著者の所属・活動拠点の国は、インドです。
掲載誌:Genetics and Molecular Research
ライセンス: CC BY-SA 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
捨てられる果物・野菜をどう生かすか
果物や野菜は栄養源として重要ですが、傷みやすいため収穫後に大量に失われています。インドのタミルナドゥ農業大学の研究チームによるこの論文は、既存の研究をまとめたレビュー(総説)です。著者らは、こうした損失を経済的には1兆ドル近い負担になると紹介しています。
著者らが論じるのは、廃棄物を「使い捨て」で終わらせない考え方です。皮や種、芯、見た目が悪いだけの規格外品などを「アップサイクル」、つまり捨てられるはずだった素材から価値の高い食品素材をつくる方法を取り上げています。資源を循環させる「循環型経済」の観点から、その可能性と課題を整理することが論文の目的です。
廃棄物は「二次原料」になりうる
論文によると、果物や野菜の副産物には、食物繊維、たんぱく質、ポリフェノールなどの抗酸化成分が豊富に含まれています。食べる部分より多くの成分を含む場合もあるといいます。例として、リンゴの搾りかすの食物繊維、ブドウやスイカの種のたんぱく質、ザクロや柑橘の皮のポリフェノール類が挙げられています。
著者らは、見た目の不ぞろいで市場から外れた青果物は、品質そのものが落ちたわけではないと指摘します。外部の基準によって「生鮮品」から「二次原料」へ立場が変わるだけだという見方です。葉物野菜についても触れており、元の重さの3%を失うと売り物にならなくなるため、栄養が保たれていてもしおれた段階で捨てられがちだと述べています。著者らは、こうした葉物を地域で素早く再利用すべき資源として捉え直しています。
環境負荷の小さい加工技術と食品への応用
傷みやすい廃棄物を活用するには、まず素早く乾燥させるなどして劣化を止める必要があります。論文では、環境への負荷が小さい「グリーン」な技術が紹介されています。太陽エネルギーを使う乾燥は、化石燃料に頼る高温乾燥より使うエネルギーが少なく、熱に弱い成分も残りやすいとされます。薄いフィルムを介して温水の熱で穏やかに乾かす「リフラクタンスウィンドウ乾燥」も取り上げられています。凍結乾燥は成分の保持に優れる一方、エネルギーを多く使う方法として紹介されています。著者らは、条件がよければ晴れた日1日で廃棄物の水分を6%未満に下げ、発酵を止められるとする報告も引用しています。
こうして得た素材の使い道としては、メロンやバナナの皮から作った粉をパンやビスケットに加える例や、野菜の副産物を朝食用シリアルに加える例などが挙げられています。一方で、消費者の受け止め方も課題とされています。皮や切れ端が原料だと知らされると食べたい気持ちが下がるといった心理的な壁があり、味や食感の作り込みが受け入れの大きな鍵になると論文は述べています。表示については、廃棄物を強調しすぎず、安全で質の高い副産物であることや資源の循環を伝える工夫が必要だとしています。
安全性の確保という課題
著者らが特に重視するのは食品安全です。皮や搾りかすを乾燥させて粉にすると重さが8〜9割減り、その分、蒸発しない物質が濃縮されます。そのため、果実全体では基準内だった残留農薬が、皮から作った粉では基準を超えるおそれがあります。土壌に由来する鉛やカドミウムなどの重金属も同様に問題になります。さらに、水分の多い搾りかすではカビが増え、加熱では分解されにくいカビ毒が生じる危険があるといいます。
こうしたリスクへの対策として、論文は「園芸作物の安全基準値」を設けることを提案しています。食品に回せる廃棄物と、堆肥やエネルギー利用に回すべき廃棄物を見分ける目安です。あわせて、栽培条件や農薬の使用履歴をたどれる仕組みも求めています。ブロックチェーンやIoTを使った追跡システムによって、流通の透明性と消費者の信頼を高める構想も示されています。
このレビューは、青果物の廃棄物を食料資源として生かすには、加工技術だけでは足りないことを示しています。安全性の管理、消費者の受け入れ、環境への正味の効果の評価を合わせて考える必要があるというのが、著者らの描く全体像です。
原著論文の著者・所属:R. G. M. Vijeyaamrisha(Department of Vegetable Science , Horticultural College and Research Institute , Tamil Nadu Agricultural University , Coimbatore , 641003 , India)、S. T. Bini Sundar(Department of Floriculture and Landscape Architecture , Horticultural College and Research Institute , Tamil Nadu Agricultural University , Coimbatore , 641003 , India)、C. Indu Rani(Department of Vegetable Science , Horticultural College and Research Institute , Tamil Nadu Agricultural University , Coimbatore , 641003 , India)、R. Manimekalai(Department of Agricultural Extension and Rural Sociology , Agricultural College and Research Institute , Tamil Nadu Agricultural University , Coimbatore , 641003 , India)、V. Babu rajendra Prasad(Department of Crop Physiology , Agricultural College and Research Institute , Tamil Nadu Agricultural University , Coimbatore , 641003 , India)、G. Ashokkumar(Department of Vegetable Science , Horticultural College and Research Institute , Tamil Nadu Agricultural University , Coimbatore , 641003 , India)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):R. G. M. Vijeyaamrisha, S. T. Bini Sundar, C. Indu Rani, R. Manimekalai, V. Babu rajendra Prasad, G. Ashokkumar Closing the Loop on Perishables: Transforming Horticultural Post Harvest Waste into Sustainable Future Foods. Genetics and Molecular Research 2026-08-12. DOI: 10.4238/rf7m3t42. 原著ライセンス:CC BY-SA 4.0.
本紹介記事の文章(題名・見出しを含む)は、CC BY-SA 4.0で提供します。原著論文をもとにNutriMap Japanが日本語で要約・説明を加えています。対象は本紹介記事の文章に限り、ヒーロー画像・サイトのロゴ・画面デザイン・他の記事・データベース全体は含みません。