慢性腎臓病(CKD)の食事療法では、タンパク質の摂取量が話題になることが多くあります。タンパク質を摂りすぎると、その代謝産物である尿素が増え、血液中の尿素窒素(BUN)という指標が上昇しやすくなると考えられているためです。一方で、食物繊維は腸内環境などを通じて代謝に影響を与える可能性が指摘されてきました。もし食物繊維を多く摂ることで、タンパク質摂取とBUNの関係が変わるのであれば、CKDの食事管理を考えるうえで新しい視点になるかもしれません。今回、日本国内の医療機関でCKD患者を対象に、この点を検討した研究が報告されました。
研究でわかったこと
この研究では、透析を受けていないCKD患者274人(年齢の中央値72歳、女性34%)を対象に、日本の3つの病院で調査が行われました。食事の内容は、信頼性が確認された食事歴に関する質問票を用いて推定され、食品群ごとの摂取量や栄養素の摂取量が算出されました。研究チームは、食物繊維の摂取量を3段階(低・中・高)に分けたうえで、それぞれの群でどのような食品を多く摂っているかを比較し、さらにタンパク質摂取量とBUNの関連を統計的な手法(重回帰分析)で調べています。
対象者全体で見ると、BUNの中央値は24mg/dL、腎機能の指標である推算糸球体濾過量(eGFR)の平均は33mL/分/1.73m²でした。タンパク質摂取量とBUNの間には正の関連、つまりタンパク質摂取量が多いほどBUNも高くなる傾向が確認されました。
興味深いのは、この関連が食物繊維の摂取量によって異なっていた点です。食物繊維の摂取が少ない群と中程度の群では、タンパク質摂取量とBUNの正の関連が統計的に意味のある形で見られました。一方、食物繊維の摂取が多い群では、この関連は統計的に有意ではありませんでした。なお、群ごとの違いそのものを検定した交互作用の解析では、統計的に明確な差とまでは言えない結果(P=0.10)だったことも報告されています。また、食物繊維の摂取が多い群は、果物・野菜・魚・卵の摂取量も多い傾向があったことが示されています。
この研究の位置づけ・読むうえでの注意
この研究は、あくまで一時点でのデータをもとにした観察研究であり、食物繊維がBUNの上昇を「防ぐ」と証明したものではありません。食物繊維の摂取が多い人は、果物・野菜・魚・卵といった食品も多く摂る傾向があったことから、食物繊維そのものの影響なのか、こうした食事パターン全体の影響なのかを切り分けるのは簡単ではありません。また、群ごとの関連の違いを検定した交互作用の解析結果は統計的に明確な有意差とまでは言えなかった点にも注意が必要です。論文の著者らも、食物繊維を増やすことでタンパク質制限をより柔軟に行えるかどうかは、今後さらなる研究が必要だとしています。一つの研究であり、結論が確定したわけではない点を踏まえて読むとよいでしょう。
まとめ
今回の研究では、非透析のCKD患者において、タンパク質摂取量が多いほどBUNが高くなる傾向が見られる一方で、食物繊維の摂取量が多い人ではその関連が弱まる可能性が示唆されました。食物繊維の摂取が多い人は果物・野菜・魚・卵の摂取量も多い傾向があったこともあわせて報告されています。CKDの食事管理におけるタンパク質と食物繊維の関係については、今後さらに研究が積み重ねられていくことが期待されます。
※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:食物繊維は慢性腎臓病患者におけるタンパク質摂取量とBUNの関連を緩和する(キドニー360・2026年08月)