著者の所属・活動拠点の国は、アルジェリア、パキスタン、チェコです。

掲載誌:Advances in Horticultural Science

ライセンス: CC BY 対象: 公開論文 確認元: OpenAlex

研究の目的

ザクロは古くから世界各地で親しまれてきた果物です。アルジェリア中部のメサード地域では、栽培面積でアンズに次ぐ重要な果樹とされ、伝統料理やジュースに使われるほか、薬草としても利用されてきました。一方で著者らによると、この地域のザクロは研究がまだ少なく、在来の系統がどのような果実の特徴を持つのかは十分に分かっていませんでした。

研究チームは、メサードの小規模な果樹園で昔から育てられてきた5つの在来系統(遺伝的に異なる地元のタイプ)、「ハムラエ」「スニン・ラアルージュ」「エル・カレス」「トゥンシ」「ハドラエ」に注目しました。これらの果実の形や大きさ、果汁の成分を比べて、それぞれの特徴を明らかにし、品種改良や保全、地域での活用に役立つ基礎データを示すことを目的としています。

何をどう調べたか

調査は、1995年に5系統を同じ果樹園にまとめて植え、同じ方法で管理してきた木を対象に行われました。2023年と2024年の10月に完熟した果実を収穫し、系統ごとに5本の木から季節あたり25個の果実を集め、2年分のデータをまとめて分析しています。

調べた項目は27項目です。植物品種の特性を区別するための国際的な審査指針(UPOVの指針)を参考に、果実の重さや長さ・幅、皮の厚さと重さ、1個あたりの「仮種皮(ザクロの赤い粒で、種を果汁たっぷりの層が包んだ食べる部分)」の数と重さ、種の大きさなどを測りました。さらに果汁については、搾汁率、糖度(Brix)、総糖量、pH、酸の量、ビタミンC、タンパク質などを分析しました。系統間の差は統計的に検定し、多数の項目をまとめて系統どうしの近さを見る多変量解析も行っています。

主な結果

果実の大きさには系統による違いがはっきり表れました。平均の果実重は、エル・カレスが約249グラムで最も重く、ハムラエが約156グラムで最も軽いと報告されています。エル・カレスは皮(外皮と内側の白い部分)の重さや種の重さ・長さでも最大で、大きな果実と大きな粒・種を持つ系統でした。一方、皮の厚さだけは系統間で統計的な差が見られませんでした。

果汁の性質でも違いが目立ちました。トゥンシとスニン・ラアルージュは搾汁率がそれぞれ79.96%と77.37%と高く、総糖量も100ミリリットルあたり15.8グラムと14.35グラムで甘みの強い系統でした。トゥンシは糖度やビタミンC、タンパク質でも最も高い値を示しています。これに対しエル・カレスは果汁のpHが2.85と最も低く、著者らは甘酸っぱい味を持つ独特な系統と位置づけました。搾汁率は71.28%でした。

27項目をまとめて解析すると、5系統は大きく3つのまとまりに分かれました。果実や種が大きいエル・カレス、ハドラエとハムラエのグループ、そして糖度や搾汁率などが高いトゥンシとスニン・ラアルージュのグループです。

この研究が示すこと

この研究は、同じ地域・同じ管理条件で育てられた在来ザクロでも、果実の大きさや果汁の甘さ・酸っぱさ、成分に系統ごとの明確な違いがあることを示しました。著者らは、エル・カレスには加工用途、他の系統には栄養面での活用の可能性があると述べ、こうしたデータが地域の在来系統の保全や品種改良、価値の向上に向けた基礎になるとしています。

原著論文の著者・所属:Mourad Licir(Laboratoire de Biotechnologie des Productions Végétales, Département de Biotechnologies et Agro-écologie, Faculté des Sciences de la Nature et de la Vie, Université Saad Dahlab de Blida 1, B.P. 270, Route Soumaa, Blida 09000, Algeria)、Cherifa Chaouia(Laboratoire de Biotechnologie des Productions Végétales, Département de Biotechnologies et Agro-écologie, Faculté des Sciences de la Nature et de la Vie, Université Saad Dahlab de Blida 1, B.P. 270, Route Soumaa, Blida 09000, Algeria)、Yamina Mouas(Laboratoire de Biotechnologie des Productions Végétales, Département de Biotechnologies et Agro-écologie, Faculté des Sciences de la Nature et de la Vie, Université Saad Dahlab de Blida 1, B.P. 270, Route Soumaa, Blida 09000, Algeria)、Nasser Eddine Dehbaoui(Unité de recherche de développement des grandes cultures, Institut Technique des Grandes Cultures, 1 Rue Pasteur-Hassan Badi B.P. 16, El Harrach 16200, Algeria)、Nabil Touzout(Department of Agronomy, Faculty of Sciences, Pole Urban Ouzera, University of Medea, 26000, Medea, Algeria)、Riaz Ahmad(Department of Horticulture, The University of Agriculture, Dera Ismail Khan, Pakistan)、Muhammad Farhan Saeed(Department of Environmental Sciences, COMSATS University Islamabad, Vehari Campus 61100, Vehari, Pakistan)、Jakub Černý(Department of Silviculture, Faculty of Forestry and Wood Technology, Mendel University in Brno, Zemědělská 3, 613 00 Brno, Czech Republic)、Aftab Jamal(Department of Soil and Environmental Sciences, Faculty of Crop Production Sciences, The University of Agriculture, Peshawar 25130, Pakistan)

※本記事は原著論文をもとに、日本語で要約・説明を加えた研究紹介です。 出典(原著論文):Mourad Licir, Cherifa Chaouia, Yamina Mouas, et al. Fruit morphological and biochemical diversity in five Algerian pomegranate (Punica granatum L.) genotypes. Advances in Horticultural Science 2026-09-30. DOI: 10.36253/ahsc-19233. 原著ライセンス:CC BY.