著者の所属・活動拠点の国は、ドイツです。
掲載誌:Journal of Food Composition and Analysis
ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex
研究の目的
リンゴから造られる発酵酒シードルには、フェノール化合物と呼ばれる植物由来の成分が多く含まれています。フェノール化合物は色や渋み、香りなど、飲み物の性質に関わる成分のグループです。研究チームは、ドイツで「アプフェルヴァイン」と呼ばれるタイプのシードル計38種類を対象に、どのようなフェノール化合物がどれだけ含まれているかを幅広く調べました。
調べた成分には、ヒドロキシケイ皮酸類、フラボノール類、ジヒドロカルコン類、フラバン-3-オール類が含まれます。さらに、ビニルフェノール類やエチルフェノール類といった揮発性のフェノール、つまり香りとして感じられやすい成分も対象にしました。抄録によると、これらの揮発性フェノールは「オフフレーバー」と呼ばれる好ましくない香りと関連づけられている成分です。
どのように調べたか
著者らは、成分を分離して量を測る液体クロマトグラフィーという手法を軸に、複数の分析法を組み合わせました。まず、シードルに関係する主なフェノール化合物と揮発性フェノールをまとめて定量する方法を新たに開発しました。
次に、フラバン-3-オールが3個以上つながった大きな分子(プロアントシアニジンの三量体やオリゴマー)は、別の分離方法で分析しました。また、高分解能の質量分析を用いて、検出した成分が何であるかの裏付けも行いました。
主な結果
定量したフェノール化合物の合計は、平均で1リットルあたり105.8ミリグラムでした。製品ごとの差は大きく、28.4〜314.3ミリグラムの幅がありました。
最も多かったのはフラバン-3-オール類で、分子が1〜7個つながったものの合計は平均54.0ミリグラム(4.3〜213.1ミリグラム)でした。なかでも、複数の分子が結合したオリゴマー型のプロシアニジンが主体でした。3個つながったもの(平均13.9ミリグラム)と4個つながったもの(平均14.9ミリグラム)が特に多く含まれていました。
これに続いて多かったのがヒドロキシケイ皮酸類(平均23.7ミリグラム)とジヒドロカルコン類(平均23.1ミリグラム)です。香りに関わる揮発性フェノールのうち、ビニルフェノール類は平均0.8ミリグラム、エチルフェノール類は平均1.9ミリグラムでした。どちらも、検出されない製品から最大でそれぞれ3.2ミリグラム、12.3ミリグラムを含む製品まで幅がありました。
研究チームは、成分量と官能評価の関係も調べています。官能評価とは、人が実際に味わって評価する試験のことです。その結果、エチルフェノール類、4-ビニルカテコール、カフェ酸の量が多いシードルほど、受容性テストの順位合計が低くなるという相関が報告されました。これは関連を示したもので、成分が評価の原因であることを示したものではありません。
研究が示すこと
この研究は、ドイツのシードルに含まれるフェノール化合物について、多くの製品を対象とした包括的なデータを示しました。製品によって成分構成に大きな違いがあることも明らかになりました。あわせて、特定のフェノール成分と人による評価との結びつきについても手がかりを与える研究となっています。
原著論文の著者・所属:Alexander Orbach(Department of Beverage Research, Chair Analysis & Technology of Plant-based Foods, Geisenheim University, Von-Lade-Strasse 1, 65366 Geisenheim, Germany)、Ralf Schweiggert(Department of Beverage Research, Chair Analysis & Technology of Plant-based Foods, Geisenheim University, Von-Lade-Strasse 1, 65366 Geisenheim, Germany)、Christof Björn Steingass(Department of Beverage Research, Chair Analysis & Technology of Plant-based Foods, Geisenheim University, Von-Lade-Strasse 1, 65366 Geisenheim, Germany)
※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Alexander Orbach, Ralf Schweiggert, Christof Björn Steingass. Characterization of volatile and non-volatile phenolic compounds in German ciders (type ‘Apfelwein’) by a combined RP-UHPLC-DAD-FLD, HILIC-FLD, and (TIMS)-QTOF-HR-MS/MS approach. Journal of Food Composition and Analysis 2026-10-07. DOI: 10.1016/j.jfca.2026.109569. 原著ライセンス:CC BY.