著者の所属・活動拠点の国は、イタリアです。

掲載誌:Nutrients

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

クローン病は、口から肛門までの消化管のどこにでも炎症が起こりうる慢性の炎症性腸疾患です。近年は薬物治療が進歩する一方で、食事が腸内細菌や腸の炎症に影響することにも関心が集まっています。

その代表的な方法の一つが「クローン病除外食(CDED)」です。CDEDは、加工食品や添加物など炎症との関連が指摘される食品を避け、鶏肉、卵、じゃがいも、果物などの加工度の低い食品を中心に食べる食事法です。通常は、栄養剤を飲んで1日のエネルギーの一部をまかなう「部分経腸栄養(PEN)」と組み合わせて行われます。

論文によると、この組み合わせは主に小児で効果が報告され、成人でも短期間の成績が示されてきました。しかし、6か月を超える長期のデータ、特に1年間続けられるかどうかについての情報は限られていました。そこで研究チームは、活動期の成人クローン病患者がCDED+PENを1年間続けられるか、耐えられるかを主な検討課題としました。あわせて、症状、炎症の指標、栄養状態、体組成の変化を探索的に記録しました。

どのように調べたか

研究は、単一の医療機関で行われた前向きコホート研究です。前向きコホート研究とは、対象者を登録してから時間を追って経過を観察する研究のことです。比較対照となる別の治療群は設けていません。対象は症状や検査、画像・内視鏡で活動性が確認された18〜75歳の患者です。評価を受けた58人のうち、条件を満たした36人が参加しました。

食事療法は52週間を三つの段階に分けて行われました。最初の6週間は最も制限が厳しい段階で、栄養剤が1日の消費エネルギーの50%を占めました。7〜12週目には食べられる食品を段階的に増やし、栄養剤は25%に減らしました。13〜52週目は、管理された「自由な食事」も認める長期維持の段階で、栄養剤は25%のまま続けました。医師と管理栄養士のチームが、面談、電話でのフォロー、食事記録の確認を通じて参加者を支援しました。

症状の程度は、腹痛や便の回数などから点数をつけるハーベイ・ブラッドショー指数(HBI)で評価しました。4点以下を「臨床的寛解」(症状が落ち着いた状態)としています。炎症の指標としては、血液中のCRPと、便中の腸の炎症マーカーであるカルプロテクチンを測定しました。体組成は、微弱な電流を体に流して筋肉量や脂肪量などを推定する生体電気インピーダンス法で調べました。

主な結果

主要な評価項目である1年間の継続率は、36人中22人で61.1%でした。中止した14人はいずれも、制限が最も厳しく栄養剤の割合も大きい最初の6週間のうちにやめていました。中止の理由は、便の量の軽い増加、吐き気、お腹の張りといった症状のほか、食事の厳しさ、栄養剤の受け入れにくさ、日常生活に組み込む難しさでした。

継続できた22人は全員が6週目に臨床的寛解に達し、中止した人で寛解に達した人はいませんでした。参加者全員を分母とし、中止者を寛解に至らなかった人として数える方法(ITT解析)では、6週目の寛解率は61.1%でした。1年後まで寛解を保っていたのは継続者22人中14人(63.6%)で、参加者全体では38.9%にあたります。寛解を失った8人では、開始から中央値で約20週後に再燃していました。

継続者では、CRPと便中カルプロテクチンがともに基準内に収まる「生化学的寛解」の割合が、6週目の36.4%から1年後の50.0%に増えていました。ただし、個々の炎症指標を時間経過で解析すると全体として有意な変化は認められず、6週目に見られた便中カルプロテクチンの低下は慎重に解釈すべきだと著者らは述べています。

栄養面では、継続者のたんぱく質摂取量が1年を通じて開始時より多い状態が続きました。血液中のアルブミンは6週目と12週目に上昇しましたが、1年後には開始時との差がなくなっていました。1年後も寛解を保った人では、筋肉量の指標と「位相角」(細胞の状態や栄養状態の目安とされる体組成の値)が改善していました。一方、寛解を失った人では位相角が悪化していました。

安全性については、入院を要するような重い有害事象や、食事療法に起因する重大な合併症は報告されませんでした。継続者の一部に軽い吐き気やお腹の張りが見られましたが、いずれも自然におさまり、中止には至りませんでした。また探索的な解析では、発症から2年以内の患者のほうが継続しやすい傾向が見られましたが、著者らはこれを仮説の段階にとどまる観察としています。

この研究が示すこと

著者らは、CDED+PENが、続けられる一部の成人クローン病患者にとって、1年間実行可能な薬を使わない選択肢となりうると結論づけています。同時に、約4割が最初の6週間で中止しており、継続できるかどうかが長期の結果を大きく左右することも示されました。

一方で、参加者が少なく、比較対照群がなく、継続できた人だけが解析に残るという偏りがあることから、著者らはこれらの結果を効果の確かな証拠ではなく探索的な知見と位置づけています。寛解の維持と栄養状態との関連についても、因果関係は判断できないとしています。成人での1年間にわたるデータが乏しいなかで、食事療法の継続性と経過を具体的に記録した点に、この研究の意義があります。

原著論文の著者・所属:Ilaria Dileo(Clinical Nutrition and Dietetics Unit, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy)、Marta Vernero(Unit of Gastroenterology, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy)、Davide Giuseppe Ribaldone(Department of Medical Sciences, University of Torino, 10126 Turin, Italy; Unit of Gastroenterology, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy)、Alessia Chiarotto(Clinical Nutrition and Dietetics Unit, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy)、Anna Avico(Clinical Nutrition and Dietetics Unit, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy)、Clara Bosa(Clinical Nutrition and Dietetics Unit, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy)、Marta Ossola(Clinical Nutrition and Dietetics Unit, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy)、Valentina Ponzo(Department of Medical Sciences, University of Torino, 10126 Turin, Italy)、Gian Paolo Caviglia(Department of Medical Sciences, University of Torino, 10126 Turin, Italy; Unit of Gastroenterology, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy)、Simona Bo(Clinical Nutrition and Dietetics Unit, Città della Salute e della Scienza di Torino-Molinette Hospital, 10126 Turin, Italy; Department of Medical Sciences, University of Torino, 10126 Turin, Italy)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Ilaria Dileo, Marta Vernero, Davide Giuseppe Ribaldone, et al. Long-Term Feasibility, Adherence, and Exploratory Clinical Outcomes of Crohn’s Disease Exclusion Diet Plus Partial Enteral Nutrition in Adults with Crohn’s Disease. Nutrients 2026-08-02. DOI: 10.3390/nu18152491. 原著ライセンス:CC BY.