食事管理や糖尿病などの生活習慣病への対応では、日々の食事内容を記録する「食事記録」が重要な手段とされています。しかし、食べたものを毎回自分で記録し、栄養素を計算するのは手間がかかり、続けるのが難しいという課題があります。近年は写真を撮るだけで栄養素を推定できるAI技術が注目されていますが、特に日本食は主菜・副菜・汁物など品数が多く盛り付けも多様なため、AIにとって推定が難しいとされてきました。今回紹介する研究は、この日本食特有の難しさに着目し、写真から栄養素を推定するAIモデルの精度を検証したものです。
研究でわかったこと
研究チームは、OpenAI社の画像認識AIモデル「GPT-4o」を、日本食の写真1269枚(学習用912枚、検証用252枚、評価用105枚)を使って追加学習(ファインチューニング)させました。正解データとしては、実際に食品を計量して記録した「秤量食事記録」や、管理栄養士による栄養素の推定値が用いられました。
そのうえで、追加学習を行っていない27種類のAIモデルや、人間の管理栄養士による推定値と比較する形で精度が検証されました。その結果、追加学習をしていないモデルの多くは、食物繊維の推定については精度が低い傾向が見られました。一方で、炭水化物・タンパク質・エネルギー(カロリー)については多くのモデルで良好な精度が示され、塩分や脂質についてはモデルによって精度にばらつきが見られたと報告されています。
また、「GPT-5.1」(推論の負荷を抑えた設定)や、追加学習をしていないGPT-4oモデルについても高い精度が示されましたが、必ずしも管理栄養士の精度を全面的に上回るものではなかったとされています。これに対し、日本食の写真で追加学習を行ったGPT-4oモデルは、すべての栄養素の項目において管理栄養士の精度を上回ったと報告されています。特に食物繊維については、推定値と正解データの一致度合いを示す「級内相関係数(ICC)」が0.79(95%信頼区間 0.782-0.797)となり、管理栄養士の0.68を大きく上回ったことが、このモデルの精度を裏付ける結果として示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、特定のAIモデルを日本食の写真データで追加学習させた場合の精度を検証したものであり、AIによる栄養素推定全般が常に人間より優れていると結論づけるものではありません。実際、追加学習をしていないモデルの中には、栄養素の種類によって精度にばらつきが見られたものもあると報告されています。また、これは一つの研究であり、対象となった写真の枚数や条件のもとで得られた結果である点に留意する必要があります。
今後、より多様な食事や条件のもとでの検証が重ねられることで、AIによる栄養素推定技術の実用性についての理解がさらに深まっていくことが期待されます。
まとめ
本研究では、日本食の写真をもとに追加学習させたAIモデルが、炭水化物やタンパク質、エネルギーに加え、特に推定が難しいとされる食物繊維についても、管理栄養士を上回る精度を示したことが報告されました。食事記録の負担軽減につながる技術として、今後の研究の進展が注目されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:微調整した商用人工知能モデルを用いた日本食の写真からの栄養素評価(ジャーナル・オブ・ダイアビーティーズ・サイエンス・アンド・テクノロジー・2026年07月)