australia)、Alice Pashley(Centre for Ageing Research and Translation, University of Canberra, Bruce, Australian Capital Territory, Australia)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Karly Bartrim, Amelia Messiter, Nicole Barr, et al. Dietitians Role in Long-Term Care Homes: A Cross-Country Analysis of Legislation, Standards, Guidelines, and Role Statements. Health Policy 2026-09-01. DOI: 10.1016/j.healthpol.2026.105776. 原著ライセンス:CC BY.