この研究は、メキシコ、アルゼンチンの研究機関の研究論文です。

掲載誌:Journal of Shellfish Research

ライセンス: CC BY-NC-ND 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

寿司や海鮮丼で人気の「ウニ」。あの独特な甘み・うまみを持つオレンジ〜黄色の部分は、実はウニの生殖巣(精巣・卵巣)で、専門的には「ウニ」と呼ばれる食材です。市場では、色や食感、大きさによって品質のランク分けがされていますが、見た目のよさと実際の栄養・味の成分にはどんな関係があるのでしょうか。今回紹介するのは、南米などに生息する褐色ウニ「Tripneustes depressus(トリプニューステス・デプレッサス)」を対象に、生殖巣の品質と、大きさ・細胞の構成・栄養成分・アミノ酸の関係を1年かけて調べた研究です。

研究の方法

研究チームは、野生の個体を毎月15匹ずつ、1年間にわたって採集しました。それぞれのウニから取り出した生殖巣は、色・食感・かたさといった感覚的な指標をもとに「1級」「2級」「3級」の3つの品質クラスに分類されました。そのうえで、殻の直径や体重、生殖巣の重さ、細胞の構成、タンパク質などの生化学的成分、エネルギー量、遊離アミノ酸のプロファイル、そして色を数値化するCIELAB色空間の測定値(明るさ・黄色みなど)が、品質クラスごとに比較されました。

研究でわかったこと

最も高い「1級」の品質と評価された生殖巣は、明るく鮮やかな黄色をしており、明度(L*)と黄色み(b*)の値が高く、色のばらつきを示す指標(ΔE*ab)は20未満と、色が比較的均一であることが示されました。また1級の生殖巣は32〜77gとサイズが大きく、オスの個体でその割合がやや高い傾向が見られたと報告されています。細胞の構成を見ると、栄養分を蓄える「栄養貪食細胞」が、卵や精子のもとになる「生殖細胞」に対して多く含まれており、これが細胞の発育に必要な栄養を supplyする役割を担っている可能性が示唆されています。

栄養成分については、品質クラスや性別を問わず、いずれの生殖巣でもタンパク質の含有量が高く、生殖巣のエネルギー源として最も大きく寄与していることが確認されました。さらに、遊離アミノ酸の分析では、3つの品質クラスすべてでグリシン・グルタミン酸・アルギニンの含有量が特に高く、これらはいずれも良好な風味に関連するアミノ酸とされています。

季節による変化も調べられており、良質な生殖巣を持つ個体の割合は1年を通じて一定数見られたものの、5月から9月にかけてピークを迎えることが分かりました。この時期には、性別や殻の直径の大きさが品質に与える影響は見られなかったとされ、このような特徴から、T. depressusは商業利用に適した種であると論文では位置づけられています。

この研究を読むうえでの注意

本研究は、特定の地域で採集された野生の褐色ウニ1種を対象とした調査であり、要旨の中では調査地域や個体数以上の詳細(例えば具体的な採集場所や統計的な検定結果)には触れられていません。また、ここで報告されているのはあくまで生殖巣の物理的・化学的な特性と品質評価の関係であり、健康への効果や効能を示すものではない点に留意が必要です。一つの研究であり、他の海域や他のウニ種にそのまま当てはまるとは限りません。

まとめ

この研究では、褐色ウニ Tripneustes depressus の生殖巣について、色や大きさといった見た目の品質評価と、タンパク質量やうまみに関わる遊離アミノ酸の含有量との間に関連が見られることが示されました。特に5月から9月にかけて良質な生殖巣を持つ個体が多く見られたとされており、ウニの「旬」や品質を考えるうえで興味深い知見といえそうです。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。出典(原著論文):ウニ市場品質に関連する褐色ウニ Tripneustes depressus の精巣・卵巣の形態学的・組織学的・生化学的特性(ジャーナル・オブ・シェルフィッシュ・リサーチ・2026年08月)

著者:Ailet Vives(Instituto Politécnico Nacional (CICIMAR-IPN), Av. Instituto Politécnico Nacional s/n, Col. Playa Palo de Santa Rita, La Paz 23096, Mexico)、Bertha Patricia Ceballos‐Vázquez(Instituto Politécnico Nacional (CICIMAR-IPN), Av. Instituto Politécnico Nacional s/n, Col. Playa Palo de Santa Rita, La Paz 23096, Mexico)、Diana Patricia Carreño-León(Programa de Acuicultura, Centro de Investigaciones Biológicas del Noroeste (CIBNOR), Av. Instituto Politécnico Nacional 195, Col. Playa Palo de Santa Rita, La Paz 23096, Mexico)、Tamara Rubilar(Centro para el Estudio de Sistemas Marinos (CESIMAR CCT CENPAT CONICET), Boulevard Brown 2915, Puerto Madryn 9120, Argentina)