加齢黄斑変性(AMD)は、高齢者における中心視力の不可逆的な低下の主な原因の一つとされています。なかでも「滲出型」と呼ばれるタイプは、網膜の下に異常な血管が伸びてくることで視力に影響を及ぼすもので、現在の標準治療は「抗VEGF療法」と呼ばれる薬剤を目に注射する治療法です。一方で、ルテインやゼアキサンチン、リコピンといったカロテノイド類、ビタミンAやビタミンEなどの抗酸化ビタミンは、以前から目や網膜の健康との関連が関心を集めてきた栄養素です。今回紹介する研究は、こうした栄養素を豊富に含む食事を治療に組み合わせることで、実際に体の中の栄養状態がどう変化するのかを調べたものです。

この研究は、抗VEGF療法を受けている滲出型AMD患者43人を対象に、6か月間にわたって行われた前向き対照研究です。参加者は、抗VEGF療法のみを受ける「対照群」と、抗VEGF療法に加えて個別化された食事プランを実施する「介入群」に分けられました。この食事プランは、カロテノイドや抗酸化ビタミン、微量元素、食物繊維、オメガ3脂肪酸を自然に多く含む食品を重視した内容だったとされています。研究チームは、開始時点と6か月後に、血液中のルテイン+ゼアキサンチン、リコピン、ビタミンA、ビタミンEの濃度を高精度な分析装置(LC-MS/MS)で測定し、比較しました。

研究でわかったこと

結果として、血清中のルテイン+ゼアキサンチン濃度は、対照群・介入群のどちらにおいても、それぞれの群の中では有意に増加したと報告されています(対照群は平均0.31から0.49mg/L、介入群は平均0.51から0.87mg/Lへ)。数値としては介入群のほうが大きく増えていましたが、ベースライン(開始時点)の差を調整したうえで2つの群を比較すると、その差は統計的に有意ではなかったとされています。

リコピンについては、介入群でのみ、その群の中で有意な増加がみられました(平均0.20から0.43μmol/L)が、こちらもベースライン調整後の群間差は有意ではなかったと報告されています。ビタミンAは両群の中でそれぞれ有意に増加し、ビタミンEは介入群の中でのみ有意な増加がみられましたが、いずれも群間差としては有意な差は確認されなかったとのことです。

興味深い点として、ルテイン+ゼアキサンチン濃度の増加が特に大きかったのは、網膜の状態が改善したと評価された参加者だったことが述べられています。ただし論文では、この点についてはサブグループごとの解析が統計的な検出力を十分に持つよう設計されていなかったため、慎重に解釈すべきだと注意が付け加えられています。また6か月後の時点で、血清中のルテイン+ゼアキサンチン、リコピン、ビタミンAの濃度どうしには、互いに正の関連がみられたと報告されています。

この研究の位置づけ・読むうえでの注意

論文の著者らは、個別化された食事介入が、それぞれの群の中では血清中のカロテノイドや抗酸化ビタミンの状態の改善と関連していたとまとめる一方で、ベースラインを調整したうえでの群間の差については統計的に有意な水準には達しなかったとしています。これは、この研究が「探索的」で、統計的な検出力を十分に見込んだ設計ではない予備的(パイロット)研究であることと一致する結果だと説明されています。

著者らは、今回得られた予備的な知見や効果の大きさに関するデータは、群間の効果を確定的に示すものではなく、今後より十分な検出力を備えた研究を設計するための土台と位置づけるべきだとしています。特に変化が目立ったのはルテイン+ゼアキサンチンとリコピンの濃度だったとされ、こうした結果は食事管理が抗VEGF療法を補う手段となりうる可能性を支持するものだとも述べられています。ただし、研究の性質や比較的小さいサンプルサイズを踏まえ、これらの知見を確かめるにはより大規模な多施設共同研究が必要だと強調されています。

まとめ

今回の研究では、滲出型AMD患者に対して抗VEGF療法と併せて個別化された食事介入を行ったところ、血清中のカロテノイドや抗酸化ビタミンの濃度がそれぞれの群の中で増加する傾向がみられましたが、対照群との比較では統計的に明確な差は確認されませんでした。これは一つの予備的な研究の結果であり、食事介入の効果が確定したことを意味するものではありません。今後、より規模の大きい研究によって、こうした食事管理の役割がさらに検証されることが期待されます。

※本記事は下記の原著論文を紹介するものです。参考文献:滲出型加齢黄斑変性患者における血清カロテノイドおよび抗酸化ビタミン濃度に対する栄養補助食品志向の食事介入の効果(アンチオキシダンツ・2026年07月)