著者の所属・活動拠点の国は、アメリカです。

掲載誌:International Journal of Science and Research (IJSR)

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

なぜ二酸化チタンの安全性が問われているのか

二酸化チタンは「E171」という番号で知られる食品添加物です。光をよく散乱させる性質や半導体としての性質を持ち、ソース、ケーキのアイシング、チューインガムなどの食品に使われています。歯磨き粉や錠剤にも使われています。

これほど広く使われていても、安全性の評価は国や地域によって分かれています。論文によると、米国はおおむね使用を認めていますが、欧州の規制当局はより慎重で、禁止に踏み切った例もあります。この論文は、二酸化チタンの毒性に関する既存の研究を見直し、現在の規制の考え方で人の健康を十分に守れているかを検討した文献レビューです。著者が新たに実験を行ったものではありません。

有害性を示す報告

著者はまず、生きた動物を使った研究(生体内試験)で報告された悪影響を紹介しています。引用された研究によると、二酸化チタンは腸の壁を通過すると血液に入り、重要な臓器へ運ばれるとされます。体重1キログラムあたり50、100、150ミリグラムの用量で、炎症反応や臓器の機能異常が起きたという報告があります。

報告された影響には、胃や腸の炎症、肝臓の細胞が死ぬ肝細胞壊死、心臓や血管の組織の損傷、腎臓への毒性が含まれます。より少ない量でも影響が出たとする研究もあります。ラットに1日あたり体重1キログラムにつき最大5ミリグラムまたは10ミリグラムを与えたところ、大腸にがんの前段階とされる病変ができ始めたと報告されています。

論文はさらに、子どもは体重が軽く、二酸化チタンを含む製品を多く口にしがちなため、特に影響を受けやすいという指摘を紹介しています。また、長期間さらされ続けると粒子が体内に蓄積するという報告にも触れ、年齢を重ねるにつれて臓器の損傷が悪化するおそれがあると述べています。

影響は小さいとする報告と、過去の研究の問題点

一方で、悪影響は大きくないとする研究も紹介されています。オーストラリアとニュージーランドの食品規制機関(FSANZ)の資料では、口から摂取した二酸化チタンが体内に吸収される割合は0.0013%未満とされています。吸収されても溶けにくいため、臓器に届く量はわずかだという報告もあります。論文で紹介された研究では、遺伝子を傷つける作用(遺伝毒性)は確認されませんでした。また、ラットやマウスに口から与えても、細胞を傷つける作用(細胞毒性)は見られなかったとする研究もあります。

著者は、研究によって結果が食い違う理由として、実験方法の違いを挙げています。一つ目は、超音波で処理して細かく分散させた粒子を使った研究があることです。実際の食品中の二酸化チタンはそのような処理を受けておらず、食品の成分と一緒に摂取されるときの影響も考慮されていません。超音波処理した粒子を飲み水に混ぜて体重1キログラムあたり1日10ミリグラムを与えた研究では、大腸の前がん病変が見られました。しかし、食品用の二酸化チタンを与えた別の2つの研究では、この結果は再現されなかったと紹介されています。

二つ目は、投与の方法です。悪影響が出るまで二酸化チタンを動物の体内に注入し続けた研究があり、現実的な摂取で害があるかを確かめる設計ではなかったと論文は指摘しています。三つ目は、投与量の多さです。ラットに1日あたり体重1キログラムにつき5グラムを2週間与えた研究では、深刻な影響が観察されました。ただし、この量は人の標準的な摂取量(論文によれば0.5〜14.8mg/kg)のおよそ1000倍にあたると見積もられています。極端に高い用量や現実的でない投与経路で得られた結果は慎重に解釈すべきだという見解も、あわせて引用されています。

レビューから見えてくること

著者は、二酸化チタンは適度で現実的な量であれば安全である可能性があると述べています。一方で、研究ごとに方法がそろっていないため確かな結論を出すのは難しく、普段口にする程度の量で悪影響が起きる可能性も否定できないとしています。

そのうえで論文は、二酸化チタンを無条件に受け入れるのではなく、研究を続けるとともに規制による監視を強めるべきだと結論づけています。このレビューが示しているのは、身近な食品添加物であっても、安全性の判断が実験条件の現実性に大きく左右されるということです。

原著論文の著者・所属:Jacob Rop(Academy for Science and Design , 9 Townsend W , Nashua , NH 03063)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Jacob Rop. Titanium Dioxide in Food Products. International Journal of Science and Research (IJSR) 2026-08-12. DOI: 10.21275/sr26807071537. 原著ライセンス:CC BY.