著者の所属・活動拠点の国は、アルジェリアです。

掲載誌:Politics & Security

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

農業政策と食料供給の関係を調べる

著者らは、独立後のアルジェリアの農業・食料政策が、穀物の供給途絶や価格変動への弱さをどのように形づくってきたかを調べました。輸入への依存に加え、その代金を石油・天然ガス収入で賄う財政構造、食料価格と政治的安定の関係、国内生産を制約する水資源を、安全保障の問題として検討しています。

研究は、政策文書や国際機関などの既存統計を用いた事例分析です。生産量の拡大、生産性の向上、既存の農業構造の維持という目標の間にある緊張関係と、政策の掲げる目的と実際の働きの違いに着目しました。

生産拡大だけでは埋まらなかった穀物の不足

論文によると、独立後の自主管理政策から2019年の農業計画に至る政策の下で、灌漑面積と農業生産は拡大しました。しかし、穀物の国内供給と需要の隔たりは解消されず、2005~2022年の小麦自給率は14~38%の範囲でした。また、国連食糧農業機関による2026/27年の穀物輸入必要量の予測として、1,450万トンを挙げています。

著者らは、輸出収入の大半をもたらす石油・天然ガスが輸入を可能にする一方、改革の切迫感を弱めてきたと論じています。小麦の輸入先もフランス中心から変化しており、供給の確保は国内農業だけでなく、国際的な穀物取引の動向にも左右されるとしています。

食料価格を支える仕組みが意味すること

著者らは、生産者価格や消費者価格への支援が、食料安全保障の手段として掲げられながら、実際には所得を移転し、政治的安定を保つ役割を大きく担っている可能性を指摘しています。その例として、2011年1月の暴動後に政府が砂糖と食用油の値下げを発表したことを挙げています。

論文は、政策が生産量と既存の農業構造を重視し、資源収入で消費者向けの低価格を支える一方、生産性の向上は遅れたと整理しています。研究が示すのは、アルジェリアの穀物供給の安定を理解するには、収穫量だけでなく、輸入を支える資源収入と穀物貿易の国際関係を見る必要があるということです。

原著論文の著者・所属:Randa Saadi(University 20 August 1955 of Skikda)、Khayreddine Belaaze(University 20 August 1955 of Skikda)、Lotfi Bouneb(University 20 August 1955 of Skikda)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Randa Saadi, Khayreddine Belaaze, Lotfi Bouneb. THE ECONOMICS OF FOOD DEPENDENCE IN A RENTIER STATE: AGRICULTURAL POLICY, WHEAT IMPORTS, AND FISCAL EXPOSURE IN ALGERIA. Politics & Security 2026-10-30. DOI: 10.54658/ps.28153324.2026.17.3.pp.78-89. 原著ライセンス:CC BY.