近年、ChatGPTのような対話型AIに健康や食事の相談をする人が増えています。手軽に栄養アドバイスが得られる一方で、実際の治療現場で使われている専門的な「医療栄養療法」と同じレベルの個別対応ができるのかは、まだよくわかっていません。今回紹介する研究は、肝臓の機能が大きく低下した「非代償性肝硬変」で低栄養状態にある患者を想定し、AIが作成する食事プランと管理栄養士が作成する食事プランを比較したものです。

研究でわかったこと

この研究では、非代償性肝硬変を伴う低栄養状態にあると仮定した模擬症例を10例(女性5例、男性5例)作成しました。年齢や体格(BMI)はそれぞれ異なる設定になっています。同じ臨床情報・患者背景をChatGPT-3.5と、同一の管理栄養士の両方に与え、それぞれが独立して個別化された食事プランと栄養療法の提案を作成しました。できあがった食事内容は、栄養価計算ソフト「BeBiS」を用いて、たんぱく質や炭水化物、食物繊維、ナトリウム、カリウムなどの栄養素の量を分析し、両者の違いを統計的に比較しています。

その結果、ChatGPTが作成した食事プランは、管理栄養士のプランと比べて、たんぱく質の量とたんぱく質由来のエネルギー割合が有意に高くなっていました。一方で、炭水化物の量や炭水化物由来のエネルギー割合、食物繊維、植物性たんぱく質、カリウムは有意に少なく、逆にナトリウムの量は有意に多いという結果が示されました。さらに注目すべき点として、栄養状態の特徴が異なるはずの10症例のうち7症例で、ChatGPTはほぼ同じ内容の食事プランを提示していたことが報告されており、症例ごとの個別化が十分に行われていなかったことがうかがえます。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

この研究は、実在の患者ではなく模擬的に作成された10症例を対象とした予備的な比較研究です。著者らは、ChatGPTは一般的な栄養に関するガイダンスを提供できる一方で、低栄養を伴う非代償性肝硬変患者向けの個別化された医療栄養療法の作成には重要な限界があると結論づけています。そのうえで、AIが生成した食事プランは、実際の臨床現場で使う前に、管理栄養士が内容を確認し、個々の患者に合わせて調整する必要があるとしています。あくまで一つの研究であり、対象症例数も限られていることから、この結果だけでAIによる食事指導全般の是非が確定したわけではない点には注意が必要です。

まとめ

今回の研究は、AIチャットボットが医療現場で求められるような細やかな個別栄養指導を、現時点でどこまで代替できるのかを考えるうえで興味深い材料を提供しています。ChatGPTは手軽に栄養情報を得る手段として活用されつつありますが、肝硬変のような複雑な病態を抱える患者に対しては、専門職による確認や調整が欠かせないことが、この研究からは示唆されています。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:AI支援食事療法か管理栄養士か?低栄養を伴う非代償性肝硬変患者における栄養療法の予備比較(ミドル・ブラック・シー・ジャーナル・オブ・ヘルス・サイエンス・2026年08月)