著者の所属・活動拠点の国は、オランダです。

掲載誌:Future Foods

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

研究チームは、北大西洋などに生える紅藻ダルス(学名Palmaria palmata)に含まれる、ピンクがかった赤色のタンパク質色素「R-フィコエリトリン(RPE)」を、天然の食品用色素として使える粉末にする方法を検討しました。

著者らによると、RPEは天然の着色料として期待されており、より持続可能な原料とも考えられています。一方で、精製に費用と手間がかかること、また安定性に課題があることから、産業での利用は限られていました。そこで研究チームは、海藻から色素を取り出す段階から粉末にする段階までを一続きの工程としてまとめ、その有効性を確かめることを目指しました。

取り出しと濃縮の工程

工程は三つの段階で構成されています。まず酵素で海藻の組織を分解して色素を取り出す「酵素補助抽出」、次に膜を使って色素を濃縮し、不要な小さな成分を洗い流す「限外ろ過・ダイアフィルトレーション」、最後に液体を熱風中に噴霧して素早く乾かし粉末にする「噴霧乾燥」です。

抽出の段階では複数の酵素が試されました。そのうちShearzyme Plusという酵素を35℃、酵素量0.5%(重量比)で用いた条件は、最も良い抽出成績の一つでした。抽出液のRPE濃度は1ミリリットルあたり0.45ミリグラム、色素の純度の目安となる純度指数は0.73と報告されています。

続いて、100キロダルトンの大きさで分子をふるい分けるポリエーテルスルホン製の膜で処理しました。その結果、RPE濃度は1ミリリットルあたり1ミリグラムまで高まり、純度指数は1.60に上がりました。この段階でRPEの90%が回収され、分子量の小さい成分の91%が取り除かれたとされています。

噴霧乾燥の条件づくりと粉末の性質

研究チームは、RPEの噴霧乾燥について、複数の条件を組み合わせて試し、その結果から最適な条件を統計的に探る「応答曲面法」を使って、初めて体系的に最適化したと報告しています。

最適化の過程では、粉末の回収量を高める条件と、粉末が水に溶けやすくなる条件が両立しにくいことも分かりました。著者らは、用途に合わせて乾燥条件を調整する必要があると指摘しています。

予測モデルを実際の実験で確かめたところ、結果は予測の信頼区間の範囲内に収まりました。この条件では粉末の回収率が90.1±0.6%でした。粉末が固いガラス状からやわらかい状態へ変わり始める目安となる「ガラス転移温度」は107.5±0.4℃、残留水分は2.9±0.5%でした。著者らは、これらの値は常温での長期保存に適した性質だとしています。

噴霧乾燥した粉末は赤みがかったピンク色を保っていました。ただし、色などの性質は加工条件や、乾燥を助けるために加える担体(キャリア)の有無によって変わりました。このため著者らは、粉末の色も噴霧乾燥の条件で調整する必要があると述べています。

この研究が示すこと

この研究は、海藻由来の赤い色素を、抽出・精製・粉末化まで一続きの工程で扱えることを示しました。著者らは、この方法を規模を拡大でき、産業にも関わる手法と位置づけ、RPEを新しい天然食品色素の候補として示しています。同時に、回収量と溶けやすさの兼ね合いや色の違いなど、目的に応じた条件の調整が重要であることも明らかになりました。

原著論文の著者・所属:Oscar M. Elizondo Sada(Bioprocess Engineering, Wageningen University and Research, PO Box 16 Wageningen 6700 AA, the Netherlands)、Jose E. Faure Reyes(Bioprocess Engineering, Wageningen University and Research, PO Box 16 Wageningen 6700 AA, the Netherlands)、Anja E.M. Janssen(Laboratory of Food Process Engineering, Wageningen University and Research, PO Box 17 Wageningen 6700 AA, the Netherlands)、Maarten A.I. Schutyser(Laboratory of Food Process Engineering, Wageningen University and Research, PO Box 17 Wageningen 6700 AA, the Netherlands)、Antoinette Kazbar(Bioprocess Engineering, Wageningen University and Research, PO Box 16 Wageningen 6700 AA, the Netherlands)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Oscar M. Elizondo Sada, Jose E. Faure Reyes, Anja E.M. Janssen, et al. Turning Palmaria palmata into a natural food colorant: Integrated downstream processing and spray drying optimization of R-phycoerythrin. Future Foods 2026-10-01. DOI: 10.1016/j.fufo.2026.101239. 原著ライセンス:CC BY.